これも老化か。
◇さっぱり体重が減らないので、やけになって先日、なじみの喫茶店でどでかいフルーツパフェを注文した。豪華に果物やアイスが盛り上がったそれを食い始めてすぐ、あらちょっとヤバいと思った。もともと私はこういうのを食べるのが上手な方じゃないが、それでも年をとると、まだまだそれほどではないと言え、緊張した作業では微妙に手が震えることもある。
別にそれで食えないとか危ないとかいうまではまだないのだが、漠然とあまり遠くない未来を予感した。老人になるということはって、すでになってるけど、山盛りのパフェを食べるのに、ちょっと決意と冒険心がいるのだなと。あるいは、たしか新井白石の父親が言ってたことじゃないが、若い時はただの失敗でも、年を取ったら同じことをしても耄碌したと言われるから特に気をつけるべきだというのと同じで、若者がパフェやかき氷の山を崩してこぼしても、本人も他人もまったくどうも思わないだろうが、年寄りだったら少なくとも本人は、あー、年だと思うだろうなと。
パフェやかき氷は、今にも崩れ落ちそうに盛り上がった、あの危うさが魅力のひとつなのだが、老人社会向きには、もうちょっと平たい安全なパフェが、その内出現したりしないだろうか。それともあれを心おきなく食べるのは基本的に若い者の特権なのだろうか。
などと思いつつ、まだ当面は大丈夫そうなのを確認して、いちごやパイナップルののっかったアイスクリームを賞味してきた。
◇もうさ、これ絶対に笑ったり面白がったりしてる場合じゃないことはわかってるんだけどさ、首相がTPPに反対などと私は一度も言ったことはないと、人前も人前、国会の答弁で、「きっぱり」断言したというのは、いくら何でもひどすぎないかい。山本太郎議員が首相のことを「毎日がエイプリルフール」と言ってるらしいが、まったくもう、国民というか人間が、数日か数か月かしたら、前のことはすべて忘れるとでもマジで思ってるんだろうか。人間性とか誠実とかいうことはもうとっくに期待してないにしても、その判断力の低下は恐すぎる。ネットではさっそく話題にされてるが、こんなことで自国の首相を笑いものにしなきゃならない国民って、不幸だしみじめだ。せめては、もうちょっと程度の高いことで、バカにしたいよ。
◇前から思ってたんですがね、ネットで最近、まあネトウヨと言われる人たちとかが、閣僚や首相の失言や暴言が批判攻撃されるたびによく言うのが、「一部をとりあげて騒ぐけど、全体の文脈の中で見たらそんなにひどい言い方じゃない。こうやって一部を抜粋するのはよくない」ということです。
だけど、私は、これを、今の首相を支持する人たちが言うのは、何だか片腹痛いのよね。文脈を読め、全体で読めとか言うけど、そもそも首相の常套手段の一つというのは、「そこだけ聞いたらもっともらしい」ことを、自分の、かねての、全体の構想や方向や信念とは、まったく何の関係もなく、その場しのぎで言うことでしょうが。
一時期、あれは時代のせいか何だったのか、学生たちの文章表現能力が妙に低下していた時代があって、その当時、非常勤先の大人数の授業で、何百人かのレポートを読むんですが、何を言いたいのかどうつながるかが、まったくわからない作文を、大量にたてつづけに読んでいると、何だか息が苦しくなって、「み、水…」という感じで、そのへんにあった漱石とか芥川とか幸田文とかの本を開いて文章を読んで、「はあー」と息継ぎをしていたもんです。しかし首相の答弁は、あれよりひどくて、いろいろずっと聞いてると、言語中枢がやられそうになって来る。
意味不明とか支離滅裂とか理由はいろいろあるんですが、とにかく「口から出まかせ、その場しのぎ」という、政治家には一番あるまじき発言を平気でぺらぺら口にするのがすごすぎる。
それで世間が一応はだまされるのがまた情けないんだけど、まさにヒットラーだかゲッペルスだかが言ったように、あんまり途方もない嘘だと、まさかと思って皆油断してだまされて見逃すのですよね、あれは。
この手の発言を首相がくり返すたびに、いつからか私は、「人が忙しいと思ってからにもう」と、つぶやくことが多くなりました。
自分でも何が言いたいのかわからず、そればっかりつぶやいていました。
そして、だんだん、自分の言いたいことがわかって来たのは、私も含めて、日本国民全体は、生活も苦しいし、いろいろあって大変忙しいから、政治的なことや国会の動向や、法案の中身をじっくりチェックしてるひまなどないわけで、結局、国会中継や新聞の見出しをちらと横目で見て、「そういうこと言ってるのか」と判断することがどうしても多くなる。
本当は、それでも大まかなことはわかるものです。政党にせよ個人にせよ、そう全体としての党や自分のしてきたこと、やろうとしていることに、そぐわないことは言わないわけだから。普通は。これまでは。
◇アベ政治の特徴の一つは、これまできわめて普通だった、その常識をこわしたことです。ちょっとだけ、一部だけ聞いたら、まったく誤解してしまうような、その場しのぎの嘘を平気でぺらっと口に出す。新聞やテレビが切り取って報道すると、まともで悪くないと見えることしか言わない。
このやり方は毎回同じで、私はそのたびあきれてましたが、それがとことん行きついたのが「一回もそんなことは言っていません」なわけですね。そこまで言っても見抜かれないと、これまでの蓄積で自信持ったんでしょう。
国民は忙しいんだから、莫大な給料もらって法案作ったり審議したりしている大臣や議員たちと、同じぐらいの時間なんか政治ウォッチングしてられません。だけど、アベ政治っていうのは、四六時中見張って、全体をこっちが把握してないと、言ってることが何一つ信じられないという点で、きわめて国民を忙しくさせるし、時間をムダに使わせる政治なのよ。
ヒラリーだってトランプだってサンダー
スだって、訴え方や言い方は工夫もするし粉飾もするだろうけど、自分の主張はごまかさないし、主張したことは実行しなきゃならないと知っている。民主党だって共産党だって、以前の自民党だって、それは最低の基本だった。
それをぶちこわしてるのが、今の首相です。私もそろそろ気づいたんだから、皆もわかりはじめているんじゃないかな。そうであってほしいよ。
◇あ、これは、TPP関係の資料が皆黒塗りで何もわからんという、ふざけた状況をもじった、のり弁当だそうで。もはやいろいろ末期症状かもしれない。楽しいけど(笑)。