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彼らの未来(2)

こちらから続く)さてそれで長嶋監督の追悼番組をテレビで見ていて、王さんをはじめ、昔の仲間やファンの人たちが、あれこれ思い出を語っていて、すっかり高齢になった彼らや、昔のフィルムの中の若々しい長嶋(私がリアルタイムで見ていた)選手を見て、どうしても感じてしまうのは、「あー、今活躍している若い選手たちが監督やコーチや解説者になる頃には私は生きてないだろうなあ」というのはわりと前から時々思っていたのですが、ましてや彼らが引退したり亡くなったりした時に私は追悼番組とか絶対見られないんだよね、という思いです(まあそうでなきゃ困りますが。それはめでたいことですが。笑)。

いつも言うように地元のテレビやラジオがホークスの情報を流しまくるものですから、ついつい、そこの選手の情報ばかりが詳しくなって行くのですが、先日も私がずっと昔に初めてヤフオクドームに行ったとき、すぐ目の前で守備についてた上林選手が移籍した先の中日で大活躍していて、交流戦で出会ったホークスの選手たちとうれしそうに話してるのを見ると「やっぱり背が高いなあ、変わってないなあ」と懐かしかったり、柳町選手の気味悪いほどの活躍を見ていると、あー慶応びいきの母がこれを見たらどんなに喜ぶことだろうか、どこかで写真を手に入れて位牌の前に飾ってやろうかしらと思ったり。

その柳町と並んで最近いやに活躍している野村勇選手や周東選手を見ると、カッコいい頼もしいと思う前に、私のことですから変なことばっかり思い出して、野村選手はホークス祭のときに、肌もあらわなバニーガールのかっこうして悪びれもせず踊ってたり何かの番組で罰ゲームのときかくし芸を披露するのに自分の一物をバットに見立てて振り回すパフォーマンスをして見せて、皆をあきれさせたり(なぜかどちらの場にも周東選手がいて、喜んでも怒ってもとまどってもいない理想的にすました冷静な顔をしていたような)していたのを思い出すし、周東選手はその少し前に明らかな誤審でセーフをアウトにされたとき、激怒してぶちきれて審判に捨て台詞を吐いてて「大人しいと思っていたのに」「優しくて人なつこそうなのに」と皆を驚かせる一方(私は両方のファンに袋叩きにされるだろうけど、彼を見ていると時々山口百恵をひょいと思い出すことがあって、とんでもない激しい気性を持ってる気がしてたから、別に意外ではなかったけど)、「乱闘のときに役に立つかも」「乱闘場面で見てみたい」と妙に期待をふくらませていたファンもいたのがおかしかったし、それにつけてもヤフオクドームで遠目から見た柳田選手は豆のように小さくても何やらすごい華やかさとオーラがあって、なるほどこれがスターかと思い知らされたけど、以前インタビューで乱闘になったらどうするかと聞かれて、絶対参加しない恐いから後ろに逃げとくとか答えていて、たしかにそうだろうなあと思ったし、他にもあれこれしょうもないことで、楽しんで見ているのですけど。

でもね。この選手たち皆、今七十九歳の私がどうしても、その追悼番組を見て感想を語ることってないのだよね。くりかえすけど、あたりまえで、そうでなくっちゃいけないんだけど。私が死んだあとも彼らは活躍して年をとって行く。

私がいなくなった後でも元気でいてくれと、ふと願う。私にはもう見られない、知ることもできない未来で、どうか皆、幸福でいてくれ。おかしな事件に巻き込まれたり、しょうもない犯罪者にはならないでくれ。とりあえず、そう願わずにはいられない。特に戦争には行かないでくれ。朝ドラ「あんぱん」の出征シーンを見るたびに、いっそう強く、そう願う。柳田選手を初めとして彼らの多くが三十前後、まだ徴兵されてしまう年なんだなあと思うと、生きた心地がしない。

こんなことを考えるのは、母がよく戦死した六大学野球の名選手を数え上げて、「あれだけでも私は絶対戦争を許さない」と言っていたのを聞いていたからかもしれないが。

あー、まだちょっと続きそう。いったん切るか。(つづく

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カツジ猫