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さすがにショックよ

しかし、別に韓国やベトナムの米をバカにする気はさらっさらないけど、こんなに世界でもまれに見るほど米を育てるのに適した土地で、これだけ長い歴史があり、国の主食となっていて、棚田や田んぼや稲葉やが四季の風物詩となっているこの国で、米をよそから輸入する日が来るとはなあ。何か手足をもがれたような気がするのは私が年寄りだからだろうか。井上ひさしさんが生きていたら、どんなに悲しむかと申し訳ない。

授業が週末から始まるし、自費出版の小説の新シリーズ「馬の中」の表紙デザインも固まって来たし、今週は地獄のように忙しくなりそうだ。悪魔のように頭を働かせて時間のやりくりをして仕事を片づけないと、まっさかさまに奈落に落ちる。老化と体調不良の中でそれをしなくちゃならないと思うと、どういうか、ぼろんぼろんの古い船で嵐の海にカジキマグロと格闘に出かけるような心境になる。ちょっとわくわくするかもしれない。カジノなんか作らなくっても人生いくらでもバクチの種はあるのになあ。

大河ドラマ「べらぼう」は、吉原がどうとかより何より、こんな陰々滅々のアンダーシアター顔負けの映像作って視聴者をひきとめられると思ってるのか攻めてるなあ挑んでるなあとなかばあきれて感心して、平賀源内の最後の回を拝見していた(思わず敬語になっちゃったやん)。蔦重役の、すっからかんと軽く明るく力強くて前向きの顔と姿が、こういう時のために抜擢したのかと(多分ちがう)納得したほど、陰鬱な画面の中で映えていた。
 源内の絶望や懊悩や疑心暗鬼やいらだちが、ここ数日の自分の心境と、けたちがいながら、あまりにもそっくりで、ひたすらに身につまされた。でも私は源内じゃないから、あんなに素直でも純真でもないから、どろどろの沼水を栄養分に変えて、はい上がってやる。

庭のフリージアが満開になって、でも周囲は雑草なので、地面に寝そべってる。水まきのたびに踏みそうになる一本だけを思い切ってつんで来て、カップにさした。なお、隣の鉢のシクラメンは私が数え間違っていて、つぼみは三本ではなく四本で、しかもまた一輪開きかけている。恐れ入谷の鬼子母神ってやつですね。そう言えば、平賀源内先生には、男性の性器について長々と書いた名文があって、それは別に驚かないんですが、驚くのはこれが岩波の学術的もいいところの日本古典文学大系の風来山人(源内のペンネーム)集にちゃんと収録されてることですよ。しかも国文学研究の最高峰の権威のお一人中村幸彦先生のとことん行き届いた注釈解説で。学生のとき図書館でそれを見て、国文学っていいもんだとなんだかしみじみ思ったのよね。痿陰隠逸伝(なえまらいんいつでん)ってやつです。

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カツジ猫