「影の軍隊」見ながらあれこれ。
◇ちょっとやっかいな大仕事をひとつ片づけて、散らかった資料の中で一息ついているところです。よし、今夜こそ早く寝るぞ。
◇ずっと前に買ったまま封を切っていなかった古い映画「影の軍隊」のDVDを見ています。一度映画館で見ているのですが、すべて忘れていました。フランスレジスタンスの映画で、ケッセルの小説の映画化です。
裏切り者のポール・ドゥナを処刑するため、車に乗せて連れて行くときの海の青さの美しさだけは記憶に残っていました。超不謹慎でふとどきなことを言うと、このせりふがまったくない青年ポールの脱力した無抵抗さが、まるで小鹿のようで、ものすごく嗜虐的なエロティシズムを感じさせたのも覚えていて、今回見て再確認しました。誰か知らんが若手の名優なんだろうなあれ。
彼を殺す準備をしているとき、二人だけになって見張りをしている新人の仲間の青年が気まずいやら何やらで「何で裏切った?」と聞きます。ポールはもちろん答えないのですが、原作では彼の内心が描かれてある意味しゃべりまくってるんで、実はしっかり者の恋人に誘われてレジスタンスに加わって、その彼女が逮捕されて拷問されて殺されてからもう生きる力をなくしたとか、いろいろあるんだよねこの人も。
そういう細かいことは全部カットしてあって、それが逆にクールで冷ややかな感じを倍増させてます。リノ・バンチュラをはじめとした名優陣もいやー迫力。そして金髪プレイボーイのジャン・フランソワを原作と変えて、ああいう風に使ってたのか。当時の私は気に入らなかったんだろうけど、まあ今見ると悪くはないですね。
シモ-ヌ・シニョレのマチルダは貫禄ありすぎてすごいけど、でもだいたい原作でも、この女性のイメージって強すぎるだけでいまいち鮮明ではないもんな何となく。
フランソワ兄弟に象徴される、どこか華やかでのどかな明るさが、悲惨ななかにも救いだったんだけどなあ原作は。映画は徹底的に暗い。ラストで登場人物たちのそれぞれの悲惨な最期をナレーションで入れるから、それがもうとどめだけど、あんなの原作にはないのよ。むしろ、ほのかな希望がある。まだヒトラーが強い時代に、絶望の中で書かれた小説なんだけど。
何もかも8割がた暗くなってる中、冒頭のエピソードで登場する、収容所の中の共産党員の青年(ほとんど少年)のルグラン一人が原作では病気で死を待ちながら犠牲的精神を発揮する、いじらしさと切なさで胸キュンものなんだけど(どこまでも不まじめでごめん)、映画では病気でもなくそのまま生きのびるかもしれないのが、感動は薄らぐけど何だかほっとしてうれしくもある。
そしてまたまた言うけどさ、こんな小説をしっかり読んでいたから私は、戦時中に共産党がリンチ殺人したとかしないとかいうのが攻撃や批判の対象になるのが、「はあ?!」と思ってしまう精神構造なのよね昔から。残酷で卑劣な大きな権力に対して戦うときには、そういう事態が起こるのはよくはないけど当然だろうとほとんど肌で感じてしまう。
◇お、夜なか過ぎそう。寝ます!