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「お買い物と文学」電子書籍で発売中

2月に亡くなった、おばあさん猫のグレイスにと、いただいた花です。ものすごくカッコよくてきれいで、どこかグレイスっぽくて、見ているとうっとりします。四方八方から写真を撮りまくり、何年も使わない室内の仕切りのカーテンを閉めてまで撮影してしまいました。

上の家のグレイスのいた部屋に持って行ってやりたいんだけど、今ちょっとあそこが散らかってるので、花がかわいそうな気がする。明日は片づけて、持って行って飾るか。

昨夜の深夜に、Amazonから「お買い物と文学」の電子書籍の販売開始のお知らせがありました。
担当者が作ってくれた表紙がめちゃかわいかったので、ここで自慢しようと思っていたら、もう発売されちゃった。そちらでごらん下さいね。

画面はしっこの矢印をクリックしたら、お試しで、最初のあたり、けっこう読めますよ。

この前書いたように、ぎりぎりで最初の章のラストの一部をカットしたのですが、特別サービスで、ここにおいでの方には、削除した分をこそっとお見せしますね(笑)。

なお、この最初の原稿を元市会議員の読書好きの女性と原作とともに読み合わせしたら、彼女は、「えっ、最後の税関の場面がないと、いまいち感動が伝わらないですよ」と、言われて見ればたいそうもっともな指摘をした。

たしかにそうかもしれないなあ。
と思ったから、税関の部分をつけ加えます。

これは、帰りの飛行場でまた金持ち夫妻といっしょになってしまったロバーツ夫妻が、税金対策のために、彼らが買った高価な大きな絨毯を、代わりに申告してくれと頼まれる場面だ。そういう不正が嫌いで苦手な二人はしぶしぶ引き受けるけれど、いつもとちがって、長時間待たされるので、どきどきはらはら気をもむ。すると税関の役人が現れて、次のように言う。

◇◆「年間何百人もの人がトルコ絨緞をイギリスへ持ち帰りますから、われわれもトルコ絨緞に関しては多少は見る目があります。うちの専門家は領収書の書き間違いではないかという意見なんですよ」(略)

「大きいほうの絨緞(金持ち夫妻が二万ポンドで買ったもの)は粗悪な糸で織られたもので、一平方インチにジオルド、つまり編目が二百しかありません。サイズは大きいが値段は五千ポンドくらいがいいところでしょう。逆に小さい方(ロバーツ夫妻が五百ポンドで買ったもの)は、一平方インチ当り九百個の編目がありそうで、伝統的なヘレケのシルクの手織り絨緞ですから、五千ポンドでも疑いもなくたいへんな掘出しものです。両方とも同じ店で買ったもののようですから、これはおそらく店員のミスだろうと思ったわけです」(略)

「払っていただく税額は変りませんが、保険をかけるときのためにこのことをお知らせしておくほうがよいかと考えたわけでして」◆◇

ロバーツ夫妻は何も言えずに税金を払って税関を通り、安物の大きな絨緞を待っていた金持ち夫妻に渡す。彼らが上機嫌で引き上げて行くのを見て、妻のマーガレットは気がとがめ「私たちは盗んだ(スティ―ル)も同然」じゃないかと懸念する。夫のクリストファーは「そんなことはない。すごい掘出しもの(スティール)を手に入れただけさ」と応じる。

「本当のことを知ったらがっかりするだろうから」と金持ち夫妻に真実を伝えなかったクリストファーの対応を責める人は多分いないだろう。

「え、あった方がいいじゃん」とお思いになった方がいるかもしれませんね。でも、これがあると、バランスが崩れるし、この章の雰囲気が乱れるし、すごく見苦しくなるんです。

この本は、章によって、やたら詳しかったり脱線したり、ものたりないほどあっさりしてたり、いろいろなんですが、それが特徴でもあるし、偶然の効果かもしれないけど、緩急がついていいんですよね(と自画自賛)。

どっちにしたって、それは確信を持って書かなきゃいけない作業なわけで、このカットした部分をつけると、この章は、あっさり系かだらだら系か、どっちつかずの中途半端で、読んでて気持ちが悪いんです。
こういう判断をためらわずできる、ことばの断捨離は私も迷わずやれるんだけど。

ひきつづき、「情けあるおのこ」も電子書籍と紙のテキストと両方作るべく作業中。ああ、本職の研究や読書にはいつとりかかれるのやら。頭が痛い。

猫のカツジはブラシをかけられると、いやがってるような喜んでるような微妙な反応で、のたくって、もだえます。ゆうべ見ていたパソコン担当者の若い人は「…どう見てもいやがってるように見えるんですけど」と言ったけど、ほんとにいやなら、こんなもんじゃなく、凶暴化してかみつくよねえ、カツジ。

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カツジ猫