掲示板でのおしゃべり2004年7月
[312] しかしだんだん妄想がふくらむんだよなあもうこれが。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/02(Fri) 13:59
◇ペコさん。
うわあ、私もキャラママ(板坂)もギリシャ神話そんなに詳しくないですよー。そもそもペコさんの買われたその二本もまだ見てないの。
その程度で「トロイ」を語るなって?でもですねえ、ちょっと前までは「もくば?なにそれ?ヘクトール?だれそれ?」みたいな世の中でしたから、「イーリアス」だって知ってる人なんてそんなにないので、こんな私たちだって一応知ってる内だったと思うんですよ、マジで。
ところが、何だかあの映画、「トロイ」、ヒットしたのかいまいちなのかよくわからん内に、一部めっちゃくちゃなファンが増加してしまってるようで、同人誌系だかやおい系だか知りませんが、そういう皆さんまで含めて、最近あちこちのサイト見てたらこの私も「知らんがな、そんな…」というような知識を皆さんべらべら語っておられる。キャラママ(板坂)は最初「うーん、古典の授業がしやすくなる」と喜んでたのですが、最近では「ここまでミーハー層が詳しくなったら、授業でいいかげんなこと言ったら突っ込まれそう。やりにくい。やばい。ヒットしすぎだ」と苦虫かみつぶした顔になってます。「夏のオープンキャンパスの授業、『トロイのヘレン』でやるつもりだったけど、『平家物語』に変えとこうかな」だって。
今回の「トロイ」のパリスとアキレスはいいですよー。もちろん二人とも上手ですけど、それ以上に本質的に外見、雰囲気がはまってる。へクトルの人気の高いのはわかるけど、それで後の二人がかすんだとか、主役はヘクトルだとか言ったのでは、ヘクトルにも演じたエリック・バナにも逆に気の毒だし失礼だと思う。
ヘクトルは主役じゃありません。あの二人をひきたてるためのキャラで、だからこそ魅力的なんです。最高の脇役としての仕事をきっちりしているのが最高なので、あの二人をかすませたら存在の意味がないですよ。
これを書くとまた長くなるのでやめますが、あの映画のへクトルは最初から最後までまったく変化しません。最初から完璧ですからね(笑)。でも、これでは主役ではない。主役は発展変化しないと、映画の意味がありませんもん。「水戸黄門」ならいざ知らず。
私がすごいと思うのは、監督も脚本も俳優もヘクトルを変に弱いところがあるとか欠点を持つとかトラウマがあるとかしなかったことです。ただただ理想的人物として描き、ちらっとも崩さない。その勇気と潔癖さが清々しい。そしてこういう道徳の教科書にしか出て来ないような完全無欠の常識人の紙人形みたいに現実性のない人物に、命と魅力を吹き込んで生きた人間として息づかせた監督、脚本、俳優、特に俳優はどれだけほめてもほめすぎるということはない。
たしかエリック・バナもどこかのインタビューで、「こんな完全無欠の人間を演じられるか不安」と言ってたようですから、当然このことには気づいてたでしょう。気づくわな、そら。それでもちゃんとあれだけの仕事をしたら今度は「あんないい役なら、誰がやっても魅力的になるさ」とか言われてしまいますからねー。私だったらぶちきれますよ。
ひー、また仕事が、時間がー。このへんで失礼します。
お父さま、喜ばれてよかったですね!
[313] あ、肝心の妄想を書いてない(笑)。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/02(Fri) 14:19
「312」のタイトルに書いたのは、アキレスを理解しようとする時に、彼の「名を残したい」という欲望がどうも嘘っぽいのですよね。ブラッド・ピットの演技がじゃなくて、そもそもアキレス自身がそのことをそう真剣に願っていたと思えないんです。だから、軽くも見えるのよ。上陸前後。
へクトルの「私にはシンプルな信念がある」「トロイは母だ。母のために戦え」がとても地に足がついて説得力があるのに対して、「栄光をつかめ!」とアジるアキレスの演説はどうも説得力が薄い。
それにしちゃミュルミドン(彼の部隊)は熱狂してますが、あれは言わせてもらえばアキレス命の人たちだから言われてることなんかどうでもよくて、よく言われる例だけど、あそこでアキレスがレストランのメニュー読み上げたって感動陶酔すると思うんですよねあの人たちなら(そろそろ妄想)。
それにしても「グラディエーター」で、「この戦いが終われば取り入れに故郷に帰る」と自分の生活を密着させ、「マスター・アンド・コマンダー」では、「砲兵は云々、操帆は云々」と具体的な指示を織り込んで盛り上げ、ラッセル・クロウの演じる指揮官の演説はどれも見事だなあ。これも脚本だか俳優だかどっちのせいか知らんけど。
で、仮にアキレスの「名を残す」がそう切実なもんでもなかったとすれば、何だって彼はそういうことにこだわるようになったのか?
へクトルやブリセイスでなくても「(アガメムノンはわかる、メネラオスもそりゃわかる、でもあんたは)何しに来たのさ?」と聞きたくもなるわよなそりゃ。しかもそう聞かれて本人しっかりそれで悩んでいるようでもあるし。
こういう時しょうもない妄想すると、自分の人間のけちくささが反映して、話のスケールをちっちゃくしてしまうので、ファンフィクション書く時は要注意だと思うし、だから自分はこの妄想、使う気はないんだけど、つい言ってみたくなるのがさあ…
お母さんの女神のテティスが人間の男と結婚して「半人間」の子しか持てなかったトラウマで、しかも不死にしようと思ったらかかとだけ洗い残して結局神にはできなかったもんだから(ある意味、このテティスって、人間のアラゴルンと結婚するエルフのアルウィン姫みたいなもので)、「名を残しなさいね」って息子に言ってきかせてて、素直な坊やはそれを信条にしちゃったんでは…って、それじゃ昨今のエリート好きなお受験お母さんじゃないの。
テティスのファンも多いみたいだから、こんなこと言ったら私、恨まれるだろうなあ。だから、ちがうとは思うんですけどね。ついついこの間から、その妄想がちらちらちら。
あーっ、ほんとに時間が時間が。失礼します。
[317] いえいえ、どうぞもう遠慮なさらず書き込まれて下さい。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/07(Wed) 21:21
◇ハルさん。
どうせ忙しい時は返事しませんし、読むのはいっつもとても楽しいのですから。
あー、その某有名掲示板で話題のトロイスクリプト、私ものどから手が出るほど読みたかったのですけどね、やっぱり英語かあ。まあ、読めないことはないと思うけど、私の語学力、とことん怪しいからなあ。もしよかったら、どこか気に入られたところや気になられたところをここで(日本語で!)紹介して下さるとうれしいです(笑)。
年令は考えますよねー、某掲示板でもいろいろ意見が出ていますが。私も「三幅対」書く時、ひぇー、この設定では兄弟の年令差は何とか最高でも7歳から5歳ぐらいにしとかないと子ども時代のエピソードが苦しいなあとかばたばたしてたのですが、最後は知ったこっちゃないと開き直りました。どうせもとが、あのいいかげんな「イーリアス」だし(笑)。
パリスの25歳はね、ああいうアホな25や30の男はけっこう回りにいたので驚きませんが…というか、この年になると40以下の次は17以下って感じでまとまってしまうんですよねえ。私だけかしら。
まあもう、あくまであの映画の世界ということで、「三幅対」の残りは強行突破します。 実はアキレスとブリセイスの恋も書きかけてたのですが、ちょっとスクリプトが恐いなあ(笑)。補完された二人の関係の説明って、どんなんでした?お暇な時にちらっと教えて下さい。
…と、「メネラオスの日記」に出てきた侍女さん、てきとーに名前つけてたのですが、ひょっと配役表にあったらどうしよう。
うう、もう一回見に行って、最後の配役見ないとだめかしら。
などと、超多忙な中、悶々としております。
キャラママ(板坂)は、ぶちぶち言ってたわりには、明後日、近くの自治体で男女参画についての講演をするのに、ちゃっかり「トロイ」を題材にしてるようです。
原稿がアップできたら、ここで紹介するそうですよ。
こちらも何だかまとまりませんが、こんなところで。いつでも気軽にまたおいで下さい。
[802] 見ましたよ! 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/07(Wed) 20:58
アクターズスタジオ。
「グラ」の撮影現場にしのびこんで、感動して映画関係の道を選んだ若者とのやりとりや、撮影時の怪我の話など、感心したり、笑ったり、盛りだくさんな内容でしたね。
NHKでやる時は録画します。あんなに内容濃いって思わなかったもん。
おまけでトロイ話(笑)。
かもめさんほどヘクトルを愛してはないと自分に言い聞かせてたのですが、今日気がつくと町でふらふら、必要もないのにけっこう高い、黒白ごばんじまのショルダーバッグを買ってしまっていました。やばー。(って、何の話かおわかりですよね?ふっふっふ)
[804] あのやりとりって、 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/10(Sat) 11:43
アクターズスタジオの。最初のあたり、警察の訊問じゃないかと思いました(笑)。ラッセルの答え方とか態度ったらもう。あそこに出た人の誰もがああじゃないですよねえ、もちろん。 ビデオとってないので、ご紹介いただくのを楽しみにしています。
リュサンドロスって、最後にギリシャの船団見つけて、射殺されてしまうのも彼じゃないですか?ひょっとして。
「イーリアス」の岩波文庫の索引を見る限りじゃ、名前出てないですね。映画用のキャラかしら。英語読みだとライサンダーで、「真夏の夜の夢」のヘレナの元恋人の名ですね(笑)。 トロイでかたっぱしから検索して、あちこち読みまくってましたら、彼とヘクトルが恋人になってる話があって笑いました。そこまで行かなくても、あの「お情深い」の場面はとても両者の表情が印象的ないい場面ですね。
かもめさんはとっくにお気づきでしょうが、アガメムノンとの話が決裂して、(パリスが決闘を申し出る直前)「これまで」という感じで去る時に、ヘクトルは「ぎっ!」と猫が毛をさかだてるような表情をするんですよね、ちらっと一瞬。船の上でかの有名な「愛してる?守ってくれる?」を言われて、馬の話をする時も、ようく見なくちゃわからないけど、かすかにかすかに笑っている。ああいうところにパリスがつけこむのだなということはさておき、ほんとにもう、顕微鏡で見てないとわからないような演技をするのは何べんも見る人のためへのサービスなのでしょうか、まさか。
で、昨日、市松模様のソックスを買ってしまいました(笑)。
[318] 猛暑でんなあ 投稿者:キャラママ(板坂) 投稿日:2004/07/08(Thu) 00:51
◎と言ってたら今、豪雨。
先が思いやられるよ。
じゅうばこにも協力してもらってしあげた、中間市の男女参画事業の市職員の方々への講演「私のために戦うな ―映画『トロイ』のもう一つの見方―」の原稿を「授業ノートコーナー」の「その他」に入れました。「トロイのヘレン(おまけ)」からも行けます。ひぇぇぇ、今夜ももうこんな時間か。
[319] トロイスクリプト和訳もどき 投稿者:ハル 投稿日:2004/07/08(Thu) 20:14
>じゅうばこ様
わたしも自分の無い脳味噌を駆使していっぱいいっぱいなのですけど…私の英語力は中学生レベルですよきっと(笑)
片言な上に、よくわからないところは適当に意訳してます…雰囲気なんか難しくて汲めません(だめだめじゃん)
気に入ったところでも気になったところでもなく、訳が極力簡単そうなのを選びました~。
◆アキレスとオデッセウス
アキレス:狡猾だな、オデッセウス。羊の食卓に狼を招く手立てを思いついたか(劇中ではアガメムノンの台詞?)
