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「太平記」と「王の帰還」についてのメモ

「太平記」と「王の帰還」についてのメモ(2021.10.22.)

ファンタジー文学(指輪物語など)でもそうだが、大変な戦いの後、悪が滅びて、正義の味方が支配者となってハッピーエンドで終わる話は多いが、実はその先がそううまく行かない。

フランス革命はジャコバン党の、ロシア革命はスターリン政治のような恐怖政治や独裁を生み、あげくにナポレオンが皇帝になり(「レ・ミゼラブル」の時代)、ソ連も崩壊した。中国もまた人権を無視する政治体制になっている。

こうなる原因の一つは、強大な悪の帝国とは命をかけて戦った人たちの多くが、新しい正義の政権の中心や支持者となったとき、その政権や指導者を守ろうとして、以前のような激しい批判や反対をしなくなることである。かつて、ベトナム戦争の終盤であるベトナムの知識人が「アメリカに勝って新しい政権が誕生したら、今は協力している共産主義の人たちと対決しなくてはならないだろう」と言っていたが、この時点でそのような覚悟をすることは珍しいし難しい。「真昼の暗黒」「二十五時」の小説などからわかるように、東欧の知識人たちにそれはできなかった。

新しくできた正義の政権は、まだ弱い。滅びた悪からの攻撃もまだ強い(チリのアジェンデ民主政権を崩壊させたアメリカが典型。のちに大量殺人兵器など結局見つからなかったのに嘘をついてイラクを攻撃したように、これはずっと中東や中南米の諸国に対する、アメリカのお家芸だった)。その中で新しい指導者を育てて守って維持してゆくには、身内が厳しい批判をしたのでは、また正義が倒れて悪が戻ってしまうと、正義の味方なら心配し、恐怖せざるを得ない。

だが、そうして、見逃して甘やかしている内に、いつの間にか、正義の支配者は、前と同じ悪になって行く可能性もある。

これは、私たちの身近な職場や自治体やサークルでも起こることである。自民党の金権政治にうんざりして国民が誕生させた民主党政権が短期間でなくなったのも、その後「あれに戻るよりはまし」と言いつづけて、どう見てもそれよりはるかに以下になるまで自民党政治を続けて、党の内部からさえ批判が出なかったのも同様の図式である。

万一、選挙の結果、野党連立政権やその他、「今よりまし」な政権や指導者が誕生したとき、それをどう守って育てるのかは、重要な課題となるだろう。

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カツジ猫