映画「マスター&コマンダー」解説

ラッセル・クロウの出演した映画「マスター&コマンダー」が、公開前の予告編でまったく異なるイメージで紹介されていたことについて、主演のラッセル・クロウ、ポール・ベタニーのファン、海洋映画のファン、「指輪物語」の字幕問題で抗議運動をした方々などは、予告編と宣伝全体の改善を含めてネットを初め、さまざまな抗議を行いました。
その結果、予告や宣伝は一定の改善がなされ、DVDはほぼ抗議した結果がかなった、望ましいかたちで発売されました。

これは、その抗議活動の発生から終結までの一連の動きの記録です。私が携わった部分だけのものですし、リアルタイムの記述なので、非常にわかりにくいと思います。しかし、今でも同様の問題はしばしば起こり、映画という文化のあり方について、今後も参考になる資料だと思うので、あえて、手を加えずに当時のままで公開します。

なお、メンバーの一人だったKumikoさんは、今でも映画の公開のあり方などに関して、しばしばツイログで発言をされておられます。この問題の根底に横たわる、配給会社と観客の関係その他の問題は、今も変わっていない部分が多くあります。そういうことを考えるきっかけとして、この、いわば歴史的文書を、一人でも多くの方にごらんいただきたいと願っています。

(2019年1月10日)

映画「マスター&コマンダー」

私もキャラママ(板坂)も、映画は文学と思っています。そして、文学に携わる仕事をしている者として、ここでとりあげているような現象や問題には興味があり、自分たちも参加し発言しながら、今回の事例の持つ意味とは何かを考えて行くつもりです。

このコーナーへの感想やご質問は掲示板にお書き込み下さい。また、このコーナーの文章は「無断転載・引用禁止」と指定してある一部分を除き、引用、転載していただいてかまいません。

―DVDも、大変まともな宣伝で発売されたということで、一応、このコーナーへのリンクもトップページから、こちらに移しました。この問題について、さまざまにご協力いただいた皆さまに深くお礼申しあげます。時間ができたら、また、あらためてごあいさつを。―

(2004.7.29.)

はじめてごらんになる方へ

このコーナーは「マスター&コマンダー」という映画の予告編があまりにも、作品の内容とかけはなれたひどいものだったため、予告編で失望して映画を見に行かない人に対して、「ぜひ見てほしい」と訴えるために作りました。

現在この映画の上映はほぼ終わっています。5月中に東京や近郊のいくつかの映画館で再上映が行われるようです。リンクしているdaifukuさんの「ラッセル・クロウ」をごらん下さい。
映画は非常に良質のものでした。まだ見ておられない方で機会がある方はぜひごらんになって下さい。

この問題についての現時点での私の総括は、掲示板に書き込んでいますので、ごらん下さい。
なおDVDの発売が7月末に予定されているようで、問題の予告編を入れたり、あるいはそれにもとづく宣伝が再び行われないように強く要望するものです。

機会があれば皆さまもそのことについて発言されることを、また情報をお寄せ下さることを願っています。(このことについては、残念ですが、宣伝文などは最大の問題とされた「英国は幼い少年を送り込んだ」の文言も含めて、私たちが抗議し、配給会社がさしかえたと同じものが使われている販売サイトがあることがわかりました。今後どのような抗議をするかは決めていませんが、少なくともこの状況が変わらない限り、私はこのDVDは買いません。これについては「最新のお知らせ」も、ごらん下さい。5/11記)

以下は、上映中の文章ですが、事情をご理解いただくために、そのまま残しておくことにします。(5/11)

  • 現在、「マスター&コマンダー」という映画が全国の映画館で公開されています。
  • この映画の配給会社ブエナ・ビスタは、「かわいそうな少年が戦争にひっぱり出され、尊敬する艦長のもとで立派な戦士になっていく話」として宣伝しようとし、映画の味わいとまったく異なる予告編を作りました。
  • この宣伝と予告編の問題点は下にありますが、当面、緊急にお知らせ、お願いしたいことはただひとつです。
  • ファンの抗議やJARO(日本広告審査機構)の調査をうけて、手直しをした予告編も流れていますが、もしあなたが予告やCMで強い嫌悪感を感じて、見ないと決めたり迷っているなら、それは最初からのお涙ちょうだいバージョンのものだと思います。予告やCMで強い反感を持ったなら、まちがいなく、あなたは本来この映画が大変好きになるはずの人です。だまされたと思って、迷わず映画館に観にいって下さい。大画面で見ないと大変損をする映画です。

では、この映画が本当はどんな映画なのか?は、
こちらをご覧ください。

参戦!「マスター&コマンダー」の感想

なぜか不遇(?)な映画「マスター&コマンダー」を勝手に応援しますっっ
(現在サイトが閉鎖されています)

どんなに本編とちがったひどい予告編なのか確認したい方は、
こちらをご覧ください。

「マスター&コマンダー連名」
(現在サイトが閉鎖されています)

この問題に関する事実の経過を簡単に速攻で知りたい方は、
こちらをご覧ください。

Kumikoさんの「映画『マスター&コマンダー』の宣伝に関する意見とお願い」へ

ここしばらくの抗議行動の現状と予定を知りたい方は「字幕改善連絡室」へ
(現在サイトが閉鎖されています)