オデッセウス:これは戦争だ。
アキレス:アガメムノンは皆殺しにする。男も、女も、子供も――皆殺しだ。お前も知ってるだろう。
オデッセウス:私はイタケーの王だ、トロイの王ではない。私の忠誠はイタケーにある。もしこの作戦が上手くいけば、夜のうちに戦争は終わる。兵たちは妻の待つ家へ帰ることが出来る。――君はトロイを心配しているのではないのだろう?一人のトロイ人だ。たった一人のトロイの娘を。
アキレス:俺はいつでもお前の友だ。だがもしお前の考えたその作戦で娘が死ぬのなら、お前が妻の元へ帰れる日は来ないだろう。
◆アキレスとブリセイス(一部抜粋)
アキレス:一緒にラリサへ行こう。
ブリセイス:ラリサ。そこがあなたの故郷?――素敵な名前。
アキレス:もう帰ることは無いと思っていた。家を出るときに、母上に自分の運命を教えられた。
ブリセイス:お母様は神と話されるの?
アキレス:母上は言った。もしラリサにに留まれば、安らぎに満たされた、長い時を過ごせるだろうと。もしトロイへ行けば、その命は短い……だがその名は、未来永劫にわたり語り継がれるだろうと。
ブリセイス:あなたはトロイへ行くことを選んだ。
アキレス:しかし、もし別の目的のために運命が俺をここに導いたとしたら?安らぎを見つけるために戦争に行く必要があったのだとしたら?――君を見つけるために、ここへ来たのだとしたら?
パリスがアキレスを弓で射る場面ですが、ここもちょっと映画とは違って、パリスは矢筒から矢が無くなるまでアキレスを射続けるのですよ。
それでもアキレスは倒れなくて、パリスに一歩一歩近づいていくのですが、パリスはアイネイアス(ちなみに14歳)に剣を渡しちゃっていて武器が無く、お手上げ状態(?) ブリセイスはパリスのもとへ走っていって、彼を庇うように仁王立ち(?)し「もうやめて」と言うのですが、アキレスは剣を振り上げる。
しかしブリセイスはそれでも動かず、そのまま数秒間アキレスと見つめ合いながら、「もう殺さないで」と言う。
アキレスはブリセイスが身に着けていた、自分渡した貝のネックレスを見て、剣をおろす。
このあとは、アキレスがブリセイスに「生きてくれ」とかなんとか色々言って、ブリセイスも「あなたのために」とかなんとかいったあと、パリスと一緒に逃げ道へ。
これ以上訳しても自分の英語力の拙さを露呈するだけなので、この辺でやめておきます(笑)
何度も申し上げますが、間違ってる箇所は多々あるかと思いますというか絶対ありますのでご注意くださいませ。
わからないところは飛ばしてますし、もうほんと、テキトーですから。
せっかく書きかけたのなら、アキレスとブリセイスのお話も三幅対の勢いでぜひぜひ強行突破しちゃってください(笑)
映画とスクリプトは読んでみると(読めてないのですけど)ほとんど別物ですし。
無理にとはいいませんが、ぜひぜひ読みたいです!
あとスクリプトによると、ヘレンの侍女はPolydora(ポリュドーラー?)さん(20歳)かと思われます~。
[320] わー、うれしい。ありがとうございますー。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/08(Thu) 20:33
◇ハルさん。
もう感謝感激です。そーかー。噂には聞いてたけど、やっぱりこの脚本だとわかりやすいよねー。でもまあ、あの映画でも一応こうだと思えないわけではないけどねー。 ラストシーンもいいですね!私はこの方が好きだけど、パリスがとことんパリスだということも含めて(笑)。
侍女さんの名前、こそこそ訂正しておこう。
また気が向かれたらでいいですから、どうぞ他の所も訳して下さいませ。すごく楽しいです。ほんとにもう一つのお話みたいで。
◇「トロイ戦争は起こらない」、さぼっていてすみません。明日か明後日には多分…。 かわりにというのではないけれど、「五月のピティア」ちょこっとだけ更新してます。
[322] キャラママ(板坂)の講演は無事終わったようです。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/10(Sat) 11:17
◇まじめな公務員の皆さまはややとまどっておられたようだとか(笑)。「いいのよー、私なんかに頼むのが悪いんだから」と彼女ひらきなおってました。 で、しゃべってる間に気づいたことがいくつかあったので、「注」としてつけくわえたそうです。見ておいてやって下さい。
私は昨日「ムービースター」を立ち読みしていたら、「メネラオスの日記」の中の場面のように、犬抱いて笑ってるパリスじゃなかったオーランド・ブルームの写真があって、思わず吹き出して買ってしまいました。
「五月のピティア」もちょこっと更新…できるかな?
[327] 何だか不気味な状態がつづいています。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/11(Sun) 22:12
◇世界情勢でもなく選挙速報でもなく(まだ見ていない)、このHPのことで、どーも少し前から怪しい。前にもこんなことあったので、死にはしないと思うんですが、ちょっと休養が必要なのかも。何しろ最近、もう行ってるサイトがはばひろいからなあ、いろんな意味で。相当無茶な使い方とかしてるかも。
で、今日は「五月」を書いている最中にいきなり表示がおかしくなり、2時間かけて直したけど直ってるのかしら、ほんとに。「中央寄せ」表示とかになってないですよねー、皆さまのパソコンでは。何か変になってたらご一報下さい。
◇ゆきんこさん。
いらっしゃいませ。お話できるのを楽しみにしています。どうぞ、あちこちのぞいて見て下さいませ。「トロイ」のご感想はいかがだったのでしょうか。アキレウスで検索したということは、彼のファンでいらっしゃるのですか?
私は小学生のころ、子どもの本でギリシャ神話を読んだとき、アキレスが好きで、へクトールをひきずり回すのを皆が(神様たちまで)悪く言うので、「何さー」と思っていた記憶があります。二人の決闘の時、ゼウスが二人の運命をはかりに乗せたら、へクトールの方が下に下がったので、「えっ、アキレスが負けるの?」と思ったら、「これはへクトールの魂が黄泉に行くというしるしである」とあって、ほっとしたのを昨日どころかさっきのことのように思い出せる、五十年も前なのに(笑)。それが今では映画のへクトルの馬がつけてた布と同じ市松模様のソックスをつい買ったりしてるので、変われば変わるもんですね。
◇ガブリエルさん。
私も例のスクリプト手に入れました!でも、なかなか読めず、ハルさんに期待…していたらキャラママ(板坂)から、「あんた、ハルさんは学生らしいではないか。大学はそろそろ定期試験だぞよ。つまらんことをせっついて、単位落とさせたらどう責任とるんだ」とすごまれてしまった。「ただでさえ、そういう時は人は逃避したくなるんだからなあ。ハルさんだって、きっと」と失礼な心配してました。
で、ご無理はなさいませんよう、と思いながらやっぱり期待しています、ハルさん(笑)。
で、ガブリエルさん。「三幅対」とキャラママの講演、読んでいただきありがとうございました。
あの映画のヘレンさんて、トロイに来てからはやたらかわいいですが、最初パリスが入ってきた時などは、ちょっと冷たい感じですよね。「亡霊」だったと自分で言ってる頃は、きっとああではなかったかと思って。
私がこういう話を書くと「誰も悪くない」という、ある意味逆に救えない話になるのですが、私はメネラオスは映画を見直してもやっぱりこういう人に思えます。
それと、彼のような人はへクトルの魅力ならわかるので、それなりに用心するだろうけど、パリスは眼中にない分、ノーマークになるんだろうなあ、と。
アキレスとパトロクロスの話は、順調に進んでるのですが、この次の場面あたりから、やや危なくなりそうで。正直ちょっとためらっています。あ、この二人がではなく、別の意味でです。
同人誌の方面では、アキレスとへクトルの間の絆の強さを強調注目する人が多いようですが、ある意味わかります。演じた俳優の資質だけでなく、もともとこの二人の英雄のキャラは、へクトルがしなやかで、きめこまかなのに比べて、アキレスは硬質で異質な透明感がある。まったくちがったかたちで、人を刺激する要素がある。
ブリセイスとの話も、ぼちぼち書きます。でも、もうおわかりでしょうけれど、私の小説って、小説に名をかりた感想文、分析説明にすぎないんですよねー。だからものたりない感じはあると思いますが、お許しを。
それにしてもパソコンがいつどうなるかわかりませんので、いきなりここが消えたりしても驚かれませんよう。バックアップはしつっこくとってますので、消えっぱなしにはなりません。なりたくないわー。
わ、こんな時間。洗濯をしなければ明日から着て行くものがない。おやすみなさい。
[329] トロイスクリプト和訳第二弾 投稿者:ハル 投稿日:2004/07/12(Mon) 19:18
>じゅうばこ様、ガブリエル様
性懲りも無く訳してますが、わたし冗談抜きで英語チンプンカンプンなんですよー。しかも皆様がスクリプトを手に入れられたということは間違いがバレてしまうではありませんか!(笑) 説明文飛ばしたり、台詞飛ばしたり本当テキトーですから、くれぐれもその点にご留意くださいませね。
◆ヘクトルとパリス(+テクトン)
ヘクトル:出帆の前に、ポセイドンに相応しい供物をしておいてくれ。
テクトン:山羊か豚を?
ヘクトル:海の神は何を好む?
テクトン:(微笑み)神官を起こし、尋ねてまいります。
頭を下げ、その場を立ち去るテクトン。
ヘクトルはパリスがこそこそと逃げ歩くのを見つける。
ヘクトル:パリス!
パリスは振り向き、まるで何事も無かったように微笑む。
ヘクトル:もう寝なさい。出帆すれば、数週間陸の上で寝ることは無いんだぞ。
パリス:船上で寝ることに苦労はないよ。海のニンフは僕に子守唄を歌うんだ。
ヘクトル:今夜は誰がお前に子守唄を歌ったんだ?
