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幸福な風景

ひと仕事して、バテて帰ってきて、ベッドにひっくり返る。そんでもってあおむくと、枕元にドライフラワーと化した青い花と、庭で摘んだ赤いバラと、カツジ猫の卓上カレンダーが目に入る。さらにその向こうの壁には、生きていたときにいつもやってた同じかっこうで寝ているキャラメルのペナントも見える。目に入るすべてが快くてなつかしく、バランスもとれて満足だ。

で、この姿勢のままに、リモコン入れて、テレビの大相撲やプロ野球を見る。なんか、映画によくある、その昔の王侯貴族や権力者が、広間で玉座にふんぞりかえり、眼の前で剣闘士や曲芸師が鍛えられた肉体やすぐれた技を披露するのを楽しんで、目の保養をしているのと、ちっともひけをとらない贅沢をしているようで、うう最高と満足する。

そうやって、ながめている内にプロ野球ではホークスが、ものすごい速さでリーグ優勝を決めた。「しんぶん赤旗」のスポーツ欄はホークスにもプロ野球にもあまり紙面を割かないのだが、珍しく大きめのコラムを出した。もっとも、このスポーツ欄は、記事は少ないが長く書く時の内容はきっちりしていて、記者はしっかり調べているのがわかる。このコラムも無難だが行き届いた良い内容だった。

ただ、あんまり急激に優勝を決めるもんだから、テレビ中継もないし、メディアも用意してなくてとまどい気味で、そもそも選手たちも、何だか感動の準備をしてなくて、あとで実況のニュースを見たら、「周東選手はじめ、ベンチでも皆が身を乗り出しています」と勝利の直前の様子を告げていたが、映像を見たら周東選手と柳田選手はベンチの奥でくつろいでのんきに何かしゃべっていて、他の選手も似たりよったりで、思わず噴き出した。

まあめでたいことである。そう言えば脚の負傷が心配された周東選手も、あまりひどいけがではなかったようで、無理したら出られるがCSに向けてゆっくり休養させると監督は言っていて、優勝後はビールかけも早めに消えたし、翌日からはベンチからもいなくなった。それまでは、いつものように元気に皆を応援して盛り上げていて、自分の代わりにセンターに抜擢された若手の川村選手が、予想外なほど攻守にいいプレーをして、ただ最後に難しい長打を取りそこねたとき、出迎えてすぐ「まあまあ。これが俺との差やな」とか言ったらしくて、川村選手がたいそうくやしがっていた。

川村選手はあんまり欲がないというかがつがつしてない印象があって、それを批判されたりもするので、くやしがったのなら、いいことだとちょっと思っていた。その周東選手の発言も「ひどい」とか「らしい」とか皆が笑って面白がる中、「スポの佑京さんの記事に物申す。佑京さんのベンチ久々で忘れてた。 守備から戻る選手を先頭で出迎え、 投手に声かけ 川村くん安打の際は凄く喜び、その後ずっと隣で話して。 流れで言葉が出たかもしれない、 それ切り取り、 佑京さんがビッグマウス、 この表情見てそう思う?」とか「周東はホンマにやばく落ち込んでる相手にはむしろ寄り添う側に回る。一軍出始め時期の大津が死球連発してベンチで項垂れてた時とか」とか、発言しているファンがあちこちにいて、私もそのとおりとは思うと同時に、こういう冷静な修正をただちにするファンが何人もいるのは、本当に幸せなことだと思った。

監督も選手も早すぎる優勝にとまどいながらも、特に監督は心をひきしめているのがよくわかったが、それでも今日の試合では最下位の楽天に負けてしまったようで、「ビールかけで飲みすぎたのか」とか言われている。でも去年だったか、ビールかけの翌日に、ほろよい気分で大勝したのだよね、このチームはたしか。まあ今年は新人も多いし、そうも行かなかったのかしら。

新人ではないが、よそから移籍して来て初めて優勝を体験する選手も多くて、山本祐大選手や上茶谷投手が、いろんなインタビューを受けていた。優勝前からあんなこと聞くのは縁起が悪いと危ぶむファンも多くて、私もちょっとそんな気もしていたが、彼らは皆とても活き活きと、優勝を初めて味わう期待を語っていて、それはそれでほほえましかった。

