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「才女の運命」感想

この書き込みのタイトル、正直、「興味津々、陰々滅々」としようかと思ったけど、少しでも書名(「才女の運命」)を広く知ってほしくて、この平凡なタイトルにした。

トルストイからロダンにマルクス、アインシュタインなどなどなど、人類史上、文句なしの錚々たる顔ぶれの、その陰で苦しんで滅びて行った、妻や愛人たちの伝記だ。コンパクトで読みやすいのは、彼女たちに関する資料が極端に少ないからでもある。

彼女たちは皆、すぐれた才能を持ち、夫や恋人に決して劣らない、芸術家、学者だった。それが結婚生活により、夫や家庭や育児の中で、消され破壊されていく様子が、ただひたすらな事実にもとづき、的確に報告されている。

夫や恋人の名も、その作品も、よく知っているのに、この本に書かれたことはまったく知らないことばかりなので、興味津々で読まずにはいられないし、知的にはすごく確かな満足感もある。

その一方で、陰々滅々というか、この女性たちのあまりの悲惨さに、呆然とする。男性たちとの関係の中で、壊れて崩れて行く過程が、どれも画一的でなく、いやっというほどそれぞれに納得できるのが、やりきれない。

悲劇が一度に訪れるのではなく、長い歳月の中で彼女たちを疲れさせ、だめにして行くというのが、またもう何だかなあ。

一人でも多くの人に読んでほしい。特に学問や芸術に携わる人たちには、絶対に。でも、そうでない、平凡で一般人だと思っている人たちにも、これは共通する問題だと思う。

ところで、関係あるよなないよな、私がずっと一人で思ってる、何の根拠もない暴論。

女性が科学的でないとか医者や理系に向いてないとか、そんな話をいまどき信じる人もいまいが、地球50周分ぐらい譲歩して、そういうことがもしあるとしたら、私はそういう才能や要素を持っていた女性は、少くともヨーロッパでは、中世の魔女狩りのときに全部殺されたんじゃないかと思ってる。

だって魔女(男性もこう呼ばれて殺されてるけど)って、いわば学者で医者だったわけでしょ。孤独で研究に励んでたわけでしょ。そういうDNAが、ものすごい打撃を受けたと思うのよね。

魔女狩りやフェミニズムの本を、そうちゃんと読んだわけでもないから、そういう説があるのかないのか知らんけど、私の知る限りじゃ、魔女狩りを、女性の科学精神への絶滅と規定した論って、まだ見たことがない。あるのかもしれないけど、まだ常識にはなってない。

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カツジ猫