一人で何かしたいのだが、抗議・質問先を知りたいという方は映画「マスター&コマンダー」の宣伝に関する連絡先

現状と経過、私の見解を知りたい方は「マスター&コマンダー」の現状と経過をご覧ください。
私の書き込みや私の書き込み以外の、この問題に関する資料を見たい方は資料・各方面に送った手紙をご覧ください。

この宣伝のどこがいったい問題なのか

もともと、宣伝や予告に嘘や誇張はつきもので、誰もいちいち気にしないものですが、今回のこれは二つの点で見逃せない問題があります。

ひとつ、いくら何でも(嘘をつく)度が過ぎている。(※下に説明があります)

ふたつ、不快感を抱かせ、本来来るはずの客が来ない。かわりに宣伝を信じて来た人は失望し、悪評を広める。(このことは現在各映画館の観客の反応、映画サイトの感想で、みごとすぎて感動するぐらいみごとに証明されつつあります。)

「度が過ぎた嘘」はおおむね次の3つ。

──(1)──

最初の宣伝文句では「戦力不足の英国は幼い少年たちを戦場に送った」と、原作・映画・歴史のどれにもないことを堂々と書いていた。「歴史物といいながら嘘をつく映画と思われる」「内容をまったく誤解させ、映画の理解をさまたげる」などの批判やJAROの審査をうけて、「幼い少年たちは大海原にいた」と意味不明かつ未練がましい文句にさしかえるが、言いわけ可能な「しっぽをつかまれない」表現に変えたにすぎない。もちろん、ポスター、チラシ、カードなどはすべてこの文言が残ったまま。雑誌やテレビ番組でもいまだに引用する人が多く、影響は薄れていません。

──(2)──

朝日・読売の大広告に、これまた原作・映画に登場しないし、筋や役柄からもありえない少年士官候補生の「母への手紙」を勝手に作って掲載。その時の画面で母親のらしくおいて見せている画面のロケット?の肖像画は、映画の中ではオーブリ―艦長の恋人の姿絵だったもので、行き当たりばったりもいいところ。なお、これについて質問したファンとの電話の応対で、この広告は「映画を見ないまま」作ったことがほぼ判明。ちなみにこの「手紙」の文章も歯が浮くような最悪のセンスのしろもの。見ます?

愛する母さんへ
僕は今、故郷を遠く離れた世界の果てにいます。
ついに明日、僕たちの倍以上の兵力と武器を持つ
ナポレオン軍のアケロン号と戦います。
でも、僕たちには”ラッキー・ジャック”と呼ばれる
負け知らずのオーブリー艦長がついています。

僕たちはまだ、戦う術も知りません。
僕たちはまだ、死にたくはありません。
それでも友のため、家族のために、
艦長を信じて戦い抜いてみせます。

故郷のあの家、あの庭、母さんと歩いたあの小道を思い出します。
でも、今だけは全てを忘れて、僕はひとりの戦士になります。

さようなら、母さんー ウィリアム・ブレイクニー

もう、笑うっきゃないですね。ある人が言ってますが、この少年士官候補生は貴族でおそらく広大な領地と邸宅を所有しているご領主で、「母上」とでも言うのがふさわしい身分だそうな。映画をごらんになった後で、この手紙をあらためてごらんになって見て下さい。さぞや泣けると思います。

──(3)──

いくら何でも映画そのものが上映されたらこういう嘘はばれるだろうと思っていたら、何と試写会では、冒頭の状況説明の字幕の後に「少年たちは戦場に送られた」といった内容の、画面の英文にはない一文がつけ加えられていた。大勢の人が見たのですがあきれたり怒ったりで正確な文章を誰も覚えていない。なお、この件について字幕担当者・監修者は知らされていないとのこと。

「宣伝と映画の中身がちがうから、宣伝に合うように映画にない文章を(字幕担当者に無断で)つけ加える」という、この本末転倒の倒錯ぶりは多分前代未聞です。客を呼ぶためのいんちき宣伝はこれまで数々あったし今後もあるでしょうが、そのいんちき宣伝に合わないからと本編を変えた例なんて聞いたことがない。今回の件の異常な性質がよく示されています。

抗議が殺到したのか、公開時には削除されましたが、こういうことを考えつけるということは、今後も何があるか予測もつきません。抗議行動を続けておく必要があると感じるのは、それもあります。

なお、1や2についてブエナ・ビスタは「画面に映っていない部分のことは何とでも想像可能」という意味のことを述べているとか。そういうことは映画の予告じゃなく、自主制作映画で別に作って下さい。自分のお金と、自分の名前で。

※意地悪なことをいろいろ書いたけど、映画のヒットを願うのではブエナ・ビスタは敵ではないし、抗議に応じて一定のよい方向への対応もしてくれているのです。なのに、この「少年」路線に固執して異常なことばかりするのは何か理由があるのでしょうか。
質問、抗議をお寄せになる方、私からのお願いですが、匿名はやめ、また少年俳優を攻撃するなどの行為は避けるなどの配慮をしていただけるとありがたいです。

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カツジ猫