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雪とタンポポ

このタイトルで、私が今読んでる本が何かわかった人いたら、それはそれですごいな(笑)。

東農大オホーツクの樋越勉監督の『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』を買って読んでみました。巻頭に現ソフトバンクホークスの周東佑京選手、終わりに近くオリックスや楽天でプレーしたOB徳元敏氏のインタビューがあって、樋越監督の体験談や育成論を挟んで支える構成になっているのが、効果的で、よく考えられた編集と思いました。

周東選手は(完璧にいい意味で)変なところもたくさんある人柄だし、まじめで優等生っぽい話のようで、最果ての地の大学生活や練習風景が鮮やかに浮かび上がるインタビューになっているのは、そういう感性や知性の鋭さもあるのだと感じます。
そうは言っても、世代もあってか、今の若いアスリートに共通するかもしれない、まっとうで普通の青年という印象です。

ひるがえってOBの徳元氏の話は、数世代前のもっとはちゃめちゃな体育系の若者たちの、荒削りな風貌が浮かび上がります。それを通して、荒馬たちを飼い慣らしているような監督の精神も躍動するように伝わって来ます。
むしろ、これが長く続いた伝統で、もともとの細やかで合理的な配慮や観察があったにせよ、それを、より現代的な指導に移行させて行けたところに、指導者としての樋越監督のすぐれた資質があるのでしょう。

私が笑ったのは、徳元氏が語っている、グラウンドのタンポポの話です。オホーツクの雪の深さ、雪かきの大変さは周東選手も触れていますが、徳元氏はグラウンド整備で、タンポポを抜くのが大変で、残っていたら昔のこととて、監督から怒られて、皆が殴られるので、練習中に見つけたら、その上にスライディングして隠していた、今でもタンポポを見ると恐い、と語っています。しょっちゅう地元の漁師などと殴り合いしたりしていた、豪快な若者がです。

友人のガーデニング命の女性に、その話をして聞かせたら大いに同情、共感しました。私に「タンポポ恐るべし」と教えたのは彼女で、それ以後は私も庭でタンポポを見かけるたびに、目の敵にして引っこ抜いています。
タンポポについては樋越監督も、指導の一環として第二章で詳しく述べていますが、とにかく根を張る、とにかく散らばる、広がりまくって手がつけられない。
「うちらのちっちゃい狭い庭でも、あれだけ閉口するんやもんなあ。それがグラウンドやぜ、あんた」
「綿毛がかわいい、とか言うてる場合やないもんな、あのしぶとさと来た日には」
「知らんかったが、あいつらの生命力、オホーツクでも変わらんのか」
と、二人で盛り上がりました。

何しろその友人は、一度意地になって、しつこいタンポポの大株を根っこまで引き抜いてやったら、そのあとに出来ていた大きな穴に足を突っ込んで、くねらせて捻挫したこともあるとか。

周東選手の方は、タンポポについては愚痴っていませんでしたが、樋越監督の記述によると、徳元氏の卒業と同じころに、室内多目的競技場の「網走ドーム」を市長に作ってもらったというから、それ以後の選手たちは、タンポポ退治はしなくてすんだのかな。だとしたら、それも時代の流れですね。

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カツジ猫