ぼくと、ゆりのはな(カツジ猫)
みなさん、こんばんわ
かいぬしが、いそがしそうだったので、
ぼくは、このごろずっと、うえの、おもやにいました。
おもやには、むかし、このいえにいた、いぬや、ねこが、くらしていて、
かいぬしのいるあたらしいいえには、せんぱいねこの、きゃらめるさんと、
あにゃんさんと、みるくさんがいます。
ぼくたちは、もうみんな、しんでるけど、いきもののめにはみえないだけで、
まえとおなじように、かいぬしといっしょに、くらしています。
ぼくは、いちばん、さいきんの、きょねんのなつにしんだので、
かいぬしは、なかなか、わすれられないでいるみたいです。
「でかいからだと、かわいいかおをしていたけど、
びびりで、へたれだったから、きっと、まぬけなしにかたをして、
かなしみながら、どことなく、わらってしまうんだろうなと、
ずっと、おもっていたのに、
みょうに、どうどうと、しずかに、かっこよく、しんでいったから、
すっかり、みなおして、わたしは、おまえのなにをしっていたんだろうと、
はんせいしたぶん、そうしつかんがすごい」と、なげいています。
「もっと、おまえのことをしりたくて、
もういちど、あってみたくて、たまらない。
しょうじき、さいごにかうねこが、おまえだなんて、
なんだか、しまらないなと、ずっとおもっていたのに、
いまでは、さいごをかざるにふさわしい、
なぞにつつまれた、ふしぎなねこだったと、
だんだん、そんざいが、おおきくなる。
まったくもう、してやられたって、かんじだよ」と、
ときどき、しょんぼりしています。
かいぬしが、いちばんすきだったのは、
はっさいのわかさで、えいずでしんだ、きゃらめるさんです。
それは、これからも、かわらないだろうから、
ちょっと、くやしいんだけど、
きゃらめるさんは、おおきな、きんいろと、しろの、
どうどうとしたねこで、
あんまり、そんなことは、きにしてないみたいだから、
ぼくも、かおには、だしません。

かいぬしには、ぼくたちは、みえてないんだけど、
けはいをかんじるのか、ときどき、ぼくに、はなしかけます。
きのうは、たいふうで、けさも、あめがふって、
あさ、ぼくが、にわにでてみたら、かいぬしが、にわのようすをみにきていました。
だれもいないにわで、ぼくと、かいぬしは、ふたりだけでした。
かいぬしは、ゆりや、ばらが、いっぱいさいているなかで、
いえにかざるはなを、きりながら、
あしもとにいる、ぼくのほうをみて、
「こうやって、はなのせわや、りょうりや、そうじや、かいものをしていると、
おまえのことが、くらしのなかから、きえていきそうで、こわい。
いつか、だんだん、たべものや、はなや、にわや、しごとや、
いろんなものごとが、おまえといれかわって、
わたしのからだや、こころのなかから、
おまえはいなくなってしまうんだろうか。
ねえ、かつじ。
わたしは、おまえが、じぶんのなかから、すっかりきえてしまうまで、
いきていたくはないきがするよ。
そんなのは、もう、わたしじゃないきがするよ。
わたしのしらない、だれかだよ。
そりゃ、そうやって、ひとはいきていくんだろうけどさ」と、
ためいきをついていました。

ゆりのはなの、はっぱから、つゆが、ぼくのうえにおちて、
ぼくは、いきていたときのくせで、ぶるぶるあたまをふって、
みみをふせて、しずくをおとしてみせてから、
かいぬしについて、したのいえに、かえりました。
あさがはやいから、きゃらめるさんたちは、みんなまだねていて、
ぼくは、かいぬしに、ついてまわって、
ぼくの、おはかのみえるろうかに、かいぬしが、
ゆりをかざるのを、すわって、みていました。

かいぬしは、しごとで、つかれているんだろうな。
ぼくににた、ぬいぐるみも、まくらのそばにあるんだけど、
それじゃやっぱり、かわりには、ならないみたいだし、
またしばらく、いっしょにねてやろうと、おもいます。