ほろり
先日横庭から奥庭に植え替えた七本(八本だっけ)の柿の苗木が無事かどうか気になって、目が覚めてすぐ、ラジオ体操の前に急いで見に行った。昨日は何だかどの木もしょんぼりしおれていた。あの最低の気分の時に、かなり荒々しく元の鉢からむしりとって(鉢の底の水抜き用のプラスティック板にはりついていて、めりめりひきはがして取る時にめちゃくちゃ根を傷つけたのだ)すごくいい加減に穴を掘って植えたので、やっぱりだめかと思ってくやしかった。こんな植え方になってしまったのも予定が狂いまくったせいで、すべてはその原因となった唐突な訪問者の方々をひたすら恨め柿の木たちよと、我ながら女々しく情けない呪いのことばを吐いたりしていたのだが、柿の木の方は私より考え方がまともだったのか(笑)、どうやら持ち直してくれそうで、今朝はわりとしゃんとしていた。肥料や水を施したのがよかったかもしれない。まだまだ楽観は許されないが、もしかしてこのまま根づいてくれれば、奥庭の境界はかなりいい感じになるだろう。ただし、立派な垣根になるほど育つのはきっと十年後ぐらいで、私は生きてられるかわからないが、それもまた楽しみである(笑)。
プロ野球のソフトバンクホークスの成績が、昨今のお天気同様、あまりに激しく乱高下をくりかえすものだから、何か書いてもすぐ賞味期限が切れてしまう。この前は主力が嘘だろうと思うほど次々故障で離脱して、選手会長の周東選手が大変そうにしていた。体調も成績も振るわなかったらしい試合のあとで(相当以前のことですよ)、報道陣にそっけなかったのを、すぐその後で反省して、「イライラしていてすごく恥ずかしかった。皆も見ているのだし、そんなことではいけないのに」と、こっちがちょっとほろりとするほど、けなげなことを言って、以後はしっかりにこにこと周囲にも記者にも対応しているようだったので、感心したり安心したりしていた。
最近彼のファンのハッシュタグとか見ていると、これが野球選手か、タレントかなんかじゃないのかと思うような、外見スタイル容貌にうっとりしている熱っぽい夢中の記事が多く、すごいなと舌をまきつつ、こんな人気じゃ本人もわけわかんなくなって道を誤るんじゃないかと、とことんいらん心配をしていた。これもどうせまったく偏見だが、あんな危険で紙一重でぎりぎりの局面ばかりのプレーを仕事にしている人間の性格は、どんなに外見が優しそうでも気弱そうでも、映画「ハート・ロッカー」の主人公なみの異常なまでの激しさや危険を好む闘争心の塊のはずで、それは不安定で繊細なものでもあるだろうから、本人にも誰にも予測がつかないんじゃないだろうかと思ったりしていた。
それが、「穏やかな気持ちになるためにはどうしたらいいか」と周囲に相談して回ってるとか聞いて、まあそのくらいなら大丈夫なんだろうと思う一方、相談された川瀬選手が「僕はイライラしたら娘の寝顔を思い浮かべることにしています。周東さんも娘さんの写真をベンチに貼っておくとかしたらいいのでは」と答えたり、山川選手が「おれも昔はイライラしたけど、年を取ったら疲れるからそんなこともなくなった」と答えたりしているのを見ると、どっちも妙にものすごくそれらしくて、本人の性格や状況に似合っていて、けっこう笑いこけてしまった。
そして、私がいいのかいなととまどっていた、ジャニーズのファンサイトみたような周東選手のファンのハッシュタグでも、その後本人が膝の調子が悪くて数日休んだときに、多分若い女性が大半のそのファンたちが、こぞって「出ないで休養して、完璧に治して」「最後に出場しそうでとても心配した。やめて下さい」と書いているのにも、あらー、時間をかけてお金もかけて、「推し」の顔を見ようとはるばる必死で球場に来たはずなのに、こんなに皆で「出ないで」「休んで」と懇願するものなのかと、それもまた、相当ほろりとさせられた。私は他の選手やタレントのファンもこんなに「会えなくていい、見なくていい、それより自分を大事にして」と普通に自然に願えるものなのかどうか知らないが、そうであってもそうでなくても、こんなにけなげで立派なファン層が日本に育ちつつあるのかと思うと、株価や米の値段やその他もろもろは気にならないほど、日本の未来が頼もしい。って、何をえらそうに言ってるんでしょ私は(笑)。
その周東選手は一昨日の試合では数日ぶりに登場して活躍して連敗をとめたが、これまた女性だけではなくチームのファンの全体が、「活躍はうれしい、出てほしい、でも出てほしくない、膝の状態が心配だ」と心を引き裂かれているのが、これまた何とも言いようがなかった。もとから思っていたけれど周東選手はプレーや野球のスタイルだけではなく、ファン心理や応援のあり方まで、これまでとどこかちがったかたちを生んで、変にして行く選手である(ほめてます)。それはさておき、その後も故障や離脱は続くし、ホークスもパ・リーグもこれからいったいどうなることやら。まったく先が読めません。
ひゃー、死ぬほど忙しいのに朝っぱらからこんなこと書いてたら、油断して刈り込むのを後回しにしていた姫エニシダがもう花が咲き出してるじゃないか(見えますか?肉眼でながめると、この状況って相当グロい)。大急ぎで先っぽだけでもちょん切って玄関の花瓶に挿しとくとしよう。家の中に入れたら、けっこう豪華に見えるかもしれないもんね。