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そうなのか…。

◇直接お会いしたことはないのですが、福岡で戦争法反対の活動をされている自衛隊員の家族の富山さんというかたがいらっしゃいます。その方が、【歴史地理教育2016年11月号】(歴史教育者協議会 編集販売)という雑誌の、「特集 ちょっと待って!集団的自衛権」に、「息子が戦場に送られる恐怖を感じて---強行採決をバネに訴える日々」という投書をされているのを、知人にメールで教えてもらいました。
全文掲載したいのですが、著作権にひっかかるかもしれないので、部分的に紹介します。
◇富山さんは「アメリカの海兵隊員としてイラク戦争に派兵された息子さんをもつ」お母さんと活動の中で知り合っておられます。「彼女の息子さんは『心の友』と呼んでいた海兵隊の仲間とすら連絡を絶って、いまなお心を閉ざしています。また、戦場で戦った息子と共に、それを送り出した母親、志津子さんも、こころを病み、病院に通っています。」とのこと。
また 「防衛大人権侵害裁判」の原告のお母さんは、「防衛大で大切な息子が実際に体験したひどい、いじめ、しごき、性的な暴行をも尽くした人権侵害」と戦いました。「そんな訓練や教育が、今まさにPKO活動の駆けつけ警護の実戦で、自衛官としてとりみだすことのないよう強要され、叩きこまれているかと思うと、私も父親として、ひとりの人間として、こころは凍り、胸は押しつぶされる思いです。そしてその先に集団的自衛権の行使があって本当の戦闘と殺し合いが起こり、『こころ』が、『肉体』が『破壊される』としたら…。」と富山さんは書いています。
 「一日平均22人の帰還兵が自殺をするアメリカでいま現実に起きている事実。帰還兵の自殺者の異常な数の多さ。戦場の恐怖で夜中に奇声をあげる。恐怖と後悔から酒に溺れ、ドラッグに走る。家族や恋人、医師や心理カウンセラーも手助けできない。極限の家族と、自分をどうすることもできない本人。日本の社会に、今まさに再現されようとしています。この平和な日本社会に、それを受け止める覚悟があるのでしょうか。この差し迫る危機を、ひとりでも多くの方にお伝えするために、私たちは、国境を越えて日米の街頭で、法廷で、行動し続けています。」
◇中でも私が「そんなまさか」と思いつつも、「そうなのか。そうだろうなあ」と痛感したのは、「動くものは迷わず殺せ。女も子供も迷わず殺せ。」そう命令されて、実戦の現場で、「躊躇なく人を殺すことが出来るようになる訓練」「人としての当たり前のこころを封じ込める訓練」が自衛官たちには施されはじめたと、あるお母さんから聞いたあと、富山さんが「そんな命令を受け帰還兵の心的外傷(PTSD)についても知っているのに、なぜおまえは自衛隊を辞めない?殺し殺されるために、育ててきた覚えはない」と、一度だけ声を荒らげて息子さんに言ったとき、しばらく沈黙した後に、息子さんが言った次のことばです。
「戦場に行くことはまだ決定していないし、就職活動で内定が取れなかった、あの就職活動時の不安と絶望的な気持ちを思い出すと、戦場に行く未知の恐怖より、職が決まらず、生活不安を抱えた、あの時の恐怖の方が、よほど現実的でリアリティがある。」  富山さんは最後に、自衛官と家族に、呼びかけています。
「どうか、今まで通りの国民と共にある自衛官でい続けてください。あなたの大切な家族のために、あなた自身を守るために、命令よりも大切なあなたの心の信義を尽くしてください。上官の命令のままに動いたアメリカの兵士たちの心の苦悩と後悔。それをこの日本の街でも再現されないように、命令だからと自分の心に鍵をかけることなく、ご自分の良心に背かないことで、あなた自身を守ってください。
ご家族にも申し上げたい。 特攻に向かう若者が取り乱し、泣き崩れ、錯乱して、整備兵が抱きかかえるようにして特攻機の座席まで運んだという話も最近やっと出てきました。自衛官は『命令だから従う』と言います。自衛官の服従の勇気に、その家族が従い、戦場に夫や子供を送る覚悟をお持ちであるのなら、むしろ彼らの理不尽な解釈改憲による命令に反抗する勇気ある行動を支え、彼らの命を救う楯となる覚悟を持つことはできないでしょうか。国家公務員特別職である自衛官に政治的発言が許されないのなら、その家族が正しいと思うことを発言する。
太平洋戦争末期、上官に気に入られた兵士は、特攻に指名されなかったと言います。夫や息子娘、恋人を人質に取られている者たちが、彼らに不利になるような発言や行動を慎む。その怖れは確かにその通りだと思います。しかしやがて戦場から、笑顔を失った、人の心を押し殺した彼らが家庭に戻り、家庭が戦場と化す。あるいはもの言えぬ身体となり、あるいは、この世から居なくなる。
そういう現実が、戦闘によってもたらされる事が解かっていても、それを止めようと動かない。自衛官の仕事だから仕方ないこととして、黙して受け入れる。私は『戦争で戦う勇気』より、『戦争と闘う勇気を』持ちたいと思います。」 「卑怯者、臆病者と言われようが、私の息子には人に向けた銃口を絞る前に、自衛官を退官してほしいと心から願います。彼は、私の思いにこたえたことはありませんが、私の思いが届くなら、どうか人としての心を失わず、次の人生を歩んで欲しいと願います。これらを訴え続けるために、私も言葉による闘いを続けたい。国会に私たちの思いを伝えるための政治活動、選挙活動を続けたい。共に歩んでいただける皆さま方と、これからも歩み続けたい。そう願わずにはいられません。」  

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カツジ猫