1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 「ローラーガールズ・ダイアリー」感想。

「ローラーガールズ・ダイアリー」感想。

誰が見たってきっと思うだろうが、とても手堅い映画だ。もう、何から何まで、予測できるあたりまえな展開と結末なのに、全然退屈しない。むしろ、それがいい。安心して細部を楽しめる。

その細部っていうのが新鮮で、手堅くて全部予想のつく話だからこそ、へえっという驚きがある。主人公は平凡な女の子だが、お母さんは彼女の未来の幸せのために、いろんなミス○○のコンテストに出場させて優勝させようとする。別に水着とかじゃない、きれいなドレス着て、まじめなスピーチして、いいお嬢さんをアピールするようなコンテストで、これが、いろんな種類のがしょっちゅう行われているのも、はー、そんなものなのかーと感じてしまう。

タイトルになってるローラーゲームという競技は、日本でも一時はやって、よくテレビで中継してたのを私はリアルタイムで見た世代だ。そのテレビがまだモノクロだったのを覚えてるから、気が遠くなるほどの昔である。そのゲームが今まだアメリカではやっていて、それも多分、地方でかなりしけた感じで、でもそれなりにはやっているというのも、これまたへーっと驚かされる。
アメリカの観客はそういうところ、どうなのか知らないが、きっと「セックス・アンド・ザ・シティ」とかではまったく描かれない題材が、でもそういうドラマの背後や背景には存在して横たわっているのが自明の、そういう現実がこうやって描かれるのが、これまた新鮮なんじゃないだろうか。

こう書いただけでもう、読んでる人にもどんな筋か全部わかると思うから言わなくってもいいようなものだが(笑)、主人公の女の子は、お母さんのいうなりにコンテストに出てたけど何だか満たされず、居場所がない感じだったのが、たまたま見たローラーゲームにひかれて、選手になってスターになって、生き甲斐を見いだしていくけど、まあ当然そこでいろいろ問題がおこるのを、のりこえなくちゃいけない、という話だ。

その主人公が「インセプション」にも出てたエレン・ペイジなのだが、この人のすごいのは、コンテストでおずおずとした優等生のいいお嬢さんやってても、ローラーゲームの選手で相手チームや味方と乱闘していても、どっちもぜんぜん、不自然に見えないことだ。そりゃ、別の映画でまったくちがった役をやって、どっちも自然に見えるというのは、うまい役者なら普通だが、この人、同じ映画の中で、一人の人物演じてそれだというのが、ものすごい。あまりに自然なものだから、誰もふしぎに思わなくて名演技にさえ見えないという点で多分ちょっと損をしている(笑)。

私はこういう「名演技ー、熱演ー」という感じじゃなく、うまいと人に気づかせない、うまい俳優は大好きなのだが、それだけでなく、この主人公の少女自体が、私のある意味理想に近くて、何が気に入ってるのか、もう自分でもわからないまま、妙に気に入った。
つまり、育ちのいい親の言いなりのお嬢さん風でも、荒くれ女にまじって肉弾戦してても、どっちも違和感ない、その人そのものに見えるような女性、人間に私はなりたかったし、めざしてた。もちろん彼女のように外見にも能力にも恵まれてないけど、自分の水準なりに、それなりに、「何をしてても、どこにいても、誰といても、嘘っぽくなく、その人らしい」というのが理想だった。
ある意味それって、今の若い人もどこかでめざしてる理想なんじゃないのかな。ひょっとしたら。

そしてまた、彼女の友人、お母さん、お父さん、恋人、チームメイト、皆ものすごくただもうその人らしく、お母さんのマーシャ・ゲイ・ハーデンはさすがに私も知ってるから、ひたすら、ただうまいとわかるんだけど(「ミラーズ・クロッシング」の美しいヒロイン、「ミスト」の恐いおばさんだぞ)、他の人にいたっては、すごくうまいのか、それが素なのか、見てて全然もうわからない。それほど皆が自然で悪目立ちしない。

わー、やっぱり長すぎたか。いったん切ります。

Twitter Facebook
カツジ猫