1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. まっ赤な靴下。

まっ赤な靴下。

◇急に寒くなるので対応できない。足が冷たいのだけでも何とかしなくてはと、引き出しをひっかき回したら、叔母のらしい上等そうな赤い毛糸のソックスが出て来た。はくと一気に暖かくなった。これがなければ風邪がぶり返してたところだ。

ベッドでだらだらとDVDの「さすらいの航海」を見ている。カツジ猫がこれ幸いとくっついて来て、貝殻のように丸くなって寝てしまうので、動けないで困る。
映画は豪華な俳優陣と豪勢なセットで、目を楽しませるが、ナチスの蹂躙するドイツから逃げ出して米国に亡命する人たちの姿は、華やかでもどこか暗い。レマルクの小説「楽園のかげり」を思い出す。悲惨な運命から逃げ出したと言っても家族や同胞は残して来てるし、望郷の念はあるし、先行きは不安だし、楽しい旅になるわけはない。それでも立派な船長のもと、舞踏会などは盛んに行われるが(日本のキモノを着たような変な人がすみっこで踊ってたが、あれは何だろう)、そういうの見ていると、いい例えではないだろうが、ポオの「黒死病の仮面」を思い出す。ペストが流行する中、貴族や金持ちが屋敷にとじこもって疫病をさけて、贅沢三昧の日々送ってる、あれだ。

そして亡命先のキューバ(まだ革命は起こってない)の政情が不安定で、上陸できるかどうかも微妙。こういう様子を見ていると、国籍とか移民とか難民とかの大変さや切実さが胸にせまって来る。いつ自分たちもこうなるかわからないと思わずにはいられない。国なんてほんとに、そんなもんでしかない。
二重国籍がどうとか騒いだり、難民に無関心で冷たくてひとごとみたいにしか考えなかったりする人たちの、自分の国籍とか身分とかが天から与えられたように盤石で、ゆらぐことなどないと信じているとしか見えない脳天気な安心を私は持てない。絶対に。

◇風邪が治ってないのか、身体がなまっているのか、わからないままだらだらしていて、上の家の猫たちの世話をしに行くのが遅くなった。どうせ散らかして寝床やトイレを汚しているだろうと覚悟して行ったら、拍子抜けするほどきれいにしていて、お利口に寝ていた。このごろ上等の缶詰を食べさせているからか、マキもグレイスも体調がよさそうで、部屋をきれいに使っているから助かる。2000年に拾ったから、二匹とももう十八歳、わが家の最年長記録を更新中だ。
白黒猫のマキちゃんは、さわらせてくれないからわからないが、灰色猫のグレイスは毛艶もいいし、目も耳も口もきれいで、若い猫のようだ。10月には、市の高齢動物の表彰式があるらしいから、最低でもそれまでは元気でいてくれないと。

Twitter Facebook
カツジ猫