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映画「ダイ・ハードラスト・デイ」感想。

◇なーんにも考えないで、ぼやっと銃撃戦でも楽しむつもりで見に行ったんですけどねー(笑)。

ブルース・ウィリスはたいがい、どうでもいい映画にでもちょろちょろ出るんで困るんだけど、基本的にはキライじゃないし、昔のチャールズ・ブロンソンもちょっとそうだったけど、本人がごつくて荒削りな分、相棒に未熟な若い人がいると、とても暖かいいい雰囲気をかもしだすのも魅力のひとつなんですよねー。
前作では、それがよく生かされていたし、今回の息子さん役もなかなか悪くないんですけど。
ライバル親子の娘さんもけっこういいんですけど。

何よりだいたい私は、この手の作品には期待値がすごく低くて、半分寝てても別にいいやって感じなんで、ほんとはこれでもそんなに文句はない、笑って帰れる水準なんだわー。

◇ただ、新聞の映画評とかもまるで触れてないから(まあ興行成績のこと考えたら言えないのかもしれんけど)ちょっと警戒警報出しとくと、原発事故後のこの日本で、この映画をスカッと笑って楽しめっつったって、そりゃちょっと無理じゃあるまいか。
特に原発関係の被災地の方とか、避難された方とか、私と同様時間とお金をやりくりして、せめて映画でも見て現実を忘れよう、とか思って行かれるんなら、もうこの映画だけは絶対にやめた方がいいんじゃないかしらん。

あ、もったいぶるのもイヤだから、かんたんに言っちゃいますと、最後のクライマックスの舞台がチェルノブイリなんですよ。前にどの映画かもやってたし、まあ、世界最大の悲劇の場所のひとつという点じゃたしかに使える場所じゃあるし、こんなかたちでも忘れないでいるためにはいいのかもしれないけど。それかもう案外、あそこまでノーテンキに核や放射能を題材にしたら、かえってふっきれて笑いころげてストレス解消になるかもしれないけど、それはなかなか難しいんじゃないだろうか。

以前、インディ・ジョーンズが原爆か水爆の実験場に迷いこんで、冷蔵庫に隠れて助かるってすごい場面もありましたよね。あれもたいがいのけぞりましたが、今回のこれでも、ほんとにチェルノブイリ以後も福島以後もアメリカの人たちの、放射能や核への感覚って、あんなにのんきなんでしょうか。

以下はネタばれ…かもしれない。まあどうせ、主人公たちが死ぬわけないから、ネタばれにはなんないかな。それはとにかく。
何しろ「放射能を薄くするガス」というのを、しゅうしゅうまきながら汚染地域に入ってくんですからね。あ、私も実は心の底では、プルトニウムの半減期が2万年ていうけど、人類が存続してたらきっとそれまでには放射能をなくす薬品を発明するにちがいない、と世界の誰よりのんきな希望と信頼を抱いてる人間です。嘘でもそうでも思わなくちゃ、未来の人に申しわけなくてとても生きてる勇気がない。

ではありますが、思わず、そんなガスいつできたんだ!?と目をみはり、つづいて映画や文学における荒唐無稽はどこまで許されるかみたいなテーマで頭がぐるぐるしてしまい、その間にマクレーン親子は爆弾用ウランのまっただなかで撃ちまくり爆発させまくり、最後はそのへんの汚染地域の貯水池にざんぶり落ちて、水もがぶがぶ飲んだ気配ではいあがり、陽気に帰って行きながら「大丈夫かな?」「頭がはげる程度だよ、おやじ」「おまえも5年もすりゃ、おれのようにはげるさ」とか笑いあってるんだからなー。

ついこの間、「通販生活」が(立派!)おまけにつけてきた「みえない雲」ってDVDをキャラママさんと見たばかりで、原発事故で汚染された地域の少女や少年が髪がなくなる切ない映像(フィクションですけど)を見て胸がつまったばかりだし、このマクレーン親子のやりとりはもう、どうやっても笑えないし爽快になんかなりようがない。峯岸みなみとやら以上の複雑怪奇な気分の悪さ。

ひょっとして、これ読んで、かえってちょっと見に行きたくなった人もいらしたら、私も映画会社への罪滅ぼしになってありがたいけど(笑)、とにかく虚心坦懐にスカッとするのは、なかなか難しいんじゃないかなー、大抵の人は。

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カツジ猫