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誰も聞いてはいないけど(笑)

自分の今後の予定について語っておきたい。

漫画「メタモルフォーゼの縁側」の老婦人(と言ったって私と大してトシは変わらん)じゃないけれど、自分があと何年生きるかわかっていれば、いろいろ予定も立てやすいのだが、まあそれはいたしかたない。
私も、死んだりぼけたりする前に、まだいろいろとやっとかなくちゃならないことはあるけれど、そのひとつに、「情けあるおのこ」というテーマでくくっている問題の解決がある。

ほぼ十年前、還暦のとき、「私のために戦うな」という本を自費出版し、その中で、それまでなかなか整理できなかった、自分の中の女性に関する問題をかなり全部書いた。おかげでそれ以後、いろいろ人生がすっきりした気がする。

その時から思っていたのは、あと私が幼い時からずっとひきずって、しつこくこだわっているテーマは、「恵まれた者はどこまで犠牲を払えばいいか」ということで、これを解決したら、世の中や未来のことは知らんけど、私自身はもう生きてきた上で、大して気になることはないだろうということだった。

もちろん、それだけのことだから、そうあっさりと解決はできない。
それは、このホームページ「いたさかランド」の中にも、あちこち蜘蛛の巣のように広がっていて、たとえば「川っぷちの小屋」の冒頭はそのまんま、その迷いを語ったものだし、「ぬれぎぬと文学」(未定稿)の中にも、それは含まれている。結局、ややこしくなりすぎるからと、その「情けあるおのこ」関係のテーマははずして、「ぬれぎぬ」の部分だけをまとめて、金時計文庫の本にした。

更に言うなら、「空想の森」コーナーにある、「鳩時計文庫」の第一作「青い地平線」も、女性問題とからんではいるが、主要なテーマは、この「恵まれた者」、この小説の中では貴族の生き方であり、同じ問題は「水の王子」の中にも見え隠れする。自分で言うのも何だが、「青い地平線」のようなミーハー少女小説のスタイルで、こんな重要で危険な問題を描こうとするなんて、おそらく私ぐらいのものだろう。他の小説もほぼそうだが、けっこう高尚で重厚な問題や課題を、歯が浮くような甘ったるい趣味に走った作品に託したおかげで、読む方も読ませる方も相当に恥ずかしさを乗り越えないと、このテーマに向き合えないというのが、私の小説の意味不明なハードルだなあと、我ながら今、感心している。

冗談はさておき、最近ではこれは「格差」という問題にも密接にからむ。「ラフな格差論」も、だから結局は、この問題への私なりの模索である。
私は実は、これを「ぬれぎぬ」同様に、授業のテキストとして構成できないかとも考えていた。以前に「雅俗」で発表した、「軍記物から江戸時代へ」のエッセイも、その試みの一環である。その計画は今もまだ、あきらめてはいない。

とは言うものの、残された時間と仕事を考えると、どうやらもっと効率的あるいは不規則なかたちで、このテーマには取り組んでおく方が、より現実的な気がして来た。
そこで、この「協力者列伝」のページを作った。
いずれは、「朝の浜辺」の「情けあるおのこ」につながるものとして、とらえておいていただきたい。

これは、洋の東西、虚実を問わず、「他者のために自分の幸福と安寧を犠牲にする」人(や動物)の列伝、もしくはスクラップブックである。彼ら彼女らそれぞれの場合を紹介し分析することが、いつかは大きな作品や研究や、偉大な真実の発見につながるかもしれないが、さしあたり、そんなことは期待しないで、雑談めいて、遊びながら、この蒐集と展示を楽しもうと考えている。

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カツジ猫