パリスは一瞬凍りつくが、すぐに平静を取り戻す。
パリス:今夜?今夜は漁夫の妻さ。それは美しい人だよ。
ヘクトル:お前は何の為に私達がスパルタに居るのか解かっているのか?
パリス:和平のためさ。
パリスは微笑み、その場を立ち去ろうとする。だがヘクトルはそれを許さない。
ヘクトル:スパルタの王メネラオスは強力な男だと解かっているか?彼の兄アガメムノンはミュケナイの王だ。彼の命令一つでギリシャ中の軍隊が動く。その意味を理解しているか?
パリス:それと漁夫の妻と何の関係があるのさ?
ヘクトルはパリスを掴む。
その動作は乱暴ではないが、決して紳士的でもない。
ヘクトル:パリス、お前は私の弟だ。愛している。だがもしお前がトロイを危険に晒すようなことをすれば、私はお前の頭からその綺麗な顔を剥ぎ取るぞ。
パリスの額に口付けするヘクトル。
ヘクトル:もう寝なさい。朝には出帆だ。
◆羊飼いのオデッセウス
密使1:やあ、兄弟。邪魔するぞ。この丘にオデッセウス王が居ると聞いて来たんだが。
羊飼い:オデッセウス?あのじいさんか。あいつは俺のワインを勝手に飲んで、金も決して支払わねえ。
密使2:友よ、王には敬意払うべきだろう。
羊飼い:あれに敬意を?俺は奴の鼻に拳を喰らわせてやりたいんだ。あいつはいつも俺の女房を襲おうとしてるんだぞ。
困惑する密使二人はその場を離れようとする。去ろうとする二人を羊飼いはただ見ている。
羊飼い:(傍らにいる犬のアルゴスにむかって)アガメムノンの将軍達は、密使よりも賢明だといいがな。
振り返り羊飼いを見る密使。
密使1:今何と?
アルゴスの耳の裏を掻く羊飼い。アルゴスは尻尾を振って喜んでいる。
羊飼い:トロイとの戦争で、私に助力を請いに来たのだろう。
密使1:貴方は――
互いに視線を交わす密使1と密使2。困惑しているが、旨くやり込められたことに気付き、羊飼いに向かって頭を下げる。
密使1:無礼を御許し下さい、オデッセウス王。
オデッセウスは立ち上がり、犬のアルゴスを見る。
オデッセウス:犬とも離れるのか。寂しくなるな。
密使1:アガメムノン王が貴方との面会をご所望です。
オデッセウスは笑い、アルゴスの頭を撫でる。
オデッセウス:無論、そうだろうな。
◆プリアモスとアガメムノン
アガメムノン:老王よ、生きていてくれて良かった。貴方にトロイが焼け落ちる様を見てもらいたかったのだ。
プリアモス:頼む…子供達だけは助けてくれ…彼らに罪は無い…
アガメムノン:罪が無いかどうかは冥府の神ハデスに決めさせればいい。
立ち去るアガメムノン。プリアモスは床の上で孤独に息絶える。
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長くなってしまったので今回はこの辺で~。しかしほんと、パリスはとことんパリスですねえ(笑)
三幅対の五月、アキレスが無邪気に言った「僕が母上を殺してあげたらどうかしら?」という言葉がとても印象的でした。
[331] 時間がないので、あとでまたゆっくり書きますが。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/13(Tue) 16:18
◇ハルさん。
わ、わ、単位落とさないで下さいね(笑)。でもうれしいです。
オデュセウス、そんなカッコいい登場するかもしれなかったのですか。このアルゴスってわんちゃんは、彼が足かけ20年間、イタケを留守にしてやっと帰った時、身をやつしてる(アテナが魔法をかけて、ぼろぼろのじーさんにしてる)彼を誰も気づかないのに、たった一人?台所で老衰しきって寝てたのに、近づいてきて「ご主人さまが帰った!」と喜んですぐ息をひきとった、あの犬なんですかね?あの場面、子どもの本で読んだ時もすごく印象に残りました。
テクトンも前半けっこう活躍してるんですね。船の上にもいるんだと、よそのサイトで見てやっと気づきました。
それで…はい?海のニンフね?
「はいどけばよかったのに」と、つい思ってしまうのは私だけではないでしょう(笑)。
◇エリさん。
はじめまして。おいでいただき、うれしいです。
あの映画そのものが大好きという方がいらっしゃったのが、とてもうれしいです。
↑のようなこと書いているけど、パリスを嫌いなのではありません(笑)。パリスの強さは何だか少女の残酷さにも似たとこがあるようで、でもまたそれともちがって、変にさわやかですし、見ていてあきません。
前半の情けなさがあまりに強烈なので、そっちの話題ばかりついしてしまうのですが、ヘクトルの死後、後半のパリスの成長もきっちり描かれているし、それを表情だけでちゃんと見せている俳優さんも何だかだ言ってもすごくうまいと思います。「地なのかな?」と思うぐらい、ひかえめに自然に表情が変わって行く。
この人の映画、エルフさんと海賊のお友だちのしか見てないのですけど、エルフは、今回のヘクトルと同じく変化しないですから、こういう演技はできないですよね。だから、比べられなくてよくわからないのですが、相当うまい俳優ではないかと思いました。あ、でもまだよくわからない。自然すぎて(笑)。
彼のこの成長には、自分の消滅が必要だという判断がヘクトルにあったとしたら悲しすぎますが、あのキャラではやりかねない(泣)。
城壁の上でのパリスの心情に感情移入されたの、すごくよくわかります。また話が少しどころか大幅にずれますが、私はピーター・オトゥールは「アラビアのロレンス」を50回以上は多分見ているファンなのですが、それだけに、今回の彼の存在や演技は皆がすごく評価してくれるのはうれしくてたまらない一方、ちょっと意外で、「そんなにいいかあ?」とも思うのです。たしかに見直すと、テントの場面のプリアモスの手管はすごくて、自分から屈辱的なことをいきなりしておいてからに「これほどの屈辱は」と勝手に相手に罪悪感を押しつけるのから始まって、ポイントの泣き所は的確につきながら、無駄なことは一つも言わず、どこかできちんと威厳は保ち、アキレスだかブラッド・ピットだかを文字通り手玉にとってるのですが、それはすごいと思うのですが。
ただ、あそこで、見てる人が感動し、「うまい!」と思い込むのは、映画の流れのせいもあると思うのですね。
満員の映画館で数回見たのですが、ヘクトルの死から、プリアモスの訪問のあたり、場内が水をうったように緊迫し、空気が張り詰めるのを毎回経験しました。映画を見ていて、このような静かさが張り詰めることはあまり記憶にありません。
ヘクトルのあの場面は原典でも有名ですが、やはり衝撃的だし、今まであれだけ美化されていたし、実際最後まで立派だった人があんなことになってしまうなんて、観客は皆呆然として、納得できないでいると思うのです。そこにプリアモスが来て、ああいうことを言ってくれるし、してくれる。あそこで彼は観客の代弁者でもある。だから感謝と共感の気持が、演技への賞賛になっていることもあるのだろうなあ、と思います。
同様に観客の気持を的確にもてあそぶなあと思うのは、パトロクロスが死んだ後、エウドロスがテントのアキレスを呼び出す場面。ここのアキレスの幸せそうな顔はあちこちで話題になっていますけれど、つまりここで見ている方は、「あー、死んだと思ってたのに、こんな幸福そうにぴんぴんしてた!」という喜びと腹立ちがいりまじった気持と、でもそれがすぐ、彼にとってはある意味死ぬ以上の悲しみにつながるのだと思うと、苦しくなる。
私はあの時「皆が彼をあなただと思った」というエウドロスの言葉に「そんなにまで完璧に自分を真似できるようになってたんだ」という愛しさ、「でもそれは外見だけで、中身はちがうのに、ヘクトルの自分と信じた全力の強烈な攻撃をまともに受けてしまったんだ」という恐怖、など、アキレスの感じた戦慄と絶望が考えるだけでもつらいです。
などと、またながーくなりそうですので、ここまでに。
どうぞまた、思いつかれたことがあったら、いくらでも書いて下さいね。これからもどうぞよろしくお願いします。
それにしても「激しくパリス贔屓」の中身はもっと聞きたいなあ。私も彼は好きですが、そういう人はちょっと珍しいような気もします。あの最後には成長するところも含めてなのですよね?
[335] あーもう、あいかわらず仕事が片づかないものですから。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/14(Wed) 21:21
◇ガブリエルさん。
ちょこっとだけ(笑)。
あの「ピーコック」はなぜか英語だめな私にも映画館で聞き取れて、やれやれクジャクなんて言われてるよーと笑ってました。でも、お兄さんからは「そのきれいな顔をはぎとっちゃうぞ」と脅かされ、敵からはクジャク呼ばわりされ、あとこれはオーランド・ブルームのファンサイトでどなたか紹介されていたスクリプトの決闘の(逃げ出した)場面で、アイアスが「(自分の故郷の)サラミスでは、女でもあれよりは勇敢に戦う」とコメントしたのに対し、オデュセウスが「しかし彼女らはあれほど『プリティ』ではあるまい」ととんでもない返事をしているそうで、この脚本が配役決まってから書いたのかどうか知りませんが、これだけ敵も身内も自明のこととして語るパリスの美貌って何なんだ?演じる俳優は、へレン役と同じくらい大変じゃないですかねえ?
ハルさんの紹介して下さったのでは、あとプリアモスってとことんかわいそうなんですねー。彼をアホだのボケだの皆さんが言いたくなるのは、よーわかりますが、でも、息子の遺体取り戻してちょっと「わしもまだやれる」と自信がついてしまってたのかもですね、木馬と遭遇の時点では。
「五月のピティア」は、あっこまで書いたらもう恐いものなくなって、あさってあたりは二人のキスシーンでも書こうかと思っています♪
ブリセイスとアキレスのやりとり、ガブリエルさんの見解に賛成です。
あの二人のあそこまでの関係はずっと対立だし、論争ですよね。それもすごく高尚な(笑)。こういうのは訳しにくいし、わかりにくくなってると思うけど、それでも彼女が刃を彼にあてるとことかも、私はかなり意味があると思うのですが。「三幅対」の最後では何とかそこを暗示できるといいけどなー。
一つだけ言っておくと、キャラママ(板坂)が講演の追記として書くかもしれませんが、あの兵士たちから救われた後のブリセイスの表情や態度やしぐさって、「救われた女」のそれじゃなくて、「戦士」の顔だし行動ですよね、徹頭徹尾。スクリプトかなんかでは、最初は抱かれて行くんじゃなく、肩をかしてもらって歩いて行くようになってたらしいけど、それだとさすがに絵になりにくかったのでああしたのでしょうが、そのもとの形だと、もっとはっきりしたと思う。アキレスをにらみながら前かがみになって布をとってしぼるしぐさは、足も大きく開いてふんばって、兵士のかっこうです。英雄豪傑の姿勢です。演じるのはむずかしかったと思うけど、そういうように作っている。レイプされかけて救われた女が、えてしてそうすると決めつけられているように、ショックをかくしきれなくて、ひくひく泣いたりする気配なんかみじんもない。男一般に怒ってはいますけどね。アキレスに戦ったのをほめられると、にやっとして「当然だ、犬だってあのくらいは」と返すし。
虚勢をはってるのではなく、彼女は実際それだけの豪胆な女性なんだと思います。だから、どれだけおやじギャルに描いても描きすぎることはないと私は思っていました(笑)。
ひー、また長くなりそう(すでになってる)ので、またあらためて書きますね。おやすみなさい!
