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「水の王子」通信(49)

これは第三部「都には」のスサノオの広場での演説シーン。学生時代もそれ以後も、多くの集会に行って、たくさんの人の演説やあいさつを聞きました。原水禁大会のとき、全国から集った見も知らぬ人たちの中にいて、周囲にはためく旗の向こうに高校時代の友人の姿がちらと見えた気がしたけど、旗がひるがえったら、もういなかった。初めからいなかったのかもしれません。そんな思い出もあって書いた場面でした。

どんな集会でも、どんな熱気にあふれていても、そこに危険な陶酔は決してありませんでした。私の周囲も私自身も原水爆に反対とか憲法を守れとか強く思っていたし、ふだんからそういう活動をしていたけど、それなりの意見のちがいも、組織や党への批判もありました。そういう悩みや迷いを抱えながら、その集会で救われようなんて多分誰も思ってなかった。もっと前向きで、疑問を持ちつつ、解決しようとしていました。こうやって、イラストを描きながら、私はスサノオの都の人たちを、そのように描きたかった。ひとりひとりの考えを持ち、指導者や支配者の話に耳を傾けながら、自分の意見を失わないでいる人たちとして。

この下の絵はは色彩がぐっと地味ですが、そこがいいかもしれないので、このままにしときます。前にも一度ありましたが、挿絵の一つがどうしても気に入らなくて、差し替えることにしたのだ。私はもちろん下手なのだけど、それなりに譲れない基準みたようなものはあるのよね。誰にもわからないかもしれないけど(笑)。ちなみに、元の挿絵は下です。ね、こっちの方がずっと手が込んでるし派手でしょう。でも差し替えちゃう(笑)。上の方がずっと好きなので。

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カツジ猫