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優先順位。

◇明日からは世の中も私も平常運転だ。授業も始まる。学生だってこんなに早く始まるのはいやだろうが、私もいやだ(笑)。とにかく、そういうことだから、去年の反省みたいなものは、やはり今夜のうちに書いておこう。

◇去年の私の十大ニュースの中で、けっこう重要かもしれないのは、公私ともにつきあいを大幅に制限してしまったことだ。具体的に言うと、これまでメールや手紙や会食でつきあっていた十人内外の人たちとの交際を、いっさい断った。また、「むなかた九条の会」と、それに関連する活動も、もともとあまりやってはいないが、更に少なくするようにした。

◇どちらも、何かがあったというのではなくて、ただもう、自分が本来最優先にしなければならない勉強や専門分野の研究に割く時間が、このままでは永遠に確保できないと判断した結果の荒療治である。
私のわがままと暴君ぶりは、周囲の人には日ごろからきちんと思い知らせているから、皆それであきらめてくれたようであるが、当然ながら、「何か失礼なことをしたのか」的な不安を抱いて尋ねて来た人はいた。

◇いやいやそんなことはありませんと、その都度お返事してきたし、それは本当である。ただ、もう老い先短い今になって別にもう今さらどうでもいいと言えばいいことだが、こうなるにいたる私の精神状況というか、むしろ私の生き方の基本のようなものを、少しまとめておいた方がいいような気がして来た。まとめている内に、私自身のまちがいや改めるべき点が見えてくるなら、それも改善するきっかけになるだろう。

◇「あんなに親しくしていたのに」「あんなによくしてくれたのに」という驚きや失望、それがそのまま「よっぽど何か原因があったのでは」という疑問になるという反応は当然だと思う。
しかし私はこれまでも、よく、こういう風にいきなり人と疎遠になることがあって、それは理由はないのである。少なくとも、その相手に対して怒りや不満や失望を感じてそうなることはない。

私は怒りや不満や失望を感じた時には、その人からは遠ざからない。
まずは、その怒りや不満や失望が、正当かどうか考えるのに、下手すると数年はかける。
同じ理由から、直接にその相手に怒りや不満や失望をぶつけることもしない。
私にそれを感じさせた相手の気持ちを理解しようとしながら、ずっとそのまま、つきあっている。

怒りや不満や失望をぶつけるのは、それが必要であり、かつ効果的であろうと判断した時だけである。たとえば会議でどなりあうとか(笑)。
本当に逆上したら、私は絶対それを見せない。危険すぎる。
それと、相手を心から信じ、心を許している時である。いきなり寝首をかかれても、いきなり崖から突き落とされても、この相手ならしかたがないと、あきらめている場合である。そういうのは信じているとは言わないのではないかと言っても、私の場合はそうなのである。この人が絶対に私を裏切らないなどと勝手に思いこむのなど、私は信じているとは呼ばない。

◇だから私は基本的に、どんなに親しくしていても快くつきあっていても、その人が好きとか必要とかいうことはないのである。言いかえれば、学生でも同僚でも近所の人でもどなたでも、私は皆が好きだし、誰でもいいのである。教師や娼婦には向いている性格である。もっと言うなら、好みを言ったり注文をつけたりしたら、誰も満足できないから、あきらめたとたんに、もう誰でもよくなるのである。

◇私が人でも組織でも、滅私奉公と言いたいぐらい献身的につくすのは、もちろんそれが楽しいからだ。その相手に誰を選ぶかと言う選択の基準はあまりない。学生時代に、一番安い金魚を買って、大きな水槽で大事に育てたことがある。それと同じ気分で、私は大切にする相手を選ぶ。その相手の価値や魅力は問わない。この私が選んで大切にするから、その相手は価値がある。そう思っている。我ながらすごい(笑)。

あと、しいて言うなら、その相手に私がつくすことが、周囲や世の中にとって都合がいいだろうという判断でも選ぶ。だから、私がその人や組織にとっても周囲にとっても、あまりいい役割を果たしていない、またはもう役に立つことはないと判断したら、遠ざかる。
具体的には、迷惑がられている、なめられている、支配しようとされている、そう感じたら、もう私はこの相手に自分ができることは何もないし、この関係は不毛だと思う。

◇私は、そのときどきに大切にしようと決めた人や組織に対しては、他のどんなに大切なものでも犠牲にする。そこでどちらをとろうかと、悩んだり迷ったりはしない。時間の無駄と思うからだ。呼ばれればかけつけ、望まれることをする。それは、そうせずにいられないからではない。そう決めているだけだ。そうやって母につくし、猫につくして来た。

だからもう、必要ないと判断したら、未練も躊躇もない。その相手との関係を最優先にしていただけで、それをやめたとたん、即座に他の何かが最優先になる。私の中では後回しにして待たせていたものが、いつもひしめいているので、何かや誰かとの関係を断ったとたん、その空白は瞬時に埋まってしまう。それは常時その状態なのだが、最優先にされていた存在には、自分が押しのけていた存在があるということを予想できないものなのだろうか。自分が独占していた相手の回りは空白で、我慢しているものや遠慮しているものがまったくいないと思うのだろうか。もう、みもふたもないことを言ってしまうと、私がいつまでも自分だけのものと安心慢心油断して、私を尊敬もせず尊重もせず粗末に扱い傷つけたとたん、あっという間に私は消えるということぐらいの予測はしないものなのだろうか、してないんだろうねえ、ねえ、カツジ猫(笑)。

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カツジ猫