「高慢と偏見」の古い映画とか
前の書き込みで、今朝はきげんが悪いと書いた、その理由。かなりやつあたりっぽいですが、お許し下さいませ。
久しぶりに朝のラジオ体操をしようとしたら、鹿児島の地震の臨時警報が入って、同じようなことをだらだらだらだらいつまでもしゃべりやがって、結局ラジオ体操の時間全部が消えてしまった。くやしくて腹立たしくて、大人げないのはわかっているけど、このアナウンサーにありとあらゆる不幸がふりかかれと呪いをかけてしまった(笑)。こういうのは初めてではなくて、遠く離れた北海道の地震でも同じような警報が来て、聞きたい番組を消されることがよくある。どーでもいいが、ふと連想するのは、戦争でも始まりそうになったら、こんな要領の悪い無駄な警報が、のべつまくなしくり返されるのだろうなということだ。
もういっそ、こんな遠隔地まで聞いてもどうしようもない無駄なことを知らせたいぐらいなら、ガザの空爆のニュースも、その都度流せよ。そんでもって、こんな事態を防ぐためには選挙の投票に行きましょうとか呼びかけてみろよ。その方がまだ意味があるって気がする。もう朝からやる気が失せた。ラジオを切って二度寝するか。
だいたい、イライラしないで落ち着きましょう、とか、くり返し呼びかけるのが大きなお世話なんだよ。必要な情報を短く伝えりゃそれでいいものを、こっちはますますイライラがつのるばかりだ。
そのちょっと後で、同じラジオのNHKが、参院選の各党の政策について報じていた。そして共産党になったとたん、まったく緊急でも何でもない地震の警報を入れて、完全にその部分だけ消した。あんまり陰謀論とか信じない方だが、これにはちょっとNHKも参政党じゃあるまいし、どうかしてるとしか思えなかった。頭に来たからまだちょっと迷っていたのだが、今から期日前投票に行って、共産党に入れて来る。こんな衝動投票って、立花信者を笑えないと反省もするが、多分この暑さで私も頭が溶けかけてるんだわ。
これだけじゃあんまりなので、さっき見た「高慢と偏見」の大昔の映画(ローレンス・オリビエが若くて美しいダーシー青年を演じてる)のDVDの感想。モノクロで優雅で豪華で騒々しくて若干どころじゃないコメディー風のハッピーエンド。映画が娯楽作品だった時代がよくわかる。ラストのものすごいまでのハッピーエンドには、ベッドの上で転げ回って笑っちゃったが、でもそんなとんでもない変更部分も含めて、小説だけでは気づかなかった、この作品の大胆さや先進的な精神や健康さがわかって、胸をつかれた。どうしてこの、一見たわいない罪のない作品が愛され評価され続けたのか、とてもよくわかる気がする。
主人公エリザベスの明るさと元気さ、その姉ジェーンの温和さと我慢強さは、男女を問わず特に女性の、現実を生きて行く上での、本当に教科書であり支えであり羅針盤でありよりどころであったにちがいない。そして奔放な妹や本好きで偏屈な妹など、あらゆるタイプの女性たちをきちんと登場させて居場所を作ってやっている。スキャンダルで周囲から孤立してもさげすまれても経済的に追い詰められても、この一家は自害もしないし戦いを宣言して対立もしない。俗物の塊の母親と、それをあきらめて達観している皮肉屋の父親も、見方によっては絶望的な夫婦関係なのに、それなりにほほえましくて幸福にも見えてくる。
何よりも「椿姫」やら「心中天網島」に典型的な、「相手の家族から頼み込まれて涙ながらに身を引く」という普通によくある恋人像を、エリザベスは完璧なまでに破砕する。相手の家族や保護者たちにうとまれ憎まれても、ひるみも恐れもしない。姉のジェーンは徹底的な善意でその敵意を黙殺無視してしまって、これもみごとだが、エリザベスは、もはや恋人の愛を失ったと思っていても、恋人の保護者の夫人の「結婚はしないと約束するか」という要求を一蹴して、もうなくなっている結婚への可能性を手放すことを一瞬もしない。
この強さ。この前向きの健全さ。しかも恨みも暗さもなく、終始勝者のように堂々と、決して屈しない、その明るさ。したたかさや、ふてぶてしさや、荒々しさをまったく感じさせない、健康なさわやかさ。こんなヒロイン、こんなお手本を持って生きられた英国の女性たちは、どんなに幸せだったことだろう。
この映画の最後では、悪役たちもすべて実は善人だったことになり、吹き出すようなねじ曲げ方ですべてがうまく行ってしまう。だが、それがあまり不自然にも見えないのは、エリザベスの態度の中に、そういう可能性さえも生み出し呼び込む要素があるからだ。誰かを愛したときに人は自信をなくし、弱くなる。エリザベスにはそれがない。敗者であっても弱者であっても負け犬であっても、彼女は楽々と勝者の強者の勝ち犬の精神を維持しつづける。骨身からのまじりけのない強さで。もしかして、これは、あの父親と母親の双方からひきついだものではないか。聖性と俗性の共闘と融合。無敵だわ(笑)。
新しい映画のDVDや、他の新訳もつい見たくなる。あー、沼にはまってしまった。ぶくぶくぶく。読みたい本はまだ他にいっぱいあるというのに!