『大才子・小津久足』感想(1)
はじめに
私は一足先に読ませてもらいましたけど、この本はまだ予約注文だと思います。
でも、ぜひ買っていただきたいので、宣伝をかねて無駄話もまぜて、じっくりまったり紹介します。
感想が長くなりそうなので、はやばやと(1)なんかつけちゃって(笑)。
私の役割
昔、大学院の卒業論文のテーマを貝原益軒にすると、ご報告に行ったとき、中村幸彦先生は、こうアドバイスして下さった。
「益軒についてなら何でも知っている、というようになって下さい」
この本の著者菱岡氏は大学時代私の指導学生で、たいがいしょうもないことをいろいろ話したから、もしかしたら、中村先生のことばも伝えたかもしれない。私には伝えたという記憶はないが、そういうことは他にもたくさんある。「論文なんて皆嘘なんだから、きっちりちゃんとした嘘をつきなさい」というのも、その一例だ。
それはさておき、この本を読んで中村先生のこのおことばは、菱岡君にちゃんとひきつがれているとつくづく感じた。すぐれた恩師と教え子が、私をすっとばかしてよい師弟関係を築いているようで、くやしいとか淋しいとかいうより、非常に安心してしまった。
この本は、もちろん限界はあるだろうけど、「小津久足について、すべてを知ろうとした、そしてそれを読者にきっちり手渡そうとしている」本である。
私にはもうひとり恩師と呼べる人がいて、それは中野三敏先生だ。そして中村、中野両先生について私はまだ、すべてのご著作さえ読んでおらず、お二人の学問をどんな意味でも、きちんと理解できてさえいない。それでも中村先生だけでなく、中野先生もまた、この本を読めばすごく気に入って喜んでいただけたろうという確信がある。
お二人とも、もう亡くなってしまわれた。これを読んでいただけなかったのが、すごく残念でならない。賞賛、満足、そして批判、どんな批評をお二人のそれぞれがなさったか、そのことばをすごく聞きたい。そして、よく考えたら、お二人の代わりに私がそれをしなければならないのかと思うと、三文役者が大俳優の代わりに舞台に上がらなくてはならなくなったようで、正直言って身が縮む。
せめて私にできることは、一般の方々に近い立場で、この本の面白さとわかりやすさと大切さを語って、別に学者でなくても読書家でなくても一人でも多くの人に、この本を買ってもらい、読んでもらうように全力をつくすことではないかと思っている。
と、ここまで書いて早くも息が切れたので、続きはまた次回に。