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快挙かも

「水の王子」「砂と手」に続く自費出版の新シリーズ「馬の中」の第一巻の試供本がAmazonから送られて来た。一か所ページの下が小さく破れているのは非常に気に食わんし、配達の人が土砂降りの中、紙袋に入った本を雨の吹き付ける玄関先において行ったのは、頭に血がのぼった(置き配用の箱はちゃんとあるのに、きっと数秒を惜しんで配達してるんだろう。幸いすぐ気づいたから被害はなかったが、夕方までそのままだったら絶対中も濡れてたよ)けど、そういうことを補ってあまりあるほど、きれいに仕上がっていて、あらためて装丁担当のdynamislifeさんと、一応Amazonにも感謝する。とてもうれしい。

今回のシリーズ(全三冊の予定)では、新しい試みとして、表紙に、古い馬の置物やテーブルクロス(いずれも昔、田舎の家にあったもの。実はもう古くてぼろぼろ)の写真を使ったから、色合いがどうなるかうまく出るか心配で、ここのところずっと毎日くよくよどきどきしていた。そうしたら本当に、めざした夢見たとおりの色合いに出来上がって、もう肩の荷が降りた気分。いやこれが第二、第三冊まで続いてくれたら、どんなにか幸福なんだけどなあ。

レトロなグッズを使ってるからdynamislifeさんは、ちょっと暗めの重厚な装丁を最初心がけてくれていた。私はそれに対して「このシリーズは、内容も筆致もイラストも、すっごいラフで勢いがあって、軽いお洒落な感じにしたいから、そういう雰囲気で頼みます」と言って修正してもらった。その理想通りに、古いグッズを使いながら、軽やかさとスピード感を感じさせる表紙にして下さったのが、本当に感服し感謝しかない。何だか最高のぜいたくを味あわせてもらってる気分だ。

近く発売予定だが、まだ紙本しかないし、どんなに原価ぎりぎりで抑えてもやっぱり3000円弱になってしまった。でも、できたらこの本は一人でも多くの方に買って、読んでほしいと願う。
 「水の王子」も「砂と手」も、私の人生の一部として、家族や恋人の代わりとして、こよなく愛して作った大事な本だが、もう作って発表できただけで幸福で満足なものでもある。
 でも、「馬の中」シリーズは、それとは少しちがう。あとがきにも書いているが、現代のこの世界が戦争と独裁と暴力に向かって押し流されて行きそうなとき、それを何とかしたいがどうしようもないと感じているすべての人に、小説のかたちで、つながり、心を通わせあい、力を合わせたいと願って発表する本だ。高齢者になり、もう体力も知力も時間もない中で、こんな私にでもせめてできる、私なりの行動と戦いとさえ言ってよい。

だから、むちゃくちゃ言いますが、私を好きな人、興味ある人、大事に思ってくれる人は、発売されたらぜひ買って、読んでみて下さい。(いや我ながらよう言うわ。)もちろん、この本に収めた作品は、すべて、このホームページにも掲載してありますから、そちらを読んでいただいてもかまいません。(ただし挿絵は紙本の方にしか入っていません。)

ところで、「砂と手」も「馬の中」も、いずれは紙本だけでなく、電子書籍でも安価で読めるようにしようと準備を進めています。いつになるかわかりませんが、できるだけ急ぎますので、どうぞ楽しみにお待ち下さい。なお、「砂と手」も「馬の中」同様、収録作品はすべて、このホームページでお読みになれます(挿絵はありませんが)。待てないという方は、どうぞそちらでも、お楽しみ下さい。

そもそも、「砂と手」が完成したら、しばらく小説の自費出版は休止して、本来の国文学研究に全力集中する予定でした。今もそれはあきらめていませんが、そこに「馬と手」三冊の制作が割り込んだのは、ひとえに、この世界を狂わせたトランプ、プーチン、ネタニヤフ、そして世界と日本を問わず、彼らを支持し黙認し傍観する、すべての人々のせいです。どんなに微力でもアホらしくても、私は自分にできることをやめるつもりはありません。

「水の王子」シリーズにつきましても、実は最初に発表した、かれこれ50年前からの読者の方が先日、紙本を最終巻まで注文して、読んで下さるとおっしゃって下さいました。ありがたくこの数年間に一気に仕上げた最終巻までの全冊を荷造りしながら、あらためてちょくちょく自分でも読んで見て、我ながら驚き満足し感動したのは(笑)、私はこれを、特に続編を40年ぶりにスタートさせた「村に」を書いていたとき、大病のあとで、毎日毎分、疲れも痛みも相当あったし、余命やら将来やらについて悩んだり迷ったり、悟りを開いたりしてもよかった時期のはずなのに、どの文章にもことばにも全体にも、そんな暗さや深刻さがかけらもない。能天気なほど明るくて、生命力にあふれている。

実際、その時期私は「わー、この先どうなるかわからないなら、やりかけの仕事を急がねば!」しか考えてなかったし、義理や人情の仕事を片っぱしから断って、自分の仕事に邁進できる幸福にうち震えていたし(笑)、どんな意味でも暗くもつらくもなかったのはたしかなんですが、せめて、そういう決意をしていたのなら、少しぐらいは高邁な哲学や深い悟りの片鱗も見えてよさそうなものなのに、なんかもう、それさえない。とことん現実的で何からも目をそらしてないし逃避もしてないし、浮かれていると紙一重に陽気で元気で建設的で何といおうか、どんな影も作品にかかっていない。すごいぜ自分、とあきれて感心しながらも、それだけ周囲や友人知人に恵まれていたってことか、これまでの人生ずっと、と痛感したりもしています。

「水の王子」はその点でも、私と私を支え育て争い対立した人たちのすべてが築き上げた奇跡的にありがたい作品だし、これだけとんでもなく力と明るさのみなぎった世界を嘘でも無理でもなく生み出せたことは、本当に誇りだし感謝もしています。

まあこちらは電子書籍でも500円か無料で読めますから、どうぞ気が向いたらごらんになって下さいませ。

人生と命の最後まで、こんな具合でうまく行くかどうかはわかりませんが、まあせいぜい油断しないで無理をしないで、やって行こうと思っています。

長くなった上に画像まで多くて恐縮ですが、どうぞ試供品のあちこちを、ごらんになって発売されたら買おうかな、と思っていただけたらうれしいです。

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カツジ猫