[338] ブリセイスについて 投稿者:ハル 投稿日:2004/07/15(Thu) 16:47
オデッセウスのワンちゃんはどうなんでしょうかね。彼の忠実な猟犬らしいのですけど…。 映画がどこまで「イリアス」や「オデュッセイア」をインスパイアしてるのかよくわからなくて。そもそもアルゴスって和訳も間違ってるかもです(笑)
そして、話題に乗じてアキレスとブリセイスのスクリプト和訳です(笑)何の役にも立たないと思いますが…
◆アキレスとブリセイス
アキレス:何か食べたほうがいい。
ブリセイスは何も言わない。
アキレス:怪我は?
ブリセイス:――貴方は何を考えているの?
アキレス:君が奴らと戦うのを見た。勇気があるな。
ブリセイス:襲われそうになってやり返すことが?そんな勇気犬にだってある。
アキレス:俺は人間よりも犬のほうが好きだ。
アキレスを見つめるブリセイス。アキレスは他人に見つめられることに慣れていなかった。興味そそられ、アキレスは彼女を見つめ返す。
ブリセイス:どうしてこの道を選んだの?
アキレス:この道?
ブリセイス:その…勇者への道よ。
アキレス:俺は何も選んでなどいない。この世に生まれ、ただこうなっただけだ。
ブリセイス:だけど貴方は戦士であることを楽しんでる。
アキレス:蠍が甲虫を刺す時に快感を覚えると思うか?そんなことはない。蠍は何も感じない。
ブリセイス:でも貴方は蠍じゃない。人間よ。
アキレス:君は神に身を捧げた女だろう。君があの男たちに襲われそうになったとき、アポロは何処にいた?
ブリセイス:私を怒らせたいの?
アキレス:ああ
互いに見つめあう二人。アキレスは微笑み、ブリセイスは怒っている。
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ガブリエル様が仰るように、アキレスは楽しんでますね。このシーンを訳していて、対照的な二人が印象的でした。
[339] あ、ここ読みたかったんです! 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/15(Thu) 21:26
◇ハルさん。
ありがとうございます!
がしかし、単位はとって下さい(笑)。私がキャラママ(板坂)に怒られる。
「ブリセイスはパリスより男前」ですか。いいですねえ。もちろんパリスはブリセイスより「プリティ」だから、かまわないと思う。
アキレスがブリセイスの男性あるいは男性的なものへの攻撃を、まっすぐにうけとめて、うけいれることができたのは、ふしぎなようで、ふしぎじゃない。男らしさや戦士としての能力に絶対の自信がある彼だからこそ、余裕があって謙虚にもなれたのだと思う。自信のない男性だったら逆に凶暴化したでしょう。(悲しいけど、そういう例はいっぱい見てきたし。)
だけど、パリス君もまた凶暴化するとは思えないんですよね。別の意味で彼は「男性」としての自分に自信を持っているのかな。ぴーこっくとして。クジャクのオスはきれいなわけだから(笑)。
◇ガブリエルさん。
またまた、全面的に賛成!特に、アキレスが従弟と剣の稽古をしてるような喜びを感じてるというの、その通りだと思います。今までこんなにまっこうから議論できる人いなかったのでしょうね。知性という点でもブリセイスは高いし。パトロクロスはもっと子どもだし。オデュセウスだと、逆にアキレスを子ども扱いしてしまうのでしょう。
オデュセウスのような人は(あの映画のです)、自分の知性に絶対的な自信持ってますからね。アキレス(も他の誰も)が自分より賢いかもしれないなんて、ちらっとも思ってないでしょう。まあ、ここまで行くと、いっそ、さわやかでかわいいですけども。
「五月のピティア」には、その内彼も、ちらっと登場する予定です。
◇あ、そうそう。
ブリセイスが戦士ということなのですけど、私、皆さんがもうよくおわかりのように、とことんフェミニズムだかジェンダーだか、そういうのも生ぬるいというかの考え方じゃないですか。その私が、「ひえええ、ペーターゼン監督、ひょっとしたら、負けました」とかぶとぬいだのが、アキレスのあの「今ほど美しい君はない」のせりふなんですよね。
私、最初何回か見たとき、あそこの意味がよくわからなかったんですよ。あ、神々がつかの間の輝きの人間をうらやんでるという、話の流れはわかるんですよ。でも、あのせりふが、ほんとに、ぴんと来なかった。ていうか、来た人います?
あの時の彼女の顔ってひどいでしょ。たしか2ちゃんねるでも、どなたかが「女の顔に向こう傷つけるなよー」と嘆いてらしたみたいに、鼻に傷跡、髪はばさばさ、どう考えても美しくはない。
何回めかに、でも私、目からウロコが落ちました。アキレスは、あの顔を「きれい」と思ってるんですよ。「今ほど美しい君はない」というのは、あの顔のことなんです!(思わずビックリマークをつけてしまうけど。)
アキレスって何となく、私、美しいものがよくわからない人って感じを受けるんですね。きっとファッションセンス悪いし、お湯のみとか買わせたら変なの買ってくると思う。自分が美しいし、ものの基準が世間とちがうし、関心のない方面の才能をごちゃごちゃみがかないと思うから。(悪口じゃないけど、パリスは、いいお湯のみを買ってくると思います。)
だから、戦う女の顔、戦士の顔を本気で美しいと思ったのです、彼はあの時。傷だらけ、ほこりだらけで、自分をにらんでいる、怒って疲れた、あの顔を。
わ、私としたことが何たる不覚、アキレスにもペーターゼンにも先を越された、負けてしまった、と何だかつくづく呆然としました。何を美しいと感じるかは、人間の一番根底にある思想や哲学と深く関わると思うけど(肌の色で差別される人たちが「黒は美しい」を大きなスローガンにしたように)、ここまでペーターゼンが過激で進歩的だとは私も予想してなかった。
と、思うのだけど、いいのでしょうかね?深読みか?間違いか?とだいぶ考えて見たのですけど、やっぱり、あそこの場面とあのせりふは、そうとしか、とりようがないのだもの。
あ、ハルさん、くれぐれも、これに乗って反応されて、貴重な時間をつぶされたりなさいませんよう。試験が終わってからでも、お話はたっぷりできると思いますから(って、こうやって止めると逆効果かな。不安…(笑)。
[340] ほんとにどうでもいいんだけど。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/15(Thu) 21:33
◇お湯のみ話を追加すると、ヘクトルは実用的で趣味もよくて値段も手ごろで子どもがしゃぶっても安全なものを、何でもなさそうに普通に買ってくるでしょう。オデュセウスは…アガメムノンは…パトロクロスは…アイアスは…エウドロスは…って、やめとこう、えらいことになりそうだ。
しかし、アイアスは、ろくろ回して自分で作りそうな気もするなあ。もう何となく、直感的に。
[342] 猛暑が続く毎日ですが、何とか生きています。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/16(Fri) 16:29
夕風や白薔薇の花皆動く
◇正岡子規の句です。こういうの読むと少し涼しくなるような。
◇ガブリエルさん。
どうぞ、ご遠慮なく書き込まれて下さい。くどいのでは私も人後に落ちません(笑)。
「今ほど美しい君はない」は、スクリプトを確認していないので(ハルさん、してはだめですよー!笑)、確信はないのですが、私はどうもやはり、外見のことではないかと思っています。このへん、ただの勘なのですが、あのアキレスが魂のことなど言いそうにないからです。うーん、つまり、魂の美しさを感じたとしたら、それは外見の美しさととらえるというか。わけわからなくてすみません。
お湯飲みでも急須でもいいのですが、あの映画のキャラが買ってきたもの、ずらりと並べられたら、誰がどれを買ってきたのか、絶対あてられそうな気がしませんか?トロイ関係のいろんなサイトの絵の上手さに毎回うなるのですが、どこかのどなたかがそういう紙上?(ネット上)展示会、して下さらないものか。
◇ちょっと二三日、来れないかもしれません。あ、どこやかしこで、このサイトが紹介されて、話題や論争になってるのにびびって冷却期間をなんて、そんなつつましい話ではないので、ご心配なく。単なる旅行です(笑)。
[346] お返事したくて、のどから頭が出てエイリアンになりそうですが。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/19(Mon) 13:03
◇トミーさん、エリさん、ガブリエルさん、おいでいただきうれしいです。あのー、書きたいことが山ほどなのですが、今日中に片づけないと死ぬしかない仕事が3つほどあるので(ほんとかよ、書いて自分でぞっとした)、数日待って下さいます?あ、書き込みは続けてなさってかまいませんので、全然。
ハルさんも、欲求不満で勉強にさしつかえそうでしたら、どうぞご遠慮なく、逃避?なさって下さいね。私の書き込み読んで、「スクリプト見りゃわかるのにー!」と、もだえておられるかも。 あ、あのわんちゃんは、やっぱりアルゴスです。「オデュセイア」にちゃんと名前が出てきました。泣けますよー!って、またその話はいずれ。
あう、ちょっと、いったん切ります。仕事しながら書いてるもので。
[348] これ、「347」の続きなので、そちらから先に読んで下さい。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/19(Mon) 14:39
◇それと、いわゆる同人誌とか「やおい」とかの文学に関わる話なので、そういうの見たくない人は飛ばして下さい。しかしほんとは、そんな人にこそ読んでほしいのですけど。
私はこのサイトの「じゅうばこ関連」(鳩時計文庫コーナー)の「受身の愛」をお読みになればおわかりのように、男性が女性を抱きすくめ、女性は抵抗しながら言うなりになる、という図式をかなり気にします。そういう愛もあるだろうし、否定はしないけど、いつもそうでなくちゃいけないというのは、いやです。自分がそうではないし。なかったし。
でも、男性に比べて女性の腕力が劣っているから(ほんとにそうか?とも思うけど)、「力づくでいうことをきかせられた」という図式はすごく根強く、否定しにくい。これはレイプを容認しやすい一方、実のところ、男性にとってはすごく困った状況でもあると思う。
「やおい」とか、そういう文学の特徴の一つはもちろん、いろんな作品の登場人物の、あるいは実在の有名人の男性どうしのラブシーン、ベッドシーンを描くことです。私はそういう文学についてまだまだ何も知らないし、軽率に言及して書き手の方々に迷惑をかけてはいけないと心配しながらそれでも、これだけは言っておきたいのだけど。
