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財界とガン細胞

こっちもいろいろ忙しいので、細かくチェックしてるわけでもないが、福岡教育大学の覚醒剤で逮捕された教授の事件については、その後これといった情報は見当たらず、いつものことだが警察によると認否も明らかにしていないみたいで、何をどう考えていいのかわからない。わからないなりに、いろいろと考えてしまう。第一、大学の先生が何でまた覚醒剤なんかにはまるのか、その理由が見当がつかない。書道って芸術だから(そんなこと言ったら私の専門の文学だって芸術だが)、芸術家として、そういうものを必要とする心境があったのだろうか。それも何だかしょうもないが、もしや忙しすぎて行き詰まってとかだったら、もっと救われないなとも思う。小中高の先生方の過酷な勤務状況は最近やっと話題になってるが、このところ十年以上、大学も実はひどくて、お金がないから人は雇えず、仕事は増える一方で、もれ聞くだけでも目が回りそうになるし、身体を壊す若い先生も多い。そんなことと関係しているのではないかと思ったりすると、なおのことやりきれない。まあ、でも何一つ確かなことがわからないから、当面は気にしておくことしかできない。

国会が始まって、聞くともなしに総理の所信表明演説を聞いたが、もう、すかすかのふわふわのきれいごとで、つぎはぎで、首尾一貫せず、骨もなく、どういうか、すごくできの悪い学生のレポートを読まされているような気分になった。実のところ、最近の学生は、けっこうしっかりちゃんとして、血の通った文章を書くから、これほどひどいものには、お目にかかることがない。文句をつければきりがないが、何が「けいざいけいざいけいざい」だ。こういう安っぽいレトリックをふりかざすのが、この首相の一番いやなところで、そういう薄っぺらい派手派手しさに、心のこもらない血の通わない型通りの逃げ腰の文句がぶらぶら垂れ下がるから、もう見ていて聞いていて、こっちの目も耳も汚れるような気がする。あーあ。

けいざいけいざいとわめかれたついでに、こっちも思いつくまま言うと、経済を生きがいにし基準にして生きているだろう財界や富裕層の存在は、別にうらやましくもないから、ない方がいいが、あってもいいけど、ただ、私、今の日本の財界やら富裕層やらは、自分たちを守るためだけにしても、バカだとしか思えんのよね。昔の王侯貴族が奴隷や農奴や小作人の人権無視してしぼりあげるにしたって、もう少しは先のことを考えて、うまくやってたと思うの。

昔、北杜夫が何かのエッセイで、人類をガン細胞に例えてた。自分たちが肥大して宿主である人間の血肉を食らいつづけて滅ぼして、結局、自らも滅ぶしかない存在だって。人類がそうかどうかは知らんけど、その前に今の日本の財界や富裕層はまさにガン細胞ですよ。自分が生きながらえて栄えるためには、貢いでくれる国民や人民をせいぜい大切にして共存しておくしかないのに、枯れ果ててへたばって死に絶えるまでしぼりつくして、その結果自分たちも滅びるって未来がいったい見えないのかね。

前もどこかで書いたけど、北杜夫のエッセイを見る前からも何となく、私は宿主と共存の道を探れず、自分も滅ぼすしかないなんて、ガン細胞は基本的にバカだと思っていて、だから何だか恐くなかった。私をのっとって、ガン細胞が自分で生きて何かめざしたりするなら、それはちょっとは恐かったかもしれないが、自分にとって一番貴重でありがたい存在に気がつかないで、図に乗って力をつけて、栄えまくって自分も結局死に絶えるようなやつなんて、どう考えても大したものと思えなかった。生きのびたければ大人しくして、分を守って、私をせいぜい大事にしとけと言い聞かせてやる相手でしかなかった。手がかかるし、腹の立つ存在にはちがいがないが。
 今の財界や富裕層にも感じるところはそういう気分だ。岸田首相をはじめ、国民もメディアも、そういうふうに財界や富裕層を叱りつけて、管理しとかなきゃいかんのに、ちっともその仕事をしようとしない。情けないったらありゃしない。

比べるのも失礼だが、まだしもプロ野球のソフトバンクホークスの小久保新監督の会見の方が面白かった。彼が、「美しい」プレーやチームをめざすと言ったのも、へえと、耳をそばだてさせられた。まあどういう意味で言ったのか、これからどういう風になるかはわからないが、それにつけても思い出すことがって、わあもう、こんな時間かい。この話題はまた明日にでも。

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カツジ猫