特に山本選手は横浜ベイスターズを突然出されたのに、皆が仰天したほどの立派な捕手だったらしく、彼が「初優勝が楽しみです」みたいな発言をしても、横浜ファンも含めて皆が「彼は何をっても許される」と言って、認めているのが、今の活躍ぶりも含めて、人柄も能力もすぐれた選手だったのだろうなあと感心した。二年前か、これとは反対に、何か私はよく知らないなりゆきで、いろいろもめて、元のチームやファンからあらゆる激しい攻撃を受けていたらしい上沢投手についても、逆にインタビューその他で人柄を知るにつけ、「ああ、これだけ魅力的で色っぽい人だったら、それはかつてのファンは可愛さ余って何とやらで、憎悪に走る人もいるかもしれない」と、まったく反対の方向から、その人間的魅力を認識した。私はいつも言うことだが、地元のホークス以外のチームのことはまるで知らないから、よその選手がどうかは知らない。ただ、ホークスは実力が同じなら顔で採るという噂がまことしやかにささやかれるが、それよりも、実力が同じなら人柄で採ってやしないかと思うぐらい、彼らは皆、タイプはちがうが、まじめで立派だ。

で、その山本選手が「何を言っても許される」と言われたスレッドでは、彼を放出した横浜ベイスターズがとにかく悪いと皆が言っていて、そもそも昔から、そこを出た選手たちは皆、自分たちのいたチームを批判していたということを、まとめている人もいて、これにはもう笑うしかなかった。すごい。個人的には相川亮二氏のコメントがめちゃ受けた。

三浦大輔「契約更改で改善を要求しても聞いて貰えなかった、出て行かれても仕方が無い球団だった」
工藤公康「横浜の選手は練習しない」
仁志敏久「此処に居ると自分迄駄目になる、最下位て学ぶ事等何も無い」
相川亮二「ヤクルトでは構えた所に球が来て感動した」
吉見祐治「ロッテに移籍して久しぶりに野球が楽しいと感じられた」
加藤康介「阪神の練習に初めて参加して強い球団には強い理由があると感じた、僕も追い付かないと」
坂元弥太郎「横浜は練習の集中度も低いし制服もきちっとして居ない。ヤクルトとは大違い。もっとプロ意識を高めないと」
内川聖一「僕自身横浜を出る喜びはあった。横浜には恩義も愛着もある、でも横浜に居ると自分が駄目になると思った。横浜では誰を信用して良いか判らなかった、ソフトバンクからの連絡でスタートラインに立てた」
寺原隼人「一人ひとりの選手が自分に投資して、鍛えることが少ないのでは、と感じた」
渡辺直人「サッカーやるのはおかしいよ…、楽天だったらぶちのめされて居る」

↑こんな事平然と言われるTBS横浜と今の横浜は違う筈…だよね?

いや、よくも集めたものですね。でも、ここまで読むと何だかそれなりに、いいチームのような気もしてきて、ちょっと検索してみていたら、こういうのもあったけど、だいぶ前に山下大輔という立派な監督さんがいたとあって、その名に覚えがあった。六大学野球のファンで縁もゆかりもないのに慶応を応援して、スコアブックもつけていた亡母(大正七年生まれ)が、口にしていた記憶がある。

母は最晩年には好きだった野球も相撲も「もう知ってる人はいないから」と、興味をなくしていた。だから、山下選手の名を私が覚えるほど口にしていたというのは、まだしっかりして慶応大学とその出身者を応援していたころなのだろう。残念ながら、彼について母が言っていたことは何も思い出せないのだが、きっと熱心にくり返して、その魅力を語っていたのにちがいない。

そう思うと何となく、ほろ苦くもなつかしく、母が生きてたらひょっとしたらベイスターズのことも好きだったのじゃないかと思ったりする。もちろん母は巨人の藤田監督とか、慶応大学ゆかりの選手がいるチームはどれも好きだったから、今のホークスの慶応三兄弟なんて、そりゃもうさぞかし喜んだにちがいないが。下手すりゃ私を引きずってPayPayドームに行って、グッズでも買い込みかねなかったとマジで思う。

山下大輔(元プロ野球選手)第56回「”慶応のプリンス”が語る東京六大学野球」

 

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カツジ猫