そういう男性どうしの性愛の場面を数多く読んで私が痛感ということばも生ぬるいほど痛感したのは、体力、腕力において対等の相手を抱いて愛を交わそうと思ったら、何ときちんと自分の気持を訴えて、懇願して、不安や疑問をとりのぞいて、了承をとりつけなければならないかということでした。 それは当然、迫られる側も、「力づくで押し切られた」と弁解できない、抵抗すれば充分どころではなく抵抗できる力を自分が持っているからこそ、「自分も納得し、承知の上でそういうことをした」という責任をきちんと取らなければならないことになる。
しばしば、迫られる側の男性が「問答無用で、こっちの意見など聞かずに行動してくれればいい」と考えるのもふくめて、こういう対等の関係では、感情や手続きの様相は、とても可能性が広がり豊かになる。
私はこれが、男女関係の代替とは決して安易に言いたくはない。そうでないもっと複雑な要素がたくさんあることはわかっていますけれど、それにしても、やはり、とっさに考える一つは、「何で女性相手にこれだけの、きちんとした手続きを踏んでくれないかな」ということです。
さて、アキレスは、どう考えてもそういう手続きをふむ方ではありません(笑)。強引に押し倒すのが似合う人です。そのイメージを守りながら、相手の女性が刃物を彼の首に押し当て、それでもかまわず押し倒して行くという設定に、最初見た時、うまさにうなりました。アキレスのイメージは壊さないどころか、むしろ、死を恐れずに女を抱く「彼の勇敢さと刹那的な生き方」が強調され、その一方で、たくましい身体を持った男性を組み敷くのと同様の状況を、女性に武器を持たせることで作り出す。彼女が自由意志で抱かれることを選択し、強引に押し切られたのではないという責任をきちんと彼女に持たせる。
まさにそうだったからこそ、彼女は淫蕩な巫女、尻軽女との悪罵を浴びせられることにもなりました。でも彼女が、強引にアキレスに抱かれて「抵抗したけどだめだった」というきれいごとで免罪されるより、この方が何と清々しく凛々しいことか。
そもそも私は「淫蕩」も「尻軽」もちっとも女性に対する悪口に聞こえない、むしろ積極的に寝ることを自分の責任で選んだ女性に与えられる勲章のように思ってるところがちょっと問題ですが(笑)、それにしても、この設定は見事というしかありません。
何かもう、皆が欠点として悪口いうところに限って、私がほれこむとこなんですよねえ。大丈夫かしら。むむ、それよりも当面仕事が全然大丈夫じゃないわ。すみません。今日はこれまで。
[347] ナイフつきつけシーンについて。短く書くぞ! 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/19(Mon) 14:00
◇もう、こういうことするか?と、あきれられてもいいけれど、「五月のピティア」のラストシーンを書いてしまいます。まあ、このままになるか変えるかわからないけど、多分変えないんじゃないのかな。あ、死神なんてギリシャにいたかという話は目をつぶって下さい。何か土着の神々でそういうイメージをアキレスが持ってたことにでもしておいて。
◆◇◆
「死神を抱きたいな」私は口笛を吹いてひとり言を言った。
従弟がふしぎそうに私を見た。
「殺されるとわかっていて、抱きしめたい」私は言った。
人を殺しつづけ、自分に自信がなく、神にも人間にもなれず、そのどちらをも愛せない、こんな私を許さずに、私が自分を憎む以上に、私を憎んで、殺そうとしてくれる誰か。そんな私でも、私が何とか自分を愛してきた以上に、私を愛してうけいれて、許してくれる、その同じ誰か。
男でも、女でもいい。
トロイの王子でも、他の誰でもいい。
刃を胸につきつけられて、それでも相手を抱きしめられたら。
それほど相手を信じられたら。
「それでもし、殺されずに、相手が私をうけいれてくれたら」
私はことばをのみこんでしまう。
そのあとのことを、何も私は考えられない。
(五月のピティア・・・・・完)
◆◇◆
まあ、変えるかもしれませんけど(笑)。
私は、普通の書き込みでは、一応、論文を書く時と同様、空想や推測はまじえません。映画の画面やせりふをもとに、こうとしか説明できないと思ったことしか言いません(もちろん、まちがったとわかれば訂正します)。しかし、小説では、「映画を見ていてこうもとれる」ということは書くけど、「そうでない解釈もあり得る」範囲のことも書きます。
で、このラストはそういう点で、ちょっと微妙で、「この解釈ありだ!」は言えますけど、「これしかない!」とまでは今の段階ではまだ確信は持てません。
ただ、これよりいい解釈がまだ見つからないんですよ。今のとこ。
これも字幕でしか見てないから不安なのですが、ブリセイスは「神々は嫉妬している。限りある生は美しい」とアキレスが言ったあと、「野蛮でバカな人かと(思っていた)。そうなら、許せたのに」と言いました。
ここの論争で、彼女はアキレスがただ殺したいから殺す、あるいは王の命令に従うだけの人ではなく、神々や道徳や正義とかいったきれいごとの概念の限界を知り、その上で行動している、相当に知性的で、それだけゆがんでもいるし、深い闇も抱えている人だということを理解したのだと思います。
アポロン神殿での戦闘途中の放心状態でもわかるように、アキレスは戦いを楽しんでいるわけではありません。
そうかといって、何かを守るために戦っているのでもない。ブリセイスを守ろうとしたのはむしろ彼にしては珍しい。一応、強い人間のエチケットとしてやったまでで、そう「弱いものを守る」ということに信念がある人ではない。
彼の「名を残す」欲望の実態を私はまだ正確につかんでないのですが、結局彼は、あまり生きるのを楽しんでいるようには見えないのです。生きて何をするかもよくわかっていない。美貌とか戦闘能力だけはやたらあるから、女も勝利も寄ってきますけれど、それがほしいものということでもない。
すぐれた者や美しい者の多くがそうであるように、彼は性格は決してすさんでも悪くもないのだけど、自分のそういう力を何に誰に使っていいのかわからないし、あまりしつけてもらってもないから(ヘクトルは多分誰かがしっかりしつけたのだと思う)、そういう人間は我慢しなきゃならない(←この考えが正しいかどうかはわかりませんけど、一応、しつけにはなる)ということもよくわかっていない。
で、なんかつまんないし、空しい。彼は自分がそんなに好きじゃないし、基本的に死にたがってる。得意なだけに人を殺す時は一応充実感があるけど、そういうのはあまりよくないんだろうということは何となくわかってもいる。でも誰も生き方を教えてくれない。自分でもわからない。結局どんどん刹那的なものへとのめりこんで行く。
ブリセイスはそういう彼のあり方がまちがっていると知っている。でも説得できるほどの経験も論理もまだない。彼女はとにかく、この男がただの野獣ではなく、高い知性も具えた、神々とさえも対決できる何かを持った人間と知り、トロイにとってだけでなく、人間や神々にとっても危険な存在ということを、あの論争の中で理解したのだと思います。
だから彼を殺そうとした。ここも字幕がよくわからないのですが、「生かしておけばあなたはまたたくさんの人を殺すのでしょう(しかも、それは充分に理解した上での確信犯でしょう。ただの楽しみでもなく、仕事でもなく、もっとあなた自身の根底からわきおこる行動でしょう)」に対し、アキレスは「many(そうだ、山ほど殺すだろう、私を生かしておく限り)」と答えていたと思います(あ、でも聞き間違いかもしれないから自信ないけど、どっちみち、そういう会話だったはず)。
城壁に行ってヘクトルを呼び立てる場面でもそうですが、アキレスはどうかするとすぐ死にたがる。かりにあそこで矢が飛んできてハリネズミになって死んでもそんなに気にはしなかったはず。彼の戦い方はほとんどいつも自殺です。
でも、ブリセイスのような人は、へクトルのような人は(この二人はしばしばコインの裏表のような動きをし、同人誌文学めいた言い方になりますが、ほとんど同一人物が一人二役やってるのではないかと思いたくなる時がある。トロイ王家の男たちが皆顔が似てるのはよく指摘されますが、いっそブリセイスもヘクトルと似た女優を使えばもっとそのへんがはっきり…って、まあそれはあまりに別の意味で危ないか。笑)、アキレスのような人間の中にある、殺人鬼とはちがった何かを見抜きます。だから彼を殺さない。正面から向き合ってうけいれることで、彼を生きのびさせ、アキレスは死なせてもらえない。人間として彼が再生するまでは。
ブリセイスがアキレスを殺そうとしたから、アキレスは彼女を愛せたのです。自分でも憎んでもてあましている自分を殺そうとしてくれたから。そして、自分の中に生かしておくに足るだけの何かを彼女が見出してくれ、殺すのを思いとどまり自分を愛してくれるなら、自分はちがった生き方をはじめられるかもしれない、と彼は「賭けた」のだと思う。
でも、これは、「死とセックス」が一致する(まあそれでもいいのですが)、ある程度よくある図式のようにも見え、いろんな意味でまたしても自然であるだけ陳腐な描写に見えてしまうところもある。ここはある意味、言葉の壁かなあとも感じる。あの二人の会話は相当哲学的に難しいこと言ってる気がする。私もよくはわからんけど(笑)。
ああ、どこが短いんだもう。でも、もうちょっと書きます。
[353] 遅いもいいとこのお返事ばかりですが。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/22(Thu) 23:58
◇トミーさん。
今さらながらいらっしゃいませー!おいでいただいてうれしいです。
ブラッド・ピットの歴代GFの顔が浮かんだとのお言葉に大笑いしました。とっさにぱっと思い出せるとこがファンですよねー。
ハルさんもおっしゃってるように吹き替えでは「君の美しさもすぐに色あせる」なんですよね。それでちょっと気にはなってるんですが、でも、どちらにしても、アキレスは、あの時のズタボロになってる彼女を「あー、せっかくのきれいな顔が、いたましい。見ないでおいてやろう」とかは全然思ってる気配ないし、基本的にはあの姿を美しいと思ってるんじゃないかなあ。
ただ、このへんは超むずかしいのですが、たとえ汚れてても傷だらけでも兵士のようでも、なお「美しい!」と思わせる撮り方や演じ方はあると思うんですね。その点、あの映画が成功してるのかどうか微妙です。たしかに、女の人のああいう顔をきれいと思えないのは、私(たち)の「意識が低い」のかもしれないんですが…うーん、よくわかんないなあ。
私、「グラディエーター」にもはまってるんですが、この映画を見た時、あきれながら感心したのは、主役のラッセル・クロウが最初から最後まで、むさくて汚くしていて、しかもきれいに見えることでした。見えない!という人ももちろんいるのでしょうが、やはり、かなり多くの人がかけねなしに、マキシマスは美しいと感じるでしょう。これはほんとに珍しい。「マイ・フェア・レディ」が一番そうだけど、女優さんは大抵汚れ役でも最後はきれいになります。男優さんだって、「ベン・ハー」のヘストンでも、奴隷の姿の後では、りゅうとした貴族のかっこうになるし、「キャスト・アウェイ」のトム・ハンクスだって、最後はとてもきれいな姿になってみせます。
