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温度差

◎毎日新聞で私の本の書評を書いて下さった湯川豊さんは、丸谷才一や須賀敦子の本にも詳しい方らしく、どちらも私は好きな作家なので何となくそれもうれしいのですが、この方が書かれたという「イワナの夏」という小説を私は昔、文庫本で読んでいました。ずいぶん前のことで細かい筋は覚えていないのですが、水や草の輝きのようなきらきらした印象が今も残っています。書庫のどこかにあるはずなので、読みなおしてみようかな。

今日は今から、富士山関係の紀行の校正をひとつすませて、明日には出版社に送る予定です。

◎毎日新聞が今朝の記事で警戒区域の住民の方の一時帰宅にふれていて、ペットのこともちらと書いてくれていました。しかし、住民がペットに執着するのがいかにも迷惑で危険なという感じの書き方で、かなり衝撃を受けました。
これは記事を書いた記者の感覚というより、取材先の行政の人がそういう感じでいるのが反映されたのだと思います。

先にここで紹介した自民党議員の方のブログでもおわかりのように、政府も行政も、たしかに今「動物どころではない」のだろうと思います。混乱が起こるのを避け、危険を冒すのを避けるという方向ですべてが動いているのが目に見えるようです。

動物の気持ちになれとは言いませんが、それを救いたいと必死になっている住民の気持ちは理解する必要があるのではないでしょうか。
「最小限の手荷物しか持ち出せないというのが、どこまで守れるか。飼い主がペットを一度抱いたらもう放しませんよ」と、危惧し困惑している市職員のことばは、その様子が目に浮かぶように痛切で、ああ、政府も行政もそういう感覚なんだなあと、よくわかりました。飼い主がめぐりあったペットを抱いて二度と放さないというのは、困った事態でしかないんですね。行政の担当の人たちにとっては。

ガンになってもかまわないと、原発近くにまで行って、知らない人のペットを救う人たちとの、この温度差は何なのか。どうやって、この落差を埋めたらいいのかと、自分の無力さに私は呆然とします。まあ、そんなことを言っている場合ではないですが。

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カツジ猫