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うるうるお目目。

◇母が亡くなったからって、精神不安定には少しなってるかもしれないが、そんなに弱気になってるつもりはない。だいたい私は母の葬式の前に、もうごく自然に母の死に顔に向かって、「あんたの死んでからの初仕事よ。これまでずっと二人でそうしてきたように、今度も力を合わせて二人でやってのけようぜ」と心の中で呼びかけた。そして、遺骨になった母と、「よっしゃ、一応無事に終わった、なかなかうまくやったんじゃないの」と二人で見えないグラスをかちんと合わせて成功を祝した気分になった。

母は、反骨精神にあふれる一方、それなりの功名心みたいなものはそこそこあって、晩年ベッドの上でよく私に、「私たち二人みたいに、親子でこんなに長生きしたものはおらんやろうね」と言った。「そんなことないよ、そこそこいるよ」と私が言うと、「そうかねえ」と、さほどこだわらずに納得したが、もっと若いころでも、ときどき、他人には言わないが私のような身近な者には、「私たち、よくやったよね」と、ささやかな成功を確認して達成感をかみしめたがることがあった。私には、そうやってこっそり、ちょっと得意になっている母が、無邪気に見えて、微笑ましくても不愉快ではなかった。

だから葬儀や火葬が滞りなく終わって、多分そんなに母のイメージとちがわないかたちでできたと思ったとき(母は歌手の佐良直美が、レコード大賞をもらった時、泣かなかったのを見て気に入ってファンになったぐらいなので、私が葬儀の間中、心から明るくふるまっていたのに、きっと満足している)、私がお疲れさんとねぎらい合いたい相手は、ついどうしても母になる。この数日、年金や介護保険や貯金の解約の手続きをしていて、無事にそれが一段落するたびに、「やった」と、母とハイタッチしている。ときどき実際に空に手を上げていて、ヤバいおばさんに見えているかもしれない(笑)。

◇というようなわけだから、涙もろくなっているはずはないし、見るもの聞くものに余計な感情移入をしているはずはない。だから、これは私の思い過ごしではなく客観的な事実だと思うのだがって前置きが長すぎるのだが、カツジ猫めが、お留守番が多いせいか、かちんと冷たく凍って見せてる時はまだしも、それが溶けると、でれでれ甘えるのもまあいいとして、私が出かける気配がすると、まん丸い目を倍ぐらいに見開いて、世にももう、よるべない、悲し気な、心もとない、最後のロケットが君を残し地球から去って行くのを見てるような♪顔つきになる。

私はにゃあにゃあ鳴いて追いすがられたりすると、けっこう平気で家を出て行くと思う。そこんとこには自信がある。だが、鳴くでもなく、追うでもなく、ベッドや椅子の上から、首だけこちらに向けて、こぼれそうな大きな目で、じいっと見ていて、自分でもどんなに情けない顔をしているのか多分わかってないような切ないまなざしで、ひたすらにぴったし見つめられるのは、もう、ものすごい磁力である。かつての愛猫の故キャラメルは、こんな哀れっぽい顔はしなかったから、この一見堂々としたふさふさの毛並みで、こんだけ身も世もない風情を見せるのは、たしかにカツジの特技だろう。とんでもない生き物を飼ってしまったものだ。振り切って出て行くのに、膨大なエネルギーを費やする。私がこれほど、やわな精神とは自分でも思ってなかった。恐るべしカツジ猫。

◇今夜は戦争法廃止をめざす市民連合オール宗像の会議があった。他の会議とぶつかった数名をのぞき、何と各団体、個人、ほぼ全員が出席。共産党、社民党、民進党、生活者ネット、などの各政党から市民団体、組合関係など、多彩な人が一堂に会し、野党連合の選挙戦の展望や、街頭宣伝の可能性や、世界情勢国内情勢、市議会の様子などを語り合い、民進党の県会議員の集いや、ネットの街頭宣伝や、共産党の催しなどの予定を並べて参加者を確認し、民族派を自称する一人は沖縄の大城さんの釈放を求める署名を集めるという、本当に驚くような情景が実現していた。これが、このまま育って行けば、続いて行けば、日本も世界もまだ何とかなるかもしれない。イスラエルのダニさんの本を貸してもらって帰って来た。日曜の九条の会までに読んで、返さないと。

あ、その署名ですが、ネットでもやっているので、ぜひ。

https://www.change.org/p/%E5%B1%B1%E5%9F%8E%E5%8D%9A%E6%B2%BB%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%89%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%88?recruiter=599033522&utm_source=share_petition&utm_medium=twitter&utm_campaign=share_twitter_responsive&pt=AVBldGl0aW9uAJmolQAAAAAAWGtkLMmb8Q43ZmRmODRlMQ%3D%3D

◇うう、それにしても私は今年こそは、国文学者らしいブログにすると、ひそかに決意していたのですが、何もかももうとにかく、田舎の家が片づいてからのことだなあ。

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カツジ猫