だいたい俳優さんて、基本的には顔立ちがいいので、その気になったら誰でも美女美男子にはなれます。ラッセル・クロウでいうと馬好きの牧童を演じた「ハマー・アウト」は、本当に「きれいな子」です。でもあるファンが言ってたのですが、これは「美しい役なので、美しく演じている」のですね、彼が。それができるのがすごいけど。
ウィレム・デフォーも私は好きですが、彼の「サイゴン」という映画では、どう見てもハンサムではないはずの彼が、きちんとものすごくきれいな清清しい二枚目です。そういう役だから、きっちりそう演じている。俳優さんたちはもともと、自分をきれいに見せるのはうまいのだと思います。その気になれば、どんなにでも美しくなれる素材は大抵の俳優にはあるのじゃないかしら。
でも、マキシマスの場合はちょっとちがって、ほんとにきれいな場面はないのです。なのに、少なくとも私の目には、のべつまくなし美しく見えます。これは何なのか、大変よくわからない。撮り方というより、この場合はやはり演技なんでしょう。
あの映画を見た時、私はあきれて、この俳優はもう恐いものないなあ、これだけ汚いまんまで全編通してきれいに見えてしまうんだからなあ、と思ってました。
ええと、何が言いたいかと言いますと(笑)。
ブリセイスの、あの一連の場面に要求されていたのは、マキシマスのような美しさだったのではないかと思うのです。と、言ってもやっぱりわからないかあ。
つまり、汚れたり傷ついたりしたのを、そのまま見せたらいけないので、汚いようでもきれいに見えるように、フツーの観客が見てフツーに、「おおっ、汚れて傷だらけで怒っている、戦う女は何とまあ美しいのであることよ」と思わせなきゃいけないのだと思うのですねやっぱり。それがあそこで、できていたかというと、どうなのかなあ。むろん、こっちの頭の固さもあるわけなのだけど。
アキレスがあの時彼女を見ている顔も目も、美しいものを見ている顔で目です。じゃああ、やっぱり、その彼の目に映ったように、私たちにも見せてくれなきゃなあって思う。
あー、何かすごくわかりにくいこと言ってますよね。すみません。
ちょっといったん、切りますね。
[354] うう、準備しないで書くと、どんどん文章が長くなるのよね。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/23(Fri) 00:28
◇エリさん。
私も後半のパリスの成長は、ほろにがい思いで見ています。ああしかしかたがないのは、わかるのですけど、淋しいっちゃあ淋しいですね。
ブリセイス初めて登場する時のパリスの笑顔のかわいさは、よく話題になりますが、私がもひとつ大好きなのは、パレードの時、おばさんたちが自分を冷たい目で見ているのに気づいたへレンが横向くと、多分またなーんにも気づいてないパリスが、にこーっと優しくうれしそうに笑いかけてくる場面です。
あそこでヘレンは笑い返し、その後前を向いて一人でまた笑顔を消してつらそうな目になっている。ヘレンのおかれた立場の切なさ、パリスにも苦しさを訴えられない、むしろパリスの無邪気な喜びをこわしたくないと思ってしまうヘレンの孤独と、それを一人でしょって立とうと決意した彼女の思いが、あの一瞬の場面でわかる。そして彼女にそう決意させる、パリスの笑顔の無垢な愛らしさは「あー、こいつは何もわかってない、でもわからせちゃいけない」とヘレンが決心するのがよくわかるほど、かわいらしい。
その二人の背後で、どことなく憂鬱そうに、でも律儀にけなげに手をあげて民衆の歓呼に応えているへクトルの表情と並べると、もうそれこそみごとな三幅対(笑)。
また、唐突な事書きますが、私はこの映画が「神話的でない」というように少しも思えないのです。またかなり乱暴なこと書きますが、神話というのは、ある普遍性、寓話性があるわけで、そういうものを感じさせれば、神様なんか出てこなくても立派に神話っぽいと思う。
そういう点で、この映画、すごく哲学的、暗喩的な要素を私は感じてしまうのです。つまり「何かの、たとえ話に見える」とこがあるってことです。
最初の頃に書きましたが、私はパリスをかばいぬくへクトルにすごく感情移入したのは、私の中のしっかり者の勤勉な部分が、奔放でだらしなくて危険な部分を抱えながら生きている恐さや喜びと、すごく重なったからです。
私の場合はそうなのですが、でも人によっては、(エリさんも書かれたように)これは庇護してくれるものを自分のために失ってしまって、それによって大人になる成長の寓話とも重ねるでしょう。
へクトルとアキレスは本人どうしも陰画のように裏表ですが、パリス、パトロクロスとのカップルとしても、みごとなぐらい対照的、むしろ対称的です。
エリさんはトロイの兄弟の方に近いものを感じられたのですね。私自身はむしろアキレスたちの方です。ピティアでのあの二人のまぶしい日々は、悲しみを知らない幼年時代、あるいは青春そのもので、でもアキレスがブリセイスという、家庭や生活という堅実な現実につながるものを手にした時、消えてしまう世界のようにも思えます。
それとはっきり言っているというほどではないけれど、パリスとアキレスという二人の、二つの「人は何かを失って大人になる」かたちの話が、この映画の底流には基調となって流れているように思えてなりません。人が成長する時の危うさ、苦しさ、悲しさ。だから、どこかとてもまぶしくて痛々しいのかもしれないと思います。
ええと、またちょっと切りますね(笑)。
[355] 何だかどうしてもアキレスはかぐや姫ではなさそうで。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/23(Fri) 01:01
◇ガブリエルさん。
アキレスの気持ちというのは、ガブリエルさんと私の解釈では微妙にちがうし、どっちかが(ひょっとしたらどっちも?笑)まちがってるかもしれないけど、さしあたりは、そのへんは自分の好きな方に解釈していていいと思うんですよね。「何だこいつは。さっぱりわからん。つまらん」と思って見るより、少々勘違いでもいいから、感情移入できて、夢中になって楽しめたら、それが一番正しい解釈なんだと思います。それはそれで、まちがってはいないと思うの。
ガブリエルさんの「彼女にほれて、彼女の気持ちをたしかめたくて、賭けた」でもいいと思いますよ。そうも見えるし、その方がまっとうで健全なアキレスだと思います。
私はアキレスがしばしば見せる暗い顔が気になってしまうんですが、それだって、母の予言を気にしているからだと思えばそうかもしれないし。
ただ、こっから先は、それこそ「そう思ったら面白くない?」みたいな私の妄想、ある意味同人誌以上の勝手な暴走解釈と思っててほしいのですが、私はもうアキレスが死にたがってるように思えてならなくて、へクトルに「目も耳も舌も」なんて言うあの台詞でさえが、相手を怒らせて力出させて、自分を殺してほしがってるようにさえ思えるんですね。彼を引きずって行くのも、トロイの人や神々を怒らせて、早く殺してほしがってるように見える。彼が一番へクトルに怒ったのは、自分を殺してくれなかったことじゃないんだろうか(完璧に妄想なので、そのつもりで読んで下さいね)。そう言ったらへクトルのファンは、それこそ怒るだろうけども。
また「グラディエーター」の話なんですが、あの映画のファンフィクション書いた時、どの話の中かで私、最後の決闘の時、もしマキシマスが勝たないで、皇帝が彼を倒して、彼のいない世の中に一人で生き残ってしまったら、何よりも皇帝自身にとって、それは地獄にちがいないと書いたと思います。
あの皇帝よりもアキレスは、はるかに立派な人だけど、でもへクトルに勝ってしまった彼は、「マキシマスを倒して生き残ってしまった皇帝」とどこか似てみえます。
マキシマスの大きな魅力のひとつは、彼が「かぐや姫っぽいところ」と、よく友人と冗談を言っていました。
どうかしたはずみに、どこかへすうっと消えて、いなくなってしまいそうな心もとなさです。 へクトルとマキシマスはちがってるとこも多いのですが、「トロイ」という映画の中で、こういう「いつか、いなくなりそうな」切ない雰囲気を抱えた、けなげで清らかな「かぐや姫」タイプは、へクトルとパトロクロスじゃないでしょうか。
パリスやアキレスは(いっしょにしたら怒られるでしょうが)、よかれあしかれ、人を踏みにじっても生きていける生命力と雑草のようなたくましさがあります。こういう人は消えていなくなったりはしない。
ただ、アキレスには、そういう面もまったくないわけではなくて、だから最期はああなるんでしょうが。
◇ああ、時間切れー。ハルさん、教科書見つかった?またゆっくりお返事しますね。今夜はこれで。ごめんなさい!
◇「三幅対」は、もうすぐ書き上がるはずだったのですが、オデュセウスが登場したとたん、しゃべりまくってくれまして、危うく主役をのっとるのではないかと思いました。それでちょっと延びてしまい、もう何日かかかりそうです。あしからず、皆さまー!
[817] よ、よいですね… 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/28(Wed) 23:42
かもめさん
へクトル携帯。しかしお店の方はどうやってプッシュされたのですか。まさか「これがあのへクトルの…」とか言ったわけでもありますまいに(笑)。
うちの近くではまだ「トロイ」やってますので、父子の別れの時の長男の唇の動きも確認してまいりました。
切ない場面です。
私はプリアモスもとてもへクトルをかわいがっている気がするんですけどねー、見るたびに。願望かしら。あそこで、いったん淡々と別れを告げていながら、どうしてもあともうちょっと何か言わないと、と立ち上がって声をかけ、「おまえほどの息子はいない」と言う彼のあのことばは、人前をはばかりつつの、せいいっぱいの愛の告白のような気がします。それを誰よりわかっているのはへクトルなのじゃないのかなあ。
にしても、あそこ見るたびに、へクトルって強い人だとしんそこ思うよ。私なんか絶対あそこであんなに皆にサービスなんかできない。すいません、さよなら、あとは自分らでやって、一足お先に行ってますからとか言ってさっさと下りて行ってしまいます。 かもめさんの「生前葬」も笑いつつこたえましたが、かがり かなでさんの「すでに『お仕えしました』と過去形」にもぐっときました。まったくねえ。
「スクリーン」の読者の声欄がへクトルの特集を一ページしてくれてて、そこに主婦の方が、「あの赤ちゃんの抱き方は日ごろ育児に関わってる人でないとできない。主婦の目はごまかせない」とほめておられました。あの場面、「男性も子育てを」のキャンペーンのポスターに使えそうですよね。
かがり かなでさん
そう、脚本では「ライサンダー」の人ですね。たしか最初にギリシャが攻めて来た時、武器庫でへクトルに名前呼ばれてたと思います。ええっと、トロイに帰ってきた一行を迎えるプリアモス、グラウコス、アルケプレトス(神官長)の一団の右端に立ってるのもひょっとして彼?
