さもあらん。
◇今日は、20日の講演会の感想や反省を話し合う会にひきつづいて、むなかた九条の会の定例会。うー、もう身体がもたんわ。
講演会のアンケートは82名ほど出して下さっていたそうで、持って帰った方が、もうさっそくまとめて下さってました。
小林さんの話に批判的な内容がひとつもなかったというのが、すごいです。単にうのみにするのではなく、それぞれに、かみしめて、お人柄にも打たれている様子が伝わって来ました。
少し聞き取りにくかったというのもいくつかあって、マイクのせいか、小林さんも少し早口だし疲れておられたのか、と言い合っていると、一人が毅然と弁護して、「あの過密スケジュールを身体をはってこなしておられたら、もう限界に近いはずで、聞き取れない部分があったりするのは当然だ。それだけ無理もしておられるのだ」と親身になって言っていたように、皆が小林さんに何かしら魅了されているのが伝わりました。高潔な覇気のようなものが、たしかに聴衆に届いたのだと実感します。
講演前に椅子を用意しましょうか、とお尋ねしたら、断られて、私に「あなたも大学の先生ならおわかりと思うけど、しゃべる時には立ってないと、聴き手に、のしかかるようにして迫力で圧倒しないといけないから」(ことばは、この通りではありません。そういう意味のこと)と、おっしゃったけど、そういう気迫で連日、相手に向かい合っておられるのだと思います。
◇そして、手前味噌になりますけれど、定員オーバーでいろいろご迷惑をかけたのに、運営に関しての主催者への文句も全然ありませんでした。ほめたのもありませんでしたが(笑)、私はそれでいいと思うし、その方がうれしいです。「あれだけ前もってシミュレーションして準備していたのに、始まったらそれを変更することばかりだったけど、それでもあれだけ予測して準備していたからこそ、その変更にも対応できたと思う」と一人が言っていたのはその通りで、運営や主催者はまったく目立たず、でも文句も出ず、小林さんの講演が全面的に好評だったというのは、あえて言うなら私の理想のかたちです(笑)。
私は今日の会議でも言ったのですが、各政党や市民団体のそうそうたるメンバーや実行委員会の中心にいた人たちが、まったく裏方の下積みの仕事を全力でこなし、互いへの不信感やかけひきも皆無の、こんな協力関係は学生運動時代から含めて、体験したことがありません。この誰もが無私の気持ちで動いていた雰囲気は、小林さんや参加者にも何らかの快さとなって伝わったのではないかと期待してしまうぐらいです。
これは、この一年あるいはもっと前から、さまざまな活動や行事をいっしょにやって行く中で、積み上げられてきたものです。節を曲げない一匹オオカミや、組織に忠実な人たちだからこそ、それぞれの信念や個性は強く、共同作業は難しい。それがここまで、うまく続いてきたのは、当然なのか奇跡なのか私にはよくわかりません。わかるのは、これを「野合」とか「九条信者」とか表現する人たちの薄っぺらで大ざっぱなことばとは、あまりにもかけはなれた、精密でぶ厚い織物のような、複雑で精緻な実態です。
◇とは言え、今後の選挙戦の中で、これをどのように維持していくのかは本当に大きな課題だと思います。やりがいはあるけれど。
今日の九条の会で、共産党の議員さんが「北海道の共産党の議員から聞いた話」として言われたのが、「池田まきさんは、もともと民主党の候補で、戦う相手だった人。それを支持して票を読むのが、最初は頭ではいくらわかっていても、もうどうしても身体が動かなかった。でも次第に、これがアベ政治を倒す戦いだと実感できて、変わってきた」ということで、さもあらんと思いました。
また山口で野党の統一候補になった纐纈(こうけつ)先生は、「候補者としては最高だけど、とても引き受けて下さるはずがない」と皆思っていたけれど、思いきってお願いしたら、「自分は学者だし論文も書きたい。しかし、こういう情勢の中ではアベ政治を倒すためには態度で示さなければ」と、迷うことなく決意して下さった由。
研究者のはしくれとして、それがどれだけ大きな犠牲を払うことか、私にはわかります。それでも小林さんや「九条の会」を立ち上げた加藤周一さんのように、学者としての未来を捨ててでも、別の意味での学者としてのあり方を貫こうと決意する人たちが生まれているのだと感じます。
このような人たちを孤立させてはいけないし突出させてもいけないし悲劇の英雄にしちゃいけないし見捨てては絶対いけないと、痛切に思ってしまいます。
◇一年前、宗像で最初の、諸団体や政党が共同して200名の集会を成功させたときのスピーチで私は、当時博多座で上演されていた「レ・ミゼラブル」を引いて、「あの話の中で市民は学生を見捨てた。私自身が学生の時はさまざまな方針のちがいから、味方の中で対立してしまった。今、国会前でがんばっている若者たちを私たちは決して見捨ててはいけないし、今日こうやってつないだ私たちの手を何があっても離してはならない」と言いました。
今、若者たちは見捨てられてはいないし、私たちの手もつながったままです。しかし、そうやって戦いが広がるほど、たとえば小林さんや纐纈さんのように、「見捨ててはならない」と思うほど、がんばってくれている人たちが増えて行くのは、私のようなぐうたらの意気地なしには、うれしい反面、切ないことです(笑)。そうなのよ、私は昔から愛するものや守るものが増えるのは、しんどくって、きついから、基本的にいやなのに、どうしてか、それがどんどん増えていくのよ(笑)。
◇それと関係あるよなないよな話ですが、今日の夕方、お隣のご夫婦が庭先におられて立ち話していたら、親族のご夫婦が、15年飼った犬が亡くなって、ものすごく落ちこんでおられるとか。「私はうっかり笑ってしまったら、恨まれてねえ」と、ご主人が言っておられました。本当に深刻で病院にも行かれたぐらい、夜も眠れなくて、息子さんも心配しておられるようです。
「今度会ったらどう言ってなぐさめたらいいものか」と奥さまも悩んでおいでのようでした。
「自分が先に亡くなって犬が残されるより、犬にとっては幸福かもしれないと思うしかないですよね。でも、もうそれだけ悲しんでおられるなら、何を言ってもだめかもしれませんね。何を聞いても傷つかれるかもしれない」と言うと、奥さまは「それなのに、この人笑うんだから」と、ご主人に言って、ご主人は「だって」と困っておられました。
ちなみに、そのご夫婦も長く飼っ
ていた犬をだいぶ前に亡くされていて、とてもかわいがっていたし、ご主人は優しい方で、うちのカツジ猫はなぜかそのご主人が好きみたいなのです。優しげな男性が好みらしい、わっかりやすい猫なので(笑)。
私たちの話し声が聞こえたのか、カツジは庭に出てきて、金網の中からうみゃあうみゃあと鳴いていました。
◇久しぶりにのぞいたけど、池田清彦先生のツイッター、あいかわらず面白いです。えー、首相はアメリカから30兆円の武器を買ったのですか?
https://twitter.com/IkedaKiyohiko
◇いろんな行事をちびちび紹介して行きます。5月27日(金)の午後6時半から、原水禁の主催で、福岡の西日本文化会館で憲法講演会が開かれます。講師は元衆院議員の今川正美さんです。参加費は500円。行けそうな方はぜひどうぞ。