「鳩時計文庫」 の紹介

名古屋の大学に五年ほど勤務していた。その間、旧友や、新しい知り合い何人かと、それまで各自が描いていた空想の世界を話し合っている内に、小説としてまとめてはどうかということになり、私が中心になっていくつかの小説を作り、資金を出し合って自費出版した。

メンバーは、すべてを私の名で出していいと言ったが、私は原案やアイディアを持っていた人の名を、あえて作者として記すことにした。
とは言っても、かなりの部分に私が関わっているため、著作権や出来不出来の責任は私にあると言ってよい。
当時のメンバーの大半は現在いなくなり、連絡もとれていない。そろそろ死んでいる者もいるかもしれない。私以外は全部ペンネームなので、きっと家族もこの小説群のことは知らないだろう。

なお「水の王子」は、予告が出ているが、未完のままである。もしよくよく運がよければ私が続編を書いて完成させられるかもしれないが、同じ未完の「散文家たち」などの数編とともに、今のところは何とも言えない。
また、ほとんどの本はまだ少数だが在庫がある。注文いただければ、着払いで無料で進呈する。

青い地平線作者:永井美和

架空の王国モルギニアを舞台にうり二つの貴族の兄弟、元気のいい王女さま、森の盗賊、謎を秘めた黒衣の婦人、牢役人に百姓たち、ありとあらゆる人物が登場して、くりひろげられる愛と冒険の物語。夢に命をかけられる人、星占いも語らない遠い未来を信じる人に、作者が送るメッセージです。

A高野球部日誌作者:岩崎由

A高校野球部に、ある日突然あらわれた一人の鬼監督。
度肝を抜かれた選手たち、しかし、彼らはただちに反撃に転じ、奇想天外、虚々実々の戦いの火ぶたがきっておとされる。そして最後の勝利者は誰か?

笑いの中におとずれる結末のやさしさと悲しさ。これを読めば多分誰もが、幼い日、青春の日に体験した何かを思い出すにちがいない。

吉野の雪作者:中司圭子

兄がいるので殿はいつも、忠信、と私を名で呼ばれた。佐藤忠信。それが私の名前だった--。

歌舞伎『義経千本桜』の狐忠信で有名な義経の忠臣が語る、義経との思い出、ふるさとのみちのくでの日々、源平の戦い、京の女との恋。時間も空間も、愛も憎しみも、雪の中に消えていくような、不思議に澄みきった世界が、ここにある。

水の王子1・2作者:潮由美

深い森の中でオオヤマツミとナキサワメの夫婦に育てられた少年ハヤオは、ある日、川のほとりで白い衣の少年ヒルコに出会う。

彼は天上の国タカマガハラの王イザナギと地下の国ヨモツクニの女王イザナミの初めての子、水の王子であると名のり、やがて二人は森を出て草原に向かった。
草原ではタカマガハラとヨモツクニが激しい争いをくり広げており、やがて二人はタカマガハラの女戦士アマテラスと知りあって、草原のどこかでよみがえった大蛇ヤマタノオロチを退治にむかう。

「古事記」を舞台とした壮大な童話の第一部「森から」と第二部「草原を」を収録。

水の王子3・4作者:潮由美

草原の旅のはてに森の少年ハヤオと水の王子ヒルコがたどりついた都では、王スサノオのもと、人々はタカマガハラもヨモツクニも拒んで堅固な城壁を築き、貧しいくらしに耐えながら新しい世界をめざしていた。

スサノオの娘スセリや旅の若者オオクニヌシとともにハヤオたちもその仲間となってはげむが、なぜかヒルコが日々に弱って行く。
そしてついにヨモツクニの若者ツクヨミにさらわれたヒルコを追ってハヤオがたどりついた海のかなたの島では白い衣の子どもたちが面白半分に殺されていた。

第三部「都には」と第四部「海の」を収録。

細菌群作者:小山典子

今をさること20年あまり前、ある地方高校でおこった、受験制度反対の学園紛争。
その中にあらわれる、さまざまな男女高校生の友情、愛、そして生き方。
ここで作者が描き出した問題の多くは、今日でも古びるどころか、ますます新しくなっている。

書いた当時作者自身も高校生だっただけに、生々しい迫力があふれる作品。

従順すぎる妹作者:板坂耀子

何でもいうことをきいてしまう、かわいい妹を持った兄はどうしたらよいか?
しかもその妹が恋した男がバリバリの学生活動家だったら?
しかも兄は、その彼と対立する民青系の活動家だったら?

「ロミオとジュリエット」パロディー風の喜劇の中に、70年代学生運動家たちの一側面が、これまで誰も語らなかった新しい視点から、語られる!

ユサイアの子ら作者:若峰映子

気むずかしや、人間ぎらい、人のよさ、人なつっこさ、無気力、図々しさ、残酷、やさしさ、皮肉屋、はにかみや─太古の女王ユサイアの血をひく子孫たちの中には、時代がちがい国がちがっても、すべてこうした共通する性格がある。

そのような一人一人を主人公にして書かれた九つの短編。黒人奴隷、インディアン青年、古代の劇作家、レジスタンスの闘士、天文学者、ロシアの革命家、などなどの生き方の中に、どことなく共感できるものがあれば、あなたも「ユサイアの子」の一人かもしれません。

カツジ猫