ヤグディン選手引退したのですか?グラディエーターの曲をよく使ってくれていた人ですよね?私も好きでした。
「トロイ」をほめている批評って、ほんとに少ないです。私はあまのじゃくなのもあって、そうなると、もう絶対に悪口は言いたくなくなる。どうこじつけても、どんなところもほめてみようとまで思ってしまうのですが(笑)。
あまりネットめぐりはしていませんが、最初の頃、自分の書いていることとほぼ同じ見解を書いて下さっていた方は私の見つけた限り、ほんとに一人だけでした。地獄に仏の心境ですごくうれしくて何度も読んでいたのですが、さる掲示板で、その方の批評と私のサイトが比較されてどっちがいいかと議論されていたのには、光栄ながら冷や汗をかきました。
そうか、私、かもめさんにも申し上げてなかったけど、自分のサイトでかなり「トロイ」のこと書いてます。掲示板に書いたあと、「トップページ」から行ける「トロイのヘレン」というところに収めています。かなりたまってしまってますが、よろしかったらごらん下さい。私のサイトは、かもめさんが下で紹介して下さっている、もう一つのかもめさんのサイトにリンクしていただいている「板坂耀子研究室」です。ヤフーで検索していただいても出ます。
それでまた、かもめさん
へクトルのこと、もうちょっと書きたいのですが、ちょっとやばい表現もありそうなので、自粛して自分のサイトの方で書かせていただきます。多分、明日あたり。すみません。最近あちこちのサイトをのぞきすぎて、何が常識か健全かおのれの判断に自信がなくなってますので。もともとないんですが。よろしかったら、ごらん下さい。
[357] 「三幅対」一応終わりました。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/25(Sun) 22:57
◇ガブリエルさん。
オデュセウスによろめいていただいてありがとうございます。しかし、私この話、一応あくまで目標としては、「3月」が華やか、「4月」が重厚、「5月」が透明、という感じをねらってたのですが、最後にオデュセウスが登場するの忘れてました。おかげで透明感がいささか濁ったかもなあ。彼の場面は書いていてとまらなくなり、船で帰った時には、そのへんの木に手ついて、「はあ…やっと行ってしまってくれたか。ありがたや」という心境でした(笑)。
仕事がマジでやばいので、小説の完成を機に、トロイにはまるの少しつつしもうと思っているのですが、まあ、少しづつ、ぼちぼちとおしゃべりは続けて行きたいです。
そうか、ブリセイスを美しいと最初から感じた方の一人なのですね!
あのアキレスのテントで、彼がさっさと服脱いでる時、大抵の人はそっちを見てるのでしょうけど、私は目をワイドにして、彼女の顔も見ることにしてます。ほっぺたをちょっと吸い込んだりして戦う準備をしているような、ほんとに戦士の顔です。
それにしても、ブラッド・ピットのインタビューを読んでたら、「ギリシャ人はヌードが自然って思っていたから、脱ぐのに抵抗なかった」はまあいいとして、「皆も脱いでるんだろうと思ってたら自分だけだったのでびっくりした」とか何とか、あんたそんな、と思わず笑いました。
エリさんやハルさんもちょっと書いておられましたが、パリスは感情移入しやすいんですかね。私は彼は大好きですが、自分からは一番遠い。実際の能力は別として、へクトルとアキレスはどっちも自分の分身みたいによくわかります。あ、オデュセウスも。パリスには絶対なれないという点で、彼が逆に偉大に見えます。
「グラ」の方で、皇帝が生き残ってどうたらという会話が出るのは「春、爛漫」の最後の方じゃなかったかと思います(覚えておけよと言われそうですが)。
そう言えば、私も今日ちょっとスクリプトを読んでいたら、木馬を砂浜で見てる時、パリスが「燃やしましょう」と言ったら、あのアルキ何とかって神官さんが、「そんなことしたら、海神のたたりで、また王子が死にますよ」とかおどかして、プリアモスは「私はもう、これ以上息子をなくしたくない」とか言うて、木馬入れるの決意するんですね。くうう、あの神官、最後はどうなったんだ。城壁の上から投げ落とされるシーンとか、ようく見たらどこかにないか確認に行きたい。
ちなみにうちの近所(北九州のリバーウォーク)では、日に一回、21:05からですが、8月6日まで上映とか。(時間帯は31日からは変わる由。)行くぞ!
◇なかなか忙しくて書き込めないかもしれませんが、皆さまどうか遠慮なさらず、お書きになっていて下さい。
[364] ふうう、何とかかんとか間にあった、さて落ち着いて、と。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/30(Fri) 20:30
◇「363」を補充するとか言ってたけど、めんどくさくなって、新しく書き込み。あー、今日「キング・アーサー」か「シュレック2」見に行こうかとか思ってたけど、そんなどこじゃないわ。どうせ終末じゃなかった週末で映画館混むし、来週ゆっくり見ようかな。
◇書き込みの一つというのは、かもめさんの掲示板で「トロイ」のことというか、ヘクトルのこと書こうとしかけて、よそさまで書くには危ない要素があるのかもと思って、「こっちで書きます」と言った話。別に私は危ないとは思ってないのだけど、最近もう感覚が狂いまくりで、自分がまともかどうかわからなくなってきた。
ずっと以前、キャラママ(板坂)が、「インターネットだパソコンだというから、何かすばらしく新しい人間関係や世界観があるかと思ってたら、江戸時代の長屋かルイ王朝の宮廷かってぐらい、古色蒼然とした世界じゃねえか、つまらん」とぼやいていたのを思い出す。「こんなんなら、江戸文学やったり、漢籍しか読んでないじいさん学者たちの感覚の方が、よっぽど飛んでるし、目新しいし、びっくりさせてもらえるじゃないの」とも言ってた。
それも、これも、悪口じゃないのですけれど、私は最近、いろいろと乱暴なことの多いと聞く匿名掲示板の2ちゃんねるとか、大変過激な描写や発想が満ちているという噂の同人誌とかやおいとか言われるサイトとかに、しばしば訪問するようになって、まだ書き込みはしてないけど(やり方がよくわからないので、うっかり何かまちがえると、すごく迷惑かけそうなので自粛してるだけ)、つくづく読ませていただくほど、何と常識的でバランスがとれて気づかいにあふれた健全まっとうな人ばかりなんだー!!!と唖然とすることがしょっちゅう。
別に悪口ではないんですが、くれぐれも。でも、「この人たちだと、きっと冗談はわからないだろうなあ」とは、ちょっとは思いますね、いろんな意味で。「気をつけておかないと、悪ふざけはほどほどにしておかないと」とかも。
う、こう言ってること自体が、すでに悪ふざけだったりしてさ。
悪趣味な言い回しはやめて、はっきり書くと、とにかくタブーが多いのに仰天、それも有形無形の。タブーが多いということは、それだけ礼儀作法が発達していて、文化的ってことでもある。言ってはならない、触れてはならない、考えてはならない暗黙の了解が厳然と存在する。こういうの見ていると私などは何とかごまかして、そういうことを皆言ってみたら、さぞや面白かろうと思ってしまうぐらい。
考えてみれば、暴走族の世界ほど仲間うちでの礼儀が厳しいものはないとか言うし、「フライデー」だの「フォーカス」だの、過激と言われる雑誌の感覚やモラルって、江戸時代の教訓書よりもまっとうで堅苦しいものなあ。
ごちゃごちゃな書き方をしましたが、上記は主として匿名掲示板についての感想です。誤解のないよう言っておくと、特に否定的な評価というわけでもありません。まだ全部の種類の掲示板を見たわけではないのですが、おそらくこの印象は全部を見ても大きくは変化しないと思います。
同人誌ややおいと言われる世界の作品の数々を拝見しても、私は「いったい、これのどこが病的なんだ、異常なんだ」と、正直パソコンの前で考え込んでしまう。こういった世界の方々が、作品を公開するのに、非常に慎重にしておられるのは、それなりの経緯や理由があることは漠然とわかるのですが、そして実際強い反発や攻撃を受けているのも見るのですが、それもこれも私には謎です。
まあ、これだけ、こういった傾向の文学が広がり根づくのは、日本特有なのかもしれないし、その背景にも興味はあります。決して「病的な現象」というのではなく。でも、その手前か向こう側か、どっちかわからない問題として、私はそもそも、こういうジャンルをひっくるめて一つにして、好きの嫌いのと判断できるのが不思議でならない。ポルノやSF、ミステリや時代劇を全部まとめて好き嫌いというのと同じに、そんなこと自分にはできないなあと感じます。あ、でも確かに、そういうジャンルでくくって好き嫌いになる人もいるわよね。
まあいいや。当分こういうことゆっくり考えたりていねいに分析したりしてる暇はないので、せいぜいいろんな方にご迷惑をかけないよう、気をつけていようと思います。私が愚かな子羊のごとく地雷原をうろうろさまよっているのを見かねて、「あなたそれはですねえ」といろいろ教えてやりたく思っておいでの方が、何人もひょっとしたら何十人もパソコンの前でもだえているような気もしますが、今何か教えていただいても、それをきちんとお勉強する時間はないと思うので、しばらく放っておいて、「あのバカー!」と思いながらごらんになっていて下さい。
うわ、長くなったから、いったん切ります。
[365] さてそこで、これは危ない感想なのかしら(笑)。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/30(Fri) 20:57
◇それでもう、アキレスのジャンプ斬りのごとく、まっこうからいきなり本題に入らせてもらうのですが、その同人誌系のサイトで、そういう点でヘクトルにはまっている方が、たしかお一人ではなく複数だったと記憶しますが、「これほど辱めたくなるキャラはいない」と書いておられて、さすがの私も思わず飲んでたお茶を吹きかけたのですが。それで、とっさに思ったのは「わあ、いい世の中になったなあ」だったりして(笑)。
それは、ある意味とてもあたりまえのことで、ああいう清潔、清楚な人をそうしたくなるのは、人の心理の一つとしては多分そう珍しくはない。看護婦さんや尼さんがポルノ映画の題材になるのも団鬼六さんの作品で令夫人が凌辱されるのも、それと共通すると思う。
なので、そういう設定の話がヘクトルに関してはほんとに多いわけで、もう、その一部を紹介したくて実はうずうずしてるのですが、本題でないのでやめておいて、でも、そういう、ありとあらゆる設定のありとあらゆる描写を読んでも、私は「こんなのは、まだまだだなあ」と思ってしまうわけでして。とても楽しかったのですけど、読んでいて(笑)。
人にとって何が屈辱か耐えがたいか、私の感覚が皆とちがうのかもしれません。少なくとも、私はレイプや拷問やそういったことの数々は、もちろんいやには決まっているけど、舌かんで死にたいほどの最高(最低?)の屈辱ではないし恥辱でもない。それで、恐れ多いことなのですが、へクトルという人にとってもそうなんじゃないのかなあと思ってしまうのですが?
