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昔の話ですねえ。

◇キャラママさん。
言われるまで忘れてましたよ。そんなこともあったっけ。

これはもう、誰が誰だかわからない感じで話しときますが、もう何十年か前、男子学生一人と、私たち中年女性数人で、徹夜でしゃべってたとき、何だかわからん話の成り行きで、女性一人が彼に「私は実のところ、男性が皆、憎いわ。こんな女性差別があふれている世の中で、そのことに気づかないように生きているだけで、どんな男性ももう許せない」と言ったんだった。

その女性は、それにつづけて、「黙っていても、わかってほしいから、言わないでいた。気づかない人に対して、こちらから言うものかと思ってきた。だから今まで言ったことはなかった。こちらが言わないと気づかないらしい男性たちに対して、憎しみだけが、ただつのった」と言った。

「でも、憎んだのは、絶望したくなかったから。憎まないと男性に絶望してしまうと思ったから、だから憎んだの」と彼女がさらにつづけたとき、もう一人の女性が、彼女はそのとき、ほとんど初めて他のメンバーとは会ったぐらいで、何を考えているかわからないほど、いつも静かに笑っている優雅な女性だったけど、ふうっと夢見るように一言言ったのよな。「私は憎みたくなかったから、絶望した…」って。

私が一生に聞いた、忘れられない一言の、あれは今でも多分ベストテンには入りますね。

それきり、私たちの誰も、それ以後にそのことについて話したことはない。男子学生はあとで、「あの最後の一言はほんとショックだった」とは言ってたことがあったけど。

でも、私はそのとき以後、やっぱり何かがふっきれたかな。「あなたが憎い」とはっきり言ったら、初めて愛せるようになった。

というか、これはキャラママさんもだろうけど、私たちが恐れたのは、そうやって、男性に「あなたが憎い」と言って、笑ってごまかされたり、激しく反発されたり、更に傷つけられたりすることなんじゃなかった。絶対に、そんなこと、何でもなかった。

一番恐かったのは、そう言って自分の苦しみを教えたとき、「知らなかった、気づかなかった」と謝られ、「わかった、いっしょに戦おう」と言ってもらえることだった。

それは男性にとって、女性以上に苛酷な戦いになることがあまりにもわかっていたから。
そんなことを言ってくれる相手が、もしいたら、もう狂ったようにその人を愛することがわかっていて、そんなに愛したその人を、そんなに苦しい戦いにひきずりこんで滅ぼしてしまうかもしれないことがわかっていたから。

私自身に関して言えば、その問題をまだ完全に解決してはいないと思う。
だから、発言して、攻撃や無視が返ってくるのなんか私はちっとも恐くない。一番恐いのは、心から共感し、同調されること。ともに戦おうと言ってもらえること。そんなに私にとって大切になった相手を、危険にさらさなくてはならないこと。
そんなぐらいなら、孤独に戦って滅びる方がずっとやさしいし、楽なのよねえ。

前にコメントして下さった坪内さんが書いておられたけど、女人禁制の地に報道に訪れた女性アナウンサー(かな?)の方々は、「自分たちが行けないところに、カメラが行ってくれてありがたい」と、不満や怒りのかげもなく、おっしゃっておられたようですね。

本心からか、やむをえなかったのかは知りませんが、いずれにしても、その方々が、働く女性として、今、そのような職場で活躍できるようになった背後には、無器用で反感をかうような、多くの女性(や男性)たちの苦しいしぶとい戦いがあったし、私たちのような長い迷いや悩みがあったということを、どれだけかは考え、知った上で、そういうことをおっしゃっておられるのだろうかと思うと、やはりまだ絶望したくはないから、彼女たちへの憎しみがこみあげますね、私には、ええ。

◇ところで、ぜんっぜん話はちがいますが、この前テレビでぼやっと海外ドラマ見てたら、「グッド・ワイフ」というのが、けっこう面白かった。「セックス・アンド・ザ・シティ」のヒロインの彼氏のビッグが、いきなり牢屋に入ってました(笑)。何があったんだろう。
テンポがよくて面白そうで、監督はリドリー・スコット兄弟らしいし、見てみよっかなー。DVDは出てるんだろうか。

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カツジ猫