皆、がんばってるな
毎日新聞の昨日の夕刊のコラムで、田中優子さんが天皇制にふれていた。いつも共感しながら読むのだけど、今回は特に、江戸時代の状況にも触れながら、しっかりきっぱり明確に、天皇の象徴としての努力を評価しつつも、天皇制は男女不平等の象徴と指摘し、制度を変えないといずれ消滅すると言っているのに感心した。
これはかなり前のことになるが、5月9日の同じ毎日新聞の特集ワイドでは、小林節さんが、改憲から護憲に変わるという、その過程をていねいに報道していた。これは決して変節なんかじゃない。改憲がむしろ少数派であったころから、世間の動きに逆らって改憲を唱えてきた人が、そういう真面目で細かい議論をいっさい拒否して、ごまかしふみにじる今の首相のもとでは改憲はできない、してはいけないと訴えたのは、むしろ、誠実に真摯に訴えてきた改憲そのものが汚されると感じたからではなかっただろうか。そして、それをつきつめる中で、改憲そのものの否定に至る。この終始一貫した厳しく清々しい姿勢は、わかりやすくて、ぞくぞくするほど快い「あたりまえさ」がある。
母はよく、「あの人は『ともにことをはかるに足る人』だ」と口にした。もしかしたら全人類を、その二つにわけていたかもしれない。自分にいくらよくしてくれても、世間にいくら人気があっても、どんなに有能でもカッコよくても、「ともにことをはかるには足らない」と片づけたら、おしまいだった。親しくつきあっていても、仲良くしていても、そういう人は頼りにはしないし信頼もしないし、何の期待もしていなかった。
小林さんの姿勢の変化の流れには、そういう点で、「ともにことをはかるに足る」と信頼できるものがしっかりとある。
海外ドラマ「グッド・ワイフ」の新シーズンの続きが出たのを借りられてて、やっと戻って来てたので、よし借りようと思ったら、11巻までとはんぱな数なので、新作の四枚割引が使えない。くやしいから、どうでもいい新作をいくつか加えて借りてきた。
それで、「ガザの美容室」というのを見たが、内戦状態の中、女性たちが美容室に閉じ込められてしまうという話で、ハマスやファタハなどのことばが飛び交うし、狭い室内での女優さんたちのやりとりばっかしなのだが、舞台劇みたいな面白さがあった。
でもさ、あのさあ、こういう話の常で、おしゃべりのうざい女や自分勝手な高飛車な女や、いつものパターンのキャラが出て来るんだけど、その中のひとりが、閉じ込められてる緊迫感マックスの中で、「いつまで待たせるの、早く仕事をして」と美容師にせまって、髪を切らせるのは正直びびったよ。他のお客もメークやセットやしてもらってるんだけど、あの状況下で、刃物持った人に顔の回りを触らせて平気な心境って、それありなん? 男の監督だったら、そこのとこがわかってないじゃんと言う人もいるだろうけど、男だってわかるよねそんな恐さぐらい。志賀直哉の「剃刀」って名作の短編もあるんだからさあ。ネットの感想で誰かが「電車の中で読んでびびった」と書いてるけど、私も中学か高校のころ読んだ「清兵衛と瓢箪」の中で、一番印象に残ってる短編て、あれだもん。
写真は、例の母の遺した野球人形ですけど、前の写真と少しちがうのわかりますか? 消しゴムを切ってホームベースを作ってつけてみました。こんなの楽勝と思っていたら、消しゴムがふにゃふにゃして、案外難しかったのよ。