すみません、まじめな人が多く読んでる可能性もあるので、念のため。書いてること、嘘ではないですが、面白くわかりやすく書こうとして、めりはりつけて、悪乗りしてますからね。私がこういうように、理路整然?(笑)と大真面目に書くと、真剣にびた一文余裕なしで目をむいて読む人がいるから恐い。嘘ではない、冗談でもない、でも、遊んでるんですよ。そこのニュアンス、わかって下さいね。つ、疲れる。野暮なこと書いて、すみません。
あ、疲れすぎたので、いったん切ります。ていうか、仕事に戻ります。
[366] ほう、では、あなたは、そういう嗜虐的な空想をたっぷりしているのかと、 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/30(Fri) 21:39
◇きっと期待されるのでしょうが、そうじゃなくて、私がヘクトルをどんなにいたぶった同人誌文学を読んでも、「こんなん、まだまだ親切やん」と思ってしまうのは、要するにこれまた、ペーターゼン監督には負ける!ということなのです。
私は「グラディエーター」の戦闘場面が皆、意味があって、変化があって感心したのですが、「トロイ」もそうです。そして、あの火の玉攻撃の行われた夜明けの戦いで、周囲の敵をなぎ倒していたへクトルとアキレス(実はパトロクロス)が、必然的に接近し、遭遇し、わずかに朱色を帯びてきた鋭く冷たい朝の光の中で、二頭の猛獣のように向かい合い、回り込みあいながら間合いを計る、それに気づいた周囲も一人また一人と戦いをやめ、二人を見守る、あの場面の妙に無機質で、どこか悪夢の中のような違和感にみちた映像は、息をのむほど何度見ても恐ろしい美しさに満ちている。
あそこで、カメラはわざとアキレス?をあおって大きく撮り、無気味な力を持った、この世のものならぬ戦士のように表現します。それは死を決して初めての戦いに望んだ少年の放つ鬼気でもあったのでしょう。あのアキレス?の姿は、おそらくヘクトルの目に映ったそれなのでしょう。
私はパトロクロスが好きです。だから許さざるを得ないのですが、この映画のこの場面で、意図したことではないにせよ、命をかけたにせよ、この少年は何とまあ、私の大事なヘクトルを凌辱し辱めてくれたかとじわじわ血が騒ぐほど怒りがこみあげてならない(あ、あのー、嘘ではないけど、めりはりつけて書いてるんですよー。笑)。
いろんな方が、この件で、「なぜパトロクロスを殺したことが、そんなに問題なのか理解に苦しむ」とか、「パトロクロスはバカだ、殺されてもしかたがない」とか、「そんなに大事ならアキレスは箱にでも入れておけ、戦場に出しておいて堂々の対決で殺されて文句を言うな」とか言って下さるたびに、私はその方々の手をとって、「ありがとう、ありがとう、そう言ってくれるなんて何て親切な人、そう思ってくれるなんて何てもう優しい人」と涙ながらに感謝したくなる。
でもねー、私はあの場面、見るに耐えないのです。恥ずかしくて。みじめで。みっともなくて。情けなくて。皆のかたずを呑んで見守る前で、天下のアキレスと信じて、あのガキをまともに相手にして、勝って満足して、あー、書いてるだけでもう舌かみきって死にたくなる。はっきり言うけど、これは本気で書くのだけど、パリスのあの足にしがみつき場面以上にみっともない。何度見てもあそこで私、目を細めます。見るに耐えずに。ペーターゼンはサドにちがいないと思います。拷問が何よ、強姦が何よ、裸にされのベッドでいたぶられが何よ、あの一騎討ちの場面のヘクトルのみっともなさに比べたら、そんなの恥にもなりはしない。
…という私の感覚は、決定的におかしいのかなあ?(笑)
ちょっとまた、仕事に戻ります。
[367] これは364から366の続きです。ふう、我ながら長い。 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/30(Fri) 22:11
◇ここから先は、ひょっとしたら、読み間違え、見間違え、思い過ごしかもしれません。でも一人でつらい思いをしているのがいやだから書いてしまいます。「そんなの考えすぎ、こじつけだ」と言われたら、私は泣いて喜びます(笑)。
ヘクトルの、あそこでのみっともなさに拍車をかけて、とどめをさすのは、その直前の砂丘の上でのアキレスを認めた時の彼の反応です。
たくさんの人が指摘するように、アポロン神殿で、「ヘクトルだな、私(獅子)の名を知っているか?」と、めいっぱいカッコつけて聞いたアキレスに対して、(実際、名前を知らなかったことは、その後のアンドロマケとの会話でもわかるのですが)ヘクトルは「武器を持たない神官を殺して!」としか応じません。このやりとりは同人誌文学で、飽くことなく繰り返し描かれて、どれもなかなか面白いのですが、そのすべての作者がこの場面からうけとめている、アキレスの失望と口惜しさ、かきたてられた相手への関心はおそらく正しい。この姿勢がヘクトルの基本であり、戦いはそれ自体が目的ではなく、ましてや名を残すことなど考えてもいない、というのが彼の生き方です。アキレスと正反対の。
ヘクトルがアキレスの名をいつ知ったかは微妙です。すでに指摘されているように、御前会議の時に「昨日はアキレスがいなかった」という字幕は、実際には「ミュルミドンがいなかった」で、この時点ではヘクトルはまだアキレスの名を知らないのかもしれない(ミュルミドンとアキレスの関係がほぼ一体として知られているなら、もうここでわかっている可能性もある)。
でも、夜明けの戦いで、アキレス(偽の)が登場し、ギリシャ勢が勢いづいた時、ヘクトルははっきりと「アキレス」とつぶやき、荒々しく突撃命令を下します。
私は、この映画、パリスやアキレスは変化する、でもヘクトルは常に完璧で変化しない、だから主人公ではない、と言ってきました。でも、少し訂正しなくてはならないかもしれない。この場面でヘクトルは少し変わっているかもしれない。
難しいのは、アイアスとの戦いでもそうだったように、一番手ごわい敵に向かって自分が真っ先に進むのもまたヘクトルの特徴で、アキレスめがけて突進するのも、そのいつもの指揮官としての義務感にすぎないのかもしれないこと。ここは、ものすごく微妙です。
それでも、私には、ここのヘクトルが、いつもの彼とちがっているように思えてならない。あえて言うなら、アキレス化している。国や民のためではなく、仕事としてではなく、戦士としてアキレスと対決したい、そういう本能が彼をとらえているように見えてしかたがありません。アキレスという人間の強烈さは、ヘクトルの中に眠っていたものもまた呼びさまし、二人の関係は一方的なものでなく、相互に影響を与え合っており、ここでヘクトルはアキレスに洗脳され、影響され、染められ、あえていうなら凌辱され征服されている。
しかも、そうやって突進した先にいたのはアキレスではなかった。こんなみっともないことが、この世にあるのでしょうか。ペーターゼン監督はほんとにサドだと思います(笑)。
すみません、この次できっと終わりますので。
[368] 367の続き。長くてすみません。これで終わりです! 投稿者:じゅうばこ 投稿日:2004/07/30(Fri) 22:51
◇そうなると、もう一つとどめは、決闘の時にアキレスが言う、「偽アキレスを殺したバカ」のせりふも、ほんとに傷口に塩すりこむひどさで、もうもう聞いててたまらないのですが、でもそこでアキレスに腹立たないのは、彼がそんなこと言ってしまうのもわかるんですね。もちろん従弟を殺された怒りがあるにせよ、それとはまたちょっと別の。
あー、またこんなこと書いてると長くなるのですが、私が「トロイ」を見ていて強く連想するのは、「平家物語」と「ロミオとジュリエット」(と、それを翻案した「ウェスト・サイド物語」)なのです。最後のパリスがアキレス射るところなど、「ウェスト・サイド」のラストとすごくイメージが重なります。それはまたいつかゆっくり分析するとして、同人誌文学の多くが、この映画に「アキレスとヘクトルのかなわぬ恋」という図式をかぶせているのは、基本的には正しいと思います。
それを恋や愛と表現するかは別として、この二人の生き方はブリセイスを通して、また直接に、影響しあい、またすれちがいます。その動きが非常に恋愛に似ている。
ヘクトルがアキレスに精神的に支配されて戦いに酔う戦士となってパトロクロスを攻撃している時、アキレスは戦士としての名誉を捨てて人間として生きる道を選択し、ブリセイスと抱き合って眠っています。二人の英雄の壮大な精神のすれちがい。この夜明け、ヘクトルはアキレスに変じ、アキレスはヘクトルになっている。そして、戦う残酷な神から優しい人間になったアキレスが微笑みを浮かべてテントから出てきた朝に見たものは、かつての自分が解き放ったヘクトルという人間の心の中の野獣によって殺された少年だった。
アキレスの、あの朝の怒りは単純なものではありません。人間になろうとしたのに、そのきっかけを与えてくれた当の相手のヘクトルに裏切られたという思い。そのヘクトルをそうしたのは、自分であったかもしれないという思い。彼があそこからヘクトルを死骸になっても残虐に扱うまでの激情は、「人間になろうとした後悔」と「人間にさせてもらえなかった怒り」です。それは、同じ一族の老王によって鎮められるまで、終わることはありません。あそこで再び彼は人間になる道を選択するのです。
一方のヘクトルもまた、戦いに酔う戦士から人間に引き戻されます。けれども彼の悲劇はアキレス以上に深いかもしれない。彼は、自分が守ってきた生き方を、あの戦場で捨ててしまったことを知っています。同人誌風の言い方と誤解されようと何だろうと書きますが、彼の生き方の純潔さも処女性もあそこで失われていて、修復は不可能です。他の誰もが目をつぶって、そむけていてくれても、彼自身はそれを知っている。だからこそ彼は、アキレスの呼びかけに応じます。もう自分はそういう人間になったと、アキレスと同じ血に酔い、名誉に酔う戦士になったと思っているから、そう言う風に生きるしかないと感じているから、彼は出ていくしかないのです。
この映画が描く世界は、複雑で壮大です。どう解釈しようと、それぞれの人が楽しめればいいことで、私のこの見解も、あくまでもその一つにすぎません。しかし、こうして見るのが、私には一番よく理解できます。そして、数多くの同人誌文学が、アキレスとヘクトルを恋愛関係に描いているのは、象徴的な意味ではその通りだろうし、そういう空想を生むのは、たしかにこの映画が与えている、伝えてくるメッセージをきちんと受けとめた結果だろうとも思えるのです。
一応、今回はこれで。