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2020年前期集中講義(7)

発表資料が一つ届いています。①としておきます。皆さん見ておいて、意見や質問があれば準備しておいて下さい。第三日か第四日の5限で発表してもらう予定です。

他に、第五日(最終日)に発表できない人は、このどちらかでお願いします。できれば明日中に発表資料を送って下さい。無理な人は相談に応じますので、メールして下さい。

「走れメロス」の全文はこちら

みなさんは、ドラマ・映画・本などで予期せぬ濡れ衣を描いた作品を多く見ませんか?

私は、予期せぬ濡れ衣が現れる作品をよく見かけます。濡れ衣と聞くと、大抵の人が良いものであるというイメージは持っておらず、むしろマイナスなイメージばかり考えられるのに、なぜこんなにも多くの濡れ衣作品が取り上げられているのでしょうか。

 

濡れ衣は、実は最終的に着せられる側が勝つことが多いんです。協力者・援助者が現れ、真犯人を見つけ出す、もしくは無実を証明して、ハッピーエンドへと持っていかれ、正しい者が勝つ・濡れ衣を着せた方が負けるといった印象を受けます。私はあまりそうでない作品を見たことがないのですが、もし、そうでない場合は、主人公が悪役であり、濡れ衣を着せ逃亡する作品だったりするのではないでしょうか?なぜ、濡れ衣を題材にした作品で主人公がいつも濡れ衣を着せられる側なのか。それは濡れ衣をダメだとする世の中の風潮もあり、作品を通して、何か見ている人に向けてメッセージを発信しているからだと考えます。もし、世の中が濡れ衣を着せる側が勝つ作品ばかりで溢れていたら、「濡れ衣」をダメなものだとはせずに、やって良しとするような危ない方向へ向かっていくのではないでしょうか。

 

そして、何より、濡れ衣を着せられた主人公や、主要な人物がその濡れ衣を晴らす様は見ていて痛快だし、何か理不尽なことが起きた時に抗う勇気をくれるような気がします。

 

予期せぬ濡れ衣作品の一つに「走れメロス」があります。(走れメロスを検索してもらい、見てもらう?)https://ddnavi.com/serial/517742/a/

走れメロスでは、まずメロスは王様に捕らえられその場で死刑を宣告されます。ここでまず、予期せぬ濡れ衣が着せられています。そして、メロスは妹の結婚式に行くから3日猶予を欲しいと言って親友のセリヌンティウスを人質に差し出します。セリヌンティウスからすれば、予期せぬ濡れ衣でもあり覚悟の濡れ衣でもあります。この濡れ衣に濡れ衣を重ねた作品であっても、最終的には、濡れ衣を着た2人(メロスとセリヌンティウス)が助かるどころか、王様の心も変え、悪役だとも言える王様にさえ救いがあるように感じます。メロスが王様を仲間に入れたかどうかはわかりません。しかし、メロスは最初王様を殺そうとしていたが、果たしてあの結末以降、王様を許せないと言って責め、罰を与えるような展開が起こるでしょうか。恐らくですが、王様の罪は問わずに、許すという展開が予想されます。他にもこのように、濡れ衣を着せた側に対して、完全に非がないとして許すとまではいかないが、しっかり罪を認めさせ、反省させ、許すような作品はたくさんあります。

 

このことから、私は、予期せぬ濡れ衣において、その作品の着せられた側が大逆転し、ハッピーエンドへと持っていかれるのは、悪を懲らしめようというものではなく、悪に負けるな!というメッセージや、悪と化すな!と言ったメッセージが込められているのだと考えます。(ここでいう悪は濡れ衣を着せる側のこと)つまり、濡れ衣を許すな!よりも、濡れ衣に負けるな!といったメッセージ性が強いということなのです。また、作品において、人間は実際に起こるとは考えにくいこと、自分の周りでは起きて欲しくないことを求めていると感じます。例えば、学校の先生と恋に落ちたり、あらぬ疑いをかけられて、濡れ衣を着せられて窮地に追い込まれたり。自分では中々体験し得ないようなことだからこそ、作品に求め、見たいと思うことから、濡れ衣に関する作品は増えたのではないかと考えます。

 

話は変わりますが、すっかりインターネット社会になった現代では、例えば芸能人がなにかスキャンダルを起こすと、ネットでは途端に炎上というものが起こります。メディアはこぞってその芸能人の根も葉もない噂を取り上げ、もちろん事実も存在するが、ネット上では、その人の人柄も普段の姿もなにも知らない者たちが、あの人ならやりかねないと言ったり、あの人はこういうことする人だろうと偏見を持ったりします。そうなってしまえば最後、例え事実無根のことがネット上で拡散され、それを否定したとしても、他のことで不誠実であったり不真面目である人の弁明など聞く耳も持たず、悪口はどんどんエスカレートしていきます。

 

いわゆる、ネットにおける濡れ衣リンチです。

 

その被害は芸能人ばかりではなく、一般人も含め数多くの被害者が出ており、軽い気持ちで発信したデマによる世界中からの非難を受けるというケースは後を絶ちません。

https://www.google.co.jp/amp/s/www.nishinippon.co.jp/item/n/540516.amp

ネットでいくらでも匿名の誹謗中傷ができるこのような時代だからこそ、加害者の全てを否定するような状況を啓発したり、軽い気持ちが重なって人を傷つける「濡れ衣リンチ」に加担し、加害者にならないためにも、濡れ衣を許すな!とはまた別のメッセージが濡れ衣作品には込められているのだと思われます。

 

以上のことから、私は、「濡れ衣」に関する作品が多く存在し、これからも増え続けていくのだろうと考察します。

 

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カツジ猫