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ごめーん、前の書き込みの続きです。

(前の続きです。)
たとえば、これも先日衝動買いしたヤスミナ何とかって作家の「テロル」は、中東の裕福な夫婦の奥さんがいきなり爆弾テロやって当然本人も死んじゃって、残された夫がその謎を解明する、というものなんだけど、もちろん現代の話だしミステリでもないけど、ある意味謎解きでミステリだよね。

作家はヤスミナという女性名だけど男性で、女性名の方が自由に書けたとかで、ちょっと土佐日記の時代みたいだが、中東の人で言ってみれば現地からのレポート、現地の人の証言だ。
まあ、そういう風に小説を読むのも微妙にまちがってるのはわかってる。でもこの間からずっと、ちびちび読んでるアップダイクの「クーデタ」とか、アフリカのどっかの国家の政治家が主人公で、そこを舞台としてるんだけど、何だか読んでて「しょせんアメリカの作家が書いてるんだもんなあ」という気ののらなさがあるのは否めない。
だいたい昔「走れ、ウサギ」を読んだ時からアップダイクって日本の自然主義みたいと思ってあんまり好きでもなかったのだが、「クローディアスとガートルード」読んだときも、もとにした「ハムレット」の世界が感じられず、やっぱりアップダイクだなと思ったのもあり、今回は私がアフリカを知らないのでわからないが、やっぱりアップダイクなのかもしれないと思うと、話にのめりこめない。それでもちびちび読んでる分、かなりその作品世界にもなじんでしまったが、「これがどれだけアフリカなのか」という疑いがいつも心にわだかまってる。

ベトナム戦争の時でも私は「地獄の黙示録」を見ても、「こんなに深刻に象徴的にとらえなくても、ベトナム戦争って、もっとふつーうに、わかりやーすく、悲惨で不合理で理不尽なもんじゃないのか。それをこんだけもってまわった手法でないと伝えられないと思うなんて、現場を知らない、そして知らないということがわかってる人間の劣等感なんじゃないのか」という感じがした。
その後、実際に戦争に参加したオリバー・ストーンの手で作られた「プラトーン」を見て私は納得し満足したのだが、あの作品はわかりやすくて、いい意味で軽かった。現場で体験した人の感覚って、むしろそういうもんじゃないかと思う。

私はソ連崩壊がまだ小説や映画になっていないのが残念なのだが、生きてる間には名作が生まれて読めるだろうと期待している。でもそれがまだ書かれないうちに、さきがけて、このようなアラブやイスラエルやテロに関する映画や小説が登場しはじめたのは、それはそれでありがたいし、うれしい。

それとこの「テロル」だけど、女性テロリストを扱っている。奥さんは冒頭死んでるから、思い出にしか登場しないけど、それは魅力的な人だ。ちょっとこの夫婦の姿は映画にもなった「ナイロビの蜂」も思い出させる。自分のまったく知らなかった妻の姿を知りたいと願い求める夫の苦しみが切実に迫って苦しい。
これまで、女性テロリストに関するドキュメントを二冊だけ読んだが、一冊は彼女たちにインタビューもして克明に調査しているのに、何だか彼女たちを性格に欠陥がある不幸な人たちのように描いていて、ほんとにそんなものかなあと私は疑問だった。テロがよくないことなんか今ではあたりまえになってるが、実はそうあたりまえでもないと私は思っている。そして、ゲバラだのパンチョ・ビラだの、ついでに言うなら毛沢東やレーニンだって似たような戦いをしたのに、それは別に異常でも不幸でもない人間の姿として描かれているところに私は女性(と男性)への先入観や固定観念を感じてしまう。

もう一冊の本は、はっきり自爆テロをする女性たちは洗脳され脅迫されてやっていたのだとしていて、まあそういう面もありはするのだろうが、それ言うなら男性の場合だってそうだろうし、死ぬのが恐くておびえていて、それでも周囲の状況がやむを得ず、大義のために犠牲になったというのなら日本の特攻隊だってまさにそうだろう。同じ筆致と同じトーンで、特攻隊の若者たちも描いて、語ってほしいものだ。
(次に続きます。)

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カツジ猫