「水の王子」通信(29)
何かまだやめられなくて、ちびちびイラスト補充中。
ヒルコとハヤオが初めて出会う森の中の様子を描いたのですが、当初のイメージよりはだいぶ明るくなっちゃった。
実はこの第一部「森から」は、まんま私が育った故郷の家の庭なのです。もう人さまに買っていただいたから私の家じゃないのですけど、昔のまま残っている庭木や石や、枯れたり売ったりでもう今はなくなってるものや、全部を描きこんでみたら、小説の舞台にあった不気味さや暗さがまるでなくて、おとぎ話っぽくなっちゃったのが、ちと計算違い。めちゃくちゃ計算違い。まあいいか。
門を入ったすぐにある巨大な岩と、番兵のようにそれをとりまいていたすらりとした樫の木たち。玄関わきの大きな木斛と、その向こうの斜めに倒れかけた梅の古木。その奥の庭のアジサイの花叢、座敷から見える岩組の間に毎年一本だけ咲いていた桔梗。あちこちにあったいろんなツツジ。塀のそばの石の向こうにあった細い紅蘇芳。その横のぶっといヤマモモの木になった紫の実を毎年塀の上にのぼっては食べていました。塀の外にまで雲のように広がっていた桜。門の横の岩組の中にあった白い山茶花と銀木犀。その横の大きなサルスベリ。アジサイの茂みの向こうの水仙の花群。そこを飛んでいたオハグロトンボ。赤い花をいっぱいにつけた椿の木。全部つめこんだら、こうなりました。さすがに石灯籠は入れられなかった(笑)。
小説ではもっとおどろおどろしい暗い森で、蔦とかいっぱい下げなくちゃならないんですけど、ついつい、こんな遊園地風になっちゃったのよね。おどろおどろしい森も実はめちゃくちゃ好きなんで、少々困っています。
最初色が薄くて、あまりよくわからなかったんで、少し濃く塗り直してみたら、まあまあ見やすくなったかな。
つくづく、こんなことしてるヒマないんですけどねえ。ぐぬぬぬ。
とか言いつつ、草原もひとつ描いてみようかと、画策中。この第二部「草原を」は私の中学から高校時代の友人たちと好き放題して遊んでた時代なので、そのころ(中学の図画の時間に)描いた水彩画を基本にしたくて、上の家のすみっこに懸けていたその絵を写真に撮ってきました。これ、「断捨離狂騒曲」シリーズで書いた、私が唯一、母にほめられた思い出の絵です。本邦初公開(笑)。母が額に入れて飾ってくれたそのまんま、六十年近くになります。
これが草原の絵にどう化けるかはお楽しみ。でもなんかまた、イメージが原作と変わっちゃったりしてさー。