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イチジクは根付くか

何となく家は散らかっているけれど、ぬいぐるみの猫たちが、皆それぞれの場で落ち着いているように見えるせいか、気分は妙に安らかだ。台風のせいか気温もかなり下がって来て、生きてるのが楽なのは、そのせいもあるかもしれない。さっき、車に乗ってみたら、車外温度の表示が、二十九度になっていた。三十度を切ったのは、いつ以来か思い出せない。

今日は昼から造園業の人が、先日買ったイチジクの木を植えに来て下さった。庭のどこを掘っても、砂利やコンクリートだらけで、これじゃ、木は育たないと業者のおじさんは、たいがい機嫌が悪かった。最終的にはあきらめて、よさそうな場所の砂利の層を、「どんなつもりで、こんな庭造りをしたのか」と怒りながら、しゃにむに掘って、さすがはプロで、きれいに深い穴を掘り、堆肥も入れて、いちじくを鉢から出して植え、太い木でしっかり支柱も立てて下さった。来年の二月の末に、何とかいう肥料(マグァンプだっけ)を入れるようにと教えてくれて、最後は何か困ったら、いつでも連絡するようにと、親切に言って下さって去って行かれた。

私はそばで見ていただけで、何もしたわけではないが、大仕事をひとつ片づけたようで、ほっとした。ちなみに料金は一万五千円。お茶も出すひまがなかったので、ペットボトルとクッキーの袋と、いただきもののゼリーを少し、お土産にさしあげる。

本当は木の枝の刈り込みとか、切った枝の始末とか、お願いしてもよかったのだが、少しは涼しくなりそうだし、自分でできるだけ、ぼちぼちやってみようかと思う。

たまった雑誌を整理していたら、古い「月間ホークス」が数冊出て来た。まだほんの数年前のことなのに、板東湧梧投手が表紙になってたり(イケメンで有名だけど、それより猫好きでまじめな好青年なのが私には何より魅力だったのだが、移籍した巨人でどうしているのかしら)、他にも今はもうよそに行った上林選手やリチャード選手や千賀投手がメイン級で、対談やインタビューでしっかり登場しているし、川瀬選手は赤ちゃんが生まれたばかりで、おむつを代えるのが下手で奥さまに怒られた(もうしないでいい、と言われたらしい)とか言ってるし、栗原選手の写真はびっくりするほど若々しいし、一番親しいチームメートは今宮選手とバレンティン選手と答えて、今では恋人か夫婦か兄弟かとファンがあきれるほどいつもべったり仲よしの周東選手の名前は全然出ないし、その周東選手は牧原選手について「これまでは感情豊かな方だなという印象でしたが、今は穏やかさが足された感じです」「牧さんみたいに和やかにいられれば、もっと楽に野球ができるのかなと思います」とか言ってて、あらゆる意味で目が点になった(笑)。2022年9月の号なんですが、何なんだそれは。

私は昔、江戸の紀行研究でちょっと注目されたころ(他に誰もやってなかったというのが一番大きな理由だろうけど。笑)、かなりメジャーな雑誌の対談に何回か出た。その中で、他の出席者に比べて私の発言量が少ないからと、担当の編集者が勝手に私の発言を作って増やして、「これでどうでしょうか」と原稿を送って来たことがある。言葉遣いも内容も、私が死んでも口にしないだろう、甘ったくれた、差別意識その他がぎゅうづめのでっちあげづくしで、私は目まいがして、ほぼ全部削除して原稿を返した。「私はこんなことは言わないようにしています」などのコメントも、一応つけたのだが、相手は「ご自分では口にしていても、忘れていて、文字起こしするとびっくりして、違和感を持たれる方も多いんですよ~」と、どこやら残念そうだった。

それ以来私は、雑誌や新聞や週刊誌の、特にインタビューや対談で誰かが発言したことが、少々変でも嫌いでも、それでその相手の評価や好き嫌いは絶対決めないことにしている。あれほどぬけぬけいけしゃあしゃあと他人の発言をでっちあげる記者や編集者がいると思うと、よっぽど他の情報や資料と照らし合わせて慎重に判断しないと、その人となりなんかわかるものではないと、あの薄っ気味悪い原稿から骨身に染みた。レイプとまでは言わないが、ネッキング(言い方が古すぎるね)ぐらいはされたようなおぞましさが、今思い出しても肌によみがえる。

周東選手は特に私の知ってる数少ない野球選手の中でも、まだ支配下の若い時からずっと、そういう点では前後撞着の矛盾する発言が多く、いったいどういう人なんだと気になることが多かった。一応、次第に理解した(つもりになった)のは、この人は多分他の選手なら言わない(言えない)微妙で複雑な内心までを、ことばにする(できる)から(最近ではこれに加えて、周東選手は多分昔から、無造作に何でも口にしないで自分は今何を言うべきか伝えるべきかをいつも考えながらしゃべるため、今はとにかく若いころは、その配慮がうまく行かなくて、首尾一貫しない細かい発言が多くなっていたのかなとも思う)、取材者の方も安易にまとめられなくて、自分たちの手持ちのキャラ(努力家、天才、変人、豪傑、弱虫、冷たい、熱い、地味、派手、その他いろいろ)のどれにあてはめていいのかわからなくて、混乱してイメージが右往左往してしまうんだろうな、その結果、発言のまとめ方もどういう方向で選択や構成をしていいか決めにくいんだろうなということだった。

この牧原選手との関係は、多分かなり正確にまとめていて実際の発言やニュアンスに近い気がするが、そう思えばなおのこと、おかしくてしかたがない。牧原選手もこの時期にはまだ、いじけの、ぼやきの、ひねくれが、そのまま売りになって、皆に愛されるキャラとして確立するまでにはなっていなかった。その分、その土台にある、まじめさや高い能力や愛すべき人柄が、こうやってしっかり残されているのは、実に慶賀すべきことではある。それにしても「感情豊かな方」とはねえ。いや、わかるけど。

とか書いてたら寝落ちして、夜が明けた(笑)。庭も明るくなったから、イチジクの写真でも撮りに行って来ようかな。

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カツジ猫