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私のいるここからは
はためく白い帆は見えぬ
そびえる高いマストも見えぬ
ただ、赤い火が燃える
私の前のかまどの中で
私のいるここからは
船首にあがるしぶきは見えぬ
広がる青い海原も見えぬ
ただ、くれないの火花が散る
私の前のかまどの中で
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私のいるここからは
青ざめた月も、燃える太陽も
またたく星々も、朝焼けの空も見えぬ
水平線のかなたに、やがて現れる
ほのかな青い島影も見えぬ
ただ、昼夜の別なく、石炭が燃える
私の前のかまどの中で
おお、船底のせまい穴ぐらの中で
えびのように身体をかがめて石炭をたきながら
しかも、私は、誰よりも知っている
我々の船を、我々の海を
水平線のかなたに、やがて見える島影を
かまどの熱気に、石炭の重さに
手も顔も黒く汚し、流れる汗をぬぐいつつ
時に、私は疑ったが―
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今はもう知っている
私が、ここで、こうして、熱気の中で
石炭を燃やしつづける限り、船は走り、
海図の上でしか知らぬ、あの島は近づきつつあると
炎と影のゆらめきの中で、
シャベルを片手に、しばし目を閉じただけで
私のまぶたには、さわやかに風をはらむ帆が見える
朝焼けの紫の雲が、光のくだける波に浮かぶ鳥たちが
そしてあの島が、緑の森が、砂浜が
私のいるここからは
船のマストも、波も、雲も見えぬが
私は知っている、船が、必ず、
めざす港に着くだろうことを
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1946年大分県生まれ。
九州大学大学院に学び、熊本学園大学、愛知県立女子短期大学、福岡教育大学で国文学を教える。
2010年福岡教育大学を定年退職。
博士(文学)号所持。
現在、福岡教育大学名誉教授。
専門分野は江戸時代の紀行文学。
中公新書「江戸の紀行文」、ぺりかん社「江戸の旅と文学」をはじめ、出版した著書も大半はそれに関するもの。
中学時代から趣味で小説を書く。
大学院生時代に集英社「小説ジュニア」の新人賞で佳作となり、以後は年に数回、同誌に小説を掲載、集英社文庫「かげりゆく光の中で」を出版。
その後は「鳩時計文庫」「金時計文庫」を自費出版。
ネットでも小説を掲載中。
なお、文芸社から「断捨離狂騒曲」「断捨離乱れ箱」を発売中。
九州大学で文学部自治会執行委員長、福岡教育大学で教職員組合書記長、第一部主事、情報処理センター長を務める。
現在「むなかた九条の会」世話人代表。
飼った犬一匹、猫十五匹。
現在は猫一匹と同居。
車は六台目のキンポウゲ色の軽で、新車での購入はこれが初めて。
建てた家三軒 :南生屋、美尾庵、伽羅館
管理した家二軒:ゆきうさぎ亭、留客洞など
好きなもの:孤独と自由
好きな色 :灰色
好きな花 :水仙と菜の花
好きな場所:川と森
好きな季節:早春
好きな画家:鄭東珠と大江良二
よく行く店:ラグラス・フィールドとギャラリーあり
常宿 :由布院倶楽部
※2021年3月現在
※「かしおぺあ」はホームページで公開しています。
※「私のために戦うな」はホームページで公開しています。
※全作品ホームページで無料公開しています。
※全作品(一部を除き)ホームページで無料公開しています。