荒れ果てた庭をそれなりの庭園に見せかける方法は
今朝は少し早く起きたので、水まきしたあと、茂り放題だった中庭の笹を刈り込んだ。ざくざく根元から切ってこれまた茂り放題伸び放題のミモザの木の下に積み上げて、これで中庭が少しは見よくなるかと思っていたら、何と出来かけの蜂の巣にぶつかってしまった。まだ小さくて蜂も大人しく、かわいそうだが長靴で巣を踏み潰しても大した反撃はして来なかった。それでもひょっと刺されてショック死なんかしたらいやだから、まだ半分ぐらい笹の茂みを残したまま引き上げた。多分あのまま放っておけば、蜂はいなくなるだろう。このごろ水まきのたびに一二匹飛んでくるので、気になっていたが、あそこに根城があったのか。ほんと気の毒だが、この段階で気づいてよかった。今日の夕方、刈り込んでしまえるだろう。何しろ夜明けと日暮れにしか、とても外には出られない熱波だ。
どっちみち、この暑さとこのトシのこの身体だ。荒れ果てた庭をきちんとできるような力があるわけはない。せいぜい、ごまかして、見てくれが少しでもいいようにしておくしかない。その悪だくらみを考えるのも、ちょっと楽しい。
少し前に衝動買いした、ペットの毛を入れておくロケットが送られて来た。色違いで三個もある。愛猫たちの毛を入れておく、こういうロケットが欲しくて、一時血眼で探していくつか持ってはいるのだが、これはあっさりしていて、そう高くもなく、気に入ってつい注文した。
大昔の猫たちの毛は残っていない。二〇〇〇年に亡くなった愛猫キャラメルの毛を切り取ったのからはじまって、三毛猫シナモンや黒猫アニャンをはじめ何匹かの毛は取ってある。黒猫アニャンの毛は立派な銀のロケットに入れているが、他の猫たちのは小さい封筒に入れて保管している。ひとつまちがったら、誰の毛だかわからなくなりそうなのが恐い。
さしあたり今いるカツジ猫の毛を入れてやろうと思っていたのだが、もう死んでしまって採取不可能な先輩たちとちがって、いつでも切り取れる、だいたい毎日山ほどブラッシングでとれてくる毛なので、余裕というか、ありがたみがない。いつ何があるかもしれないから、確保しておくかと思っても、それも何だか気が進まない。
彼の落っこちた爪(猫の爪というのは、さやのように、古くなったら外れて落ちる。ときどき猫が歯でひっぱって取っている)をいくつか保管していて、これは他の猫のはないから、まちがうこともなかろうと、それを当面入れることにした。そうしたら、よくあることだが、保管した入れ物が見つからない。しゃあないから、一番最近落ちていて、デスクの端にのせておいた一片を入れてみた。何かようわからんけど、まあまあかしらん。あと二個あるから、キャラメルとシナモンの毛を入れておこうかな。
「虎に翼」は、悩める星さんが、戦時中「総力戦研究所」にいた過去を告白した。模擬内閣を作って米国相手に机上の実戦をやってみたら、何度やっても敗北しか結果が出ないので、政府に報告進言したら黙殺無視されて、その机上の実験どおりにことは進んで日本は敗北したんだとか。それはいやだったろうなあ。トロイ戦争のカッサンドラみたいなものじゃないか。予言も未来予知も正確なのに、なすすべがないなんて、それは罪の意識にかられるというか、それ以上の恐怖だ。そういう研究所がちゃんと実在していたことも知らなかった。何かと勉強になる。つくづくありがたい。