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シャーロック・ホームズの映画。

キャラママさんの同僚の方に、クモが死ぬほどキライな方があらせられるらしい(笑)。まだ予告を見ただけですが、そういう方にはどんなに面白そうでも「ダレル・シャン」はすすめられないなあ。まあ、あのクモ、変に現実ばなれするほど色鮮やかでヌイグルミみたいなのは、きっとそういうクモぎらいの人も見られるようにとの配慮かもしれんけど。にしても、景品のストラップにまでせんでもよかろうに(笑)。クモぎらい人口ってなめたらあかんぜよー、興行収入に影響せんといいが。
私はひさびさのウィレム・デフォー見るためだけでも、行こうと思ってますけどねー。

その予告編を見たのは、公開3日目の「シャーロック・ホームズ」見たときで、これもまあ、なかなか悪くなかったですよ。
私はホームズが小学校のころから好きで、作品はすべて何度も読んで覚えてる、軽度のシャーロッキアン(笑)で、これ、ホームズファンの中には「イメージとちがう」って文句言う人もいるかもしれませんけど、よく知ってる人なら、監督も俳優も原作を好きでよく読んでると共感できると思う。

まあ、私は主役のロバート・ダウニー・JRの特にファンじゃないし、どっちかというと苦手かもしれない微妙な俳優なんですが、でもやっぱりうまいなあと、この映画では笑ってしまう。ワトスン役のジュード・ロウも以下同文(笑)。これだけ有名な二人を演ずるには、プレッシャーありまくりだったと思うけど、萎縮してないし、といって開き直って「これがおれたちのホームズ&ワトスンだ!」って開き直ってる風もまったくなく、原作に堂々と誠実にわたりあってるのが、最高に好感が持てました。
ホームズファンなら絶対知ってるなつかしいしぐさ(指を山形に合わせるとか)や小ネタが随所にちりばめられ、終始ニヤニヤしてしまうし。

ホームズが武闘派で、相当変な人に見えるのが、ショックな原作ファンもいるかもしれないけど、でも実はホームズって、まったくそういう変な人なんだよね。武闘派だし。ワトスンが原作のデクノボウっぽいのが、有能な助手になってるのも事実はそうかもと納得させられるし。「スウィーニー・トッド」を思わせる汚い猥雑なでもパワフルなロンドンも、「ああ、たしかにホームズはこういう世界に生きてたのね」と奇妙に納得させられました。

上品なテレビドラマや、これまでのホームズ映画とちがって、生々しい生身のホームズとその世界が現代によみがえった快感が、見終わったあとも、ずっと尾を引きます。悪役のマーク・ストロングも「ワールド・オブ・ライズ」ほどのカッコよさはないけど、その分重厚で、この人やっぱりうまかったんだと、よくわかったのはうれしかった。「ワールド・オブ・ライズ」のハニのカッコよさは異常なほどですけど、こちらを見た後では、あっちがちょっとだけ軽くて薄っぺらく見えます。それはハニがそうだったんで、ストロングのせいじゃないけど。要するにうまい俳優なんですよ。

たださ、その現代風でリアルで、生命力にあふれたホームズとその世界を感じる喜びとともに、なんかそのー、ホームズのこと、よーく知ってて愛してる男や女がいっしょになって、町内のお祭りで学芸会やってるような楽しさも同時に感じてしまうのは、いいことなのか悪いことなのか。わからん(笑)。観客もその一員となって、ホームズをしのぶ大イベントに参加してるような不思議な気分になるんですよ。これは、ホームズを知らない人には、どう受けとめられるのか、いっそ何も感じないでもすむのかな。

どっちにしろ、原作の、妙にとぼけたハチャメチャさが十二分に生かされて、悪夢と紙一重で、でもホームズ自身の中にもある、まっとうな健全さがそれと同化しつつ拒んでいる様子もよく描かれていて、なかなかパワフルな傑作でした。
「あ、こりゃ二度は見ないでいいか」と笑いながら思ってたんですが、時間があったら、もう一回見てもいいかも。毒薬まじりの健康食品みたいな元気が出そうでもある。
あれだけ泥くさいエネルギーにあふれてるのに、原作の持つ品の良さももどこかにきちんとあるんですよねー。これはひょっとしたら字幕の功績もあるのかもしれないけど。

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カツジ猫