中途半端のアドリブ2-「平家物語」のあらすじ
この物語については、古くは、清盛・義仲・義経の三人を主人公とした話だとの説もあった。また石母田正という人は、仏教思想がテーマなのではなく、激動する歴史が主役なのだ(いいのかな、そうまとめても)という見方をされた。それで、平家物語は全部で十二巻あって、最後に灌頂巻という、仏教的な色彩が強い巻(後白河法皇と建礼門院という大物二人が、京都の寂光院でしみじみ語り合う場面で、今で言うとフセインとダイアナ妃が語り合うような、いやそれはかなり違うか)がくっつくのだけど、これはいらんもんで、十二巻のラストで「平家は根絶やしにされた」みたいなクールな記述で、ぱしっと終わるのがいいのだ、というのが石母田さんの考えである。
そう言ったって、ついてる巻はしょうがないじゃないかと言いたくなるだろうが、そこは平家物語は異本がたくさんある、つまり、いろんなかたちで残っていて、十二巻のやら、そうでないのやら、相当めちゃくちゃ、いろいろあるから、灌頂巻がない形式のがいい!と言えば、そうも言ってしまえるのである。なぜそんなにいっぱい異本が残ったかというと、「耳なし芳一」の話でもわかるように…って、何、この話を知らん?では、それは後で話します、とにかく琵琶法師が琵琶を弾いて人々に語って聞かせて広めたのですね、だから、いろんな語りの形式で残ってしまったわけである。
この琵琶法師の話も、また今度。
で、言いたいのは、私がここで今から言う「あらすじ」と言うのは、そういうテーマとか何とかいうことはいっさい知ったこっちゃなく、ただもう、平家物語のあらすじを覚えるための、いわば受験の暗記のためのテクニックみたような話である、ということだ。しかしねえ、別に受験じゃなくっても、覚えておいた方がいい、面白いことというのはあるのでして、これもその一つと思うのです。
だから、本当に受験暗記風に申します。
文庫本で買ったら、いや買わなくても見ただけでもいいけど、「平家物語」って、だいたい二冊である。その一冊目の終わりか二冊目の初めを見ると、必ず「都落」という章段になっている。
要するに、この物語の真ん中、折り返し、中間地点は「都落」なのである。まず、それを覚えよう。
都は、この時は京都である。そこを落ちる、つまり逃げ出すのは平家一門である。源氏に追われて逃げ出すのである。どっちに逃げるかと言うと西に逃げる。源氏は関東だの北陸だの、まあ大ざっぱに言うと東から来る。
平家が、物語の真ん中で逃げる。そう覚えよう。
この話の前半では平家一族はおごりたかぶって、したい放題をやっている。政界も財界も法曹界もマスコミも皆おさえたような横暴ぶりを発揮している。それでいろんな方面から不満が起こる。で、後半は形勢逆転、哀れに衰え滅びて行く。だから「おごる平家は久しからず」とか、「諸行無常」(この世に定まって変わらぬものなどない)とか「盛者必衰」(栄えたものは必ず滅びる)とか、ローマ帝国やアメリカ政府が聞いたら、やなこと言うなあと思うようなことが、この物語のテーマだと言われたりする。
要するに、折り返し地点をはさんで、話の前半は平家が栄えまくっていて、後半は衰えまくる。このように覚えよう。
それで、次に、「前半は3つの反乱」「後半は3つの戦い」と覚えよう。つまり、前半では、おごりたかぶる平家に対し、いろんな人たちが反乱を起こす。その主なものは3つである。本当は他にもあるが、ややこしくなるから覚えなくていい。この3つで骨組みはわかるから、あとでくっつければいい。
後半は、平家が逃げまくり、だんだん負けがこんでついに全滅する。その中で、特に有名な大きな戦いが3つある。それを覚えておけば充分である。
前半の3つの反乱は、
- 鹿ケ谷(ししがたに)の変
- 高倉宮の御謀反
- 頼朝の旗上げ
である。
後半の3つの戦いは、
- 一の谷の合戦
- 屋島の戦い
- 壇ノ浦の合戦
である。
いろいろな人物やそのエピソードはだいたい全部、このどれかに関係している。どれに関係していたかで覚えて行けば、自然とあらすじは頭に入る。
次回は、この3つの反乱、3つの戦いのそれぞれの特徴を説明しよう。