1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 映画「テッド」感想。

映画「テッド」感想。

◇アメリカで大ヒットしてるらしい。かわいいテディベアが持ち主の少年の祈りが通じて魂がやどり、口をきくようになって、それで二人がひっそり自分たちの世界を持つのかなと思ったら、そうではなくて、たちまちそれは世間に有名になって、テレビやなんかにひっぱりだこ、というのが、「キャプテン・アメリカ」の映画でも思ったが、アメリカの、まあ現代のどこの国でもか、マスメディアの存在のすごさを思う。第一「E.T.」を思い出しても、これだけの奇跡があったら、まず科学者や国務省や動物保護団体?がのりだして来そうなもんだが、そういうのがまるでないのは、まあおとぎ話だからいいか。

そういう点では大胆にリアルでなくて、しかも(以下ネタばれ)そのクマがあっという間に世間にあきられて、持ち主の少年が中年になったのと同様に中年のオヤジ化して、めためた下品で悪くなる、という、そっちは妙にリアル路線の、この落差が気になったり見逃せなかったら、まあこの映画は楽しめまいな。

◇私も気にならないじゃなかったけど、それより他のいろんなことが気になって、まあ面白く見てしまった。
ひとつは「少年の心を失わない」ってのは美しいことのようだけど、身体か心が成長して大人になって、そのまんま少年の気分が残るってことは、このテディベアと持ち主のように、野放図でだらしなくていやらしくて頼りないダメ人間になることでもあるんだなってことだ。

そして、それとからむのが、女性の権利がまあある程度確立された(特にハリウッド映画の世界じゃ)現代じゃ、昔はDVやら暴力やら愛国心やら女性を守るやらとひきかえに認められてた、「男らしさ=アホらしさ」が、当節じゃやり場も行き場もなくなって、こういう没落テディベア風にならざるを得ん、ということは、そりゃあるわなあという納得の気分。

◇さらにまた、それとからむのが、昔だったらローリング「子鹿物語」やら大島弓子「F式蘭丸」みたく、子どもは幼いときに愛したものを捨てて、別れて、切なくも美しく大人になる、ってことだったわけだが、(以下は超ネタばれ)まあ「E.T.」もそうだったんだけど、この映画でもまた、主人公は、つうか監督は、絶対に「ちゃんとした大人になりそこねてるガキのままのテディベア」を消さないし、別れも告げさせないんだよね。終盤、そうなるんじゃないかって気配は何度も何度もあるんだが。

私が昔よく言ってた「大人になるってことは、子ども時代を捨てることじゃない」って論理が、ここでは充分に生かされて守られてる。つまり、同性愛でもテディベアでも、好きなものを捨ててまで「合せていく」べき、ちゃんとした市民社会や大人の基準が今はもう、ないに等しいつうか、すごくわかりにくくなってる。とってつけたようなゲイの友人ネタもふくめて、そういう大人の世界、ちゃんとした社会に入って行くためには、少なくとも捨てなくてもいいものはたくさんあるって、この映画は言ってる。
立派だなあ、と言いたいが、そんなにほめることでもないのかもしれないのは、もはや、そういうかたちでしか、描けなくなってるんだよね、少年時代も、成長も。

それは現実が虚構に勝ってるってことで、その現実は私が支持し応援するものだから、まあいいんだけど。中途半端な「テディベアとの別れ」「遅れてきた少年の成長物語」にしなかったのは、まあようやったとは思うけど。

◇だからヒットもしたのかなあ。ううん、パンフレット買わなかったけど、ちょっと買ってみたくなっちゃったかな(笑)。
あ、クマの眉毛はない方がよかったかなあ。
町山さんのはちゃめちゃ字幕は、けっこう楽しめた。まあ、そういう映画なんだということもよく伝わるしさ。

Twitter Facebook
カツジ猫