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「ソルト」感想(例によっておまけ)。

あ、もうほとんど映画と関係ないんですが(笑)。

潜伏スパイ的英雄ってんじゃ、ハリー・ポッターもそうですよね。彼の真の仲間はホグワーツという学問の場での、赤の他人の人たちで、生活をともにする家族は、ただもう、ひどい、うざい存在なだけ。

まあ、あれは叔父さん叔母さん夫婦の家で、ハリーのほんとの両親はもういなくて、彼らの代わりがホグワーツというのが、うまい、ずるい設定なんだけど。
それ言うなら「スター・ウォーズ」も「エラゴン」も実の親じゃなくて親戚か育ての親ですよね。

でも、シンデレラや白雪姫の悪い残酷な継母が、実はほんとの母親の投影、身代わりとして描かれるように、親族や養親は実際には血のつながった家族のうざさや、それに対する憎悪や不満をこっそり重ねて見ることで、うさばらししてると思うんだよね、見る方は。作る方もそれ知ってて作ってる。昔から。

現実の家族、友人、社会への不満や怒りを、どこか遠くにいる、ほんとの家族や仲間を夢見ることで一時的に薄めるのって、多分たくさんの人がやると思う。潜伏スパイや、カルト信仰や、だいたい思想や宗教って皆少しはそういうとこがあるわけで、あえて言うなら、そこには認めるべき、いいものもある。だからこそ、親や社会を捨ててカルト集団に走る人だっているわけで、そこには本来、人類が持ってた健全で正しい要素もあるわけです。そこを利用されてしまうから、やっかいでもあるんだけど。

あのね。
どんどんもう、話がはずれていくんですが、でもつながってはいると思うけど、それじゃ最近のひきこもりっていうのはどうなるかってことにもなりますよね。普通、人間どこでもいつでも、家族や所属する共同体からいつか逃げだそうと思うもんだろうけど、今はそうじゃない人がふえているのはどうしてか、私にもよくはわからない。
でも、あれは多分、インターネットなど使って、家の中で家族とは別の世界に逃走できるからなんでしょうね。私が本を読んでたのと同じように。
「マトリックス」や「インセプション」の発想が、あれだけ共感されるのも、「頭の中で現実から逃走してる」人がそれだけ多いからかもしれない。

またまた話が飛躍しますが、最近のニュースで、幼児を部屋にとじこめて放置して死なせたお母さんと、超高齢の老人が相当数現存しなかったというのと、不謹慎を承知で言うと、ほんとにどっちもホラーめいたすごい話なんですが、それももう、どっかこういうことに関わると思うのよね(おまえみたいな結びつけ方したら、そりゃもう何でも関わるわいと言われそうですが)。

私はあのお母さんの気持ちがわかるような気がするんです。何でもう、そんなことするぐらいなら、そのへんの廊下か道路にでもせめてほっぽり出さないかって思った人は多いだろうけど、でも、それはすごく勇気がいる、自分の中の何かをぱっと切りすてる作業だったと思うんです。そんなパワーが彼女にあったら、そもそも苦労はしませんよ。一生懸命子育てして、すりへってくたびれて、そういう時にもう、あの人としちゃ、そんなコペルニクス的転回の発想の転換なんてできるはずない。

だから、何となくわかるんだけど、だから恐くもないんだけど、それでも、どっちが恐くないかっていうと、私は老人が(あ、いなくなった時点では老人でさえないんだけど)集団で消えてたっていう話の方が、ずっと恐くない。もちろん、実際には、恐い悲しい場合や話もそれらのケースの中にはいくつもあると思うけど、もう超おおざっぱな抽象的なイメージとしては、「子どもが部屋にとじこめられて死んだ」のと、「老人が大勢行方不明になってた」のとでは、後者の方がずっと、私にとっては救いがある。消えた、いなくなった、所在がつかめなくなった、そういうことが基本的に私は悲劇と思えないのかもしれない。

ほんとにとりとめと、それより時間がなくなったので、もうここまでにしときます。しっかしもう、「ソルト」でここまで話を広げるかー、私。

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カツジ猫