「トイ・ストーリー3」感想。
キャラママさん。
暑いですねー。
「トイ・ストーリー3」は、うかうかしてると字幕がなくなって吹き替えだけになりそうなんで、大急ぎで見てきました。面白かったんで、吹き替えでまた見てもいいなと思ってるとこです。
ただ、3Dだったせいもあるんだろうけど、画面が色鮮やかで、それがじゃんじゃん動きまくるから、ちょっと見ててきつく、どういうか、ながめてる分には「アリエッティ」の方がずっと好きだな、私は。
筋や構成はもう豪快なほどしっかりしていて、計算しつくされてて、憎たらしいぐらい、何のスキもないのよ。意味不明なとこは皆無、ムダな伏線は皆無。目をなくしたおもちゃの目(ややこしい言い方だな)を、あんな風に使うとは思ってもみなかったし。
それでいて、そんな細かいことは多分わかんない子どもでも、めっちゃ楽しめるようにしてある。
実は、吹き替えが別のへやで二か所ほどやってて、だから字幕はガラすきで、まあそれもねらって行ったんだけど、時間が合わなかったのか、小さい女の子二人つれた若いお父さんが来てて、ひとごとながら心配してたの。始まったとたん、えー、字幕!?とか言って出て行くんじゃないかとか。まー、帰国子女かもしれんし、実は外国籍の人かも知れんし、とか思ったりして、私も少ない脳みそをつくづくムダなことに使ってるよなー。
だけど、心配なかったみたい。たぶん子どもにはわからないとこ、いっぱいあったと思うけど、そんなこと関係なく、大笑いして喜んでました。だろうよ、私だって笑ったし。しょーもない、バカなとこで。
でも、そーゆーとこが大事なんだよねー。
脚本や構成のメンバーに悪魔がいるのかと思うほど、ぬけめなく、すきなく、完璧。「アリエッティ」のふわふわたよりなく、しまらなく、病み上がりの猫の足どりみたいにたよりない筋書きや人物像と比べると、まるでボンドで接着してねじくぎでとめたように、人物設定もゆらぎがない。
いちゃもんと言われてもしかたない文句をつけると、そのカンペキさが逆にものたりない。安心して感心して見てられるのはいいけど、ヒヤヒヤ感(映画に没頭してのじゃなく、映画の出来に対しての)やイライラ感が足りない…って、まあ、いらんのだけど、そんなもん。
どっか、もうちょっと、アラを作れよ、ってむちゃくちゃな要求をちょっとしたくなるぐらいの安定感です。
ただ、実は私、「トイ・ストーリー」の1は見て面白かったのですが、むちゃくちゃはまれなくて、2は見てないんですよ。そして3を見てつくづく思ったのだけど、これはつらい映画ですよ。ほんとは暗い映画ですよ。
だって、おもちゃなんて、基本的には忘れられ、こわされて、捨てられるもんです。彼らは人間や動物のかたちをしてるから、そのことはっきりわかるけど、パソコンだってケータイだってクルマだって、家具だって服だってアクセサリーだってティッシュペーパーだってタンポンだって、皆そう。そのひとつひとつに性格与えて擬人化して想像したら、つらくて毎日生きてられない。
私は「1」を見たときに、たまたまたしかUFOキャッチャーにはまってて、だから、あのエイリアンがクレーンみて、「神さまー」みたいに運命を決めてもらえる存在とあがめてるのを見て、いつもうすうす感じてたことを、あからさまに言われたようで、ぐさっときて、あー、よくこんな残酷な映画つくるなーと思って、そこがもう一番印象に残ってる。彼らが今度の映画でも元気で活躍してたのは、うれしかったけど、あんなに大量の消耗品のやっすいおもちゃにも、(それにふさわしい単純なものだけど)精神があるというのは、何とおそろしい空想だろう。
だからこの映画、「アリエッティ」とも通じるんだけど、ゴキブリやネズミ、ゴミになるがらくた、そういうものすべてに涙して愛を感じる精神というのは、大切だし重要だし、世の中も人も忘れてはいけないんだけど、でも、つらいことなんだよねー。
命があるペットや食用の動物、ひいては人間でさえも、感情もない歴史もないように扱ってしまうことも多い、この世の中じゃ。
「トイ・ストーリー3」の、これでもかというぐらいのハッピー・エンドは、「現実はそうはならなかった」無数のおもちゃや動物や人間たちへの鎮魂歌です。だからせつない。だから苦しい。だからただ甘いだけの映画ではなく、ものすごく暗くて重い。