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沖ノ島の世界遺産登録について

◎私は福岡県の宗像市に住んでいて、近くに宗像大社があります。市のホームページなどを見ればわかりますが、ここ数年、市が力を入れているのは宗像大社が所有する、沖合にある沖ノ島を世界遺産に登録してもらおうという運動です。隣りの福津市や福岡県とも連携して市民にも協力を呼びかけています。

世界遺産には登録されればもちろん、申請するだけでも相当の金額が必要ということです。数億という話もあります。
また、これまでの例を見ても、貴重な文化遺産や自然を守ろうとするなら、世界遺産に登録されることは観光客が増加して、むしろマイナスになるとの声もあります。

◎何よりも私は、この沖ノ島が女人禁制であることが世界遺産に登録されるにはふさわしくないと考えています。その理由はまた詳しく述べますが、少なくとも申請を始める段階で、市が進めている男女参画や男女共生の事業などとの整合性をどうするのか、十分に討論すべきだったと考えています。

私自身は、自分が女性としてこれまで生きてきた体験からも、また専門に研究している江戸時代の旅行記に、女人禁制に対する女性の旅人の嘆きや男性の旅人の批判が見えることもあって、沖ノ島も含めた、あらゆる場所の女人禁制には不快を感じますし、なくなってほしいと願っています。
しかし、宗像市にはいろいろとお世話になっているし、ことさらに沖ノ島の女人禁制に対して抗議する気はこれまでは、ありませんでした。

しかし、世界遺産となるとやはりそれは黙認できないと思いますし、少なくとも市民の間で十分な討論をしてからでないと、女人禁制についてどう考えて申請したのか、世界に対して説明する責任が市民にはあると思います。

これまで女人禁制の場所が世界遺産に登録された例では、吉野の大峰がありますが、ネットで少し調べただけでも女性団体や人権団体がさまざまに抗議行動を行った模様です。
宗像市でも世界遺産登録が具体化すれば、そのような外部からの問いかけや抗議が予想されますし、その前に市民が十分に意見交換をしておかなければ、市民の間でこの問題をめぐって、さまざまな対立が起こることも予想されます。

◎私が何よりも心配なのは、市や県が行う、この世界遺産登録のさまざまなキャンペーンに「女人禁制」ということがまったくふれられていないことです。ふれれば議論が起こるからさけているのだとすれば、それは大変危険なことです。最大の問題点とも言えることを明確に示さないままで、市の内外に広報を進めていたのでは、最終的な段階になって、大きな混乱を招きかねません。

先日、宗像市の青年会議所が主催した、この問題に関するフォーラムに参加して、宗像・福津両市の市長さんと、県会議員のお二人から、この運動のこれまでの経過と問題点や展望をうかがいました。それで、おおむね状況が把握できたと思うのですが、うかがっている内にまた新しい心配が増えました。

世界遺産登録に向けての活動の中で、宗像市の歴史を子どもたちに伝えよう、ということが強調されていましたが、これは慎重に配慮しないと、神話と歴史教育をどのように関連させるかという、これもまた微妙で難しい問題にふれることになります。
一方で考古学の専門家による発掘調査も行われているのですから、それと神話の話とを、どう結びつけて行くのかはとても大切です。
これもまた、女人禁制と同様に、市民の間のさまざまな意見や思想の違いをあらわにしかねない面を持っています。

(長くなったので、一度切ります。)

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カツジ猫