力つきちゃって、地味なイブ(笑)
昼ごろまで道路の状況が心配で、ぐずぐずしていて、夕方やっと買い物に出た。同じことを考える人が多いのか、道に車があふれてた。めざしたガソリンスタンドは閉まってるし、アヘアヘしながら少し離れたスタンドに行って、優しい店員さんに手伝ってもらいながら灯油を三缶手に入れる。それからスーパーに行って、注文していたケーキとチキンを引き取ったついでに、おかずやジュースも少し買い込み、バカ高いいちごも勢いで買ってしまって自分で自分にびびりながら(岸田首相がご献上いただいたズワイガニとブリに舌鼓を打ってると知ったら、また気分もちがったろうけど)、最後の締めに花屋さんに行って、母と祖父の命日も兼ねて、立派なユリとかわいいチューリップを買ってめでたく帰宅した。
本来なら、ケーキとチキンとジンジャーエールでイブを祝うところだったが、灯油を運び込んで花を飾って買い物をしわけて冷蔵庫に入れた時点でもう力つき、暖かいごはんと切り落としのさしみパックとイチゴのヨーグルトかけだけで、やっとこさ夕食をすませて、ベッドに倒れ込んで寝てしまった。猫のカツジが甘えてよりそって来て、私にこねまわされて嬉しそうだった。彼にはこれが何よりも楽しいイブだったのかもしれない。
先ほどようやく起きて、景気づけにジンジャーエールと、以前に喫茶店でもらった丸いチョコレートとを味わい、あらためてきちんと寝ることにする。ケーキとチキンは明日のごちそうだ。忘れかけていたっけが、少し前に自分の安物のセーターと、カツジ用のかわいい小さい毛布を買ってたので、あれを明日プレゼントにする。
お隣の家が少し前から、かなり大々的なリフォームをされてる。「やかましいと思いますが」と工事関係の人が、おしゃれなメモパッドと断りの紙を持ってごあいさつに来られた。それからひと月ほど、たしかに大きな音がずっとしていたが、水回りがどんどん改造されてきれいになって行く様子が外からもかいまみえて、庭も野良猫に汚されていたのが、すっかり片づいてきれいになって行くのも、何となく楽しく、つい、のぞきたくなるのを、がまんして、水まきしながら目をそらしていた。
ここ数日、外の壁ができあがって、中の様子は見えなくなった。大工さんたちは中で仕事をしているようで、音もほとんど聞こえなくなった。ちょうどその頃、寒さが激化したから、大工さんたちのことを思うと、こちらもほっとした。何となく、あらかた出来上がった家の中で細かい作業をしているのは、今が一番楽しいんじゃないかなあとも思った。
家の人はどこかに移っておられるのか、家のどこかにおられるのか、多分前者だろう。そして今夜も家にはあかあかと灯が灯って、大工さんたちの車が夜遅くまで停まっていた。というか、私が家に入るまでは、そうだった。
イブなのに、まさか泊まりこまれるのではないだろうな。
首相がカニだのブリだの食っていい気になっている間に(それにしても政策と言い生活と言い、どうしてこう人の神経を逆なでして支持率を落としたがるんだろうな)、コロナと雪とで人は次々死んで行ってる。さっきもニュースで私と同じ76歳の一人暮らしの女性が、屋根から落ちてきた雪に埋まって自宅の庭で死んでたと言ってた。そばにスコップがあったから雪かきをしておられたのだろうとのこと。
昔、年寄りが雪かきその他で高いところに上がったりして事故にあうのを、去年はできていたことが今年はできなくなるんだろうなとか思っていたが、自分もその年になってみると、できようができまいが、自分でやらないと、屋根はつぶれる家はこわれる、住むところまでなくなるのだ。生きるためにはしかたがないのだ。自助だの共助だのという前に、若い人を自治体で雇うとか自衛隊に頼むとかして、国が何とかすべきだろ。しつこいが、ブリやカニなど食ってる前に。
別の意味で深い寒さを感じるのは、首相の狙撃犯人の山上容疑者のことだ。精神鑑定が終わって起訴が決まったとかいう話だが、どういう毎日を過ごしているのか、まったくうかがえないのが恐ろしいし悲しい。ネトウヨや政府はもちろん、野党や左翼の人たちも彼のことはきっとそんなに心から心配していないだろう。すべての人の興味関心のすきまに落っこちて、目をそらされているのは、変に注目されるよりいいのかもしれないが、でも、限りない孤独の広がりと深みの中に放置されているようで、何だか気になってしかたがない。