せかせてもいかんか
夜の仕事中は、小さいプレーヤーでジャズとか聞いているのだが、久しぶりに荷物の中から見つかった「イル・ポスティーノ」のサントラがあったので、今夜はそれを流している。何だか恋人(いないけど)に会いたくなるような、なめらかに切ない甘い音楽だ。
キッチンの窓辺においてある小さなシクラメンの鉢は、この家が建ったとき、お祝いにもらったものである。ウサギ年だったから、もうかれこれ十年になるのか。
小さい鉢のままなのに、いつも元気できれいな花を咲かせていたのに、少し前に黒い粉みたいな虫がついて元気がなくなり、葉っぱもほぼなくなった。悲しい気持ちで、一応薬を噴射したり枯れた葉や茎を取ったりして様子を見ていたら、次第に一枚ずつまた葉が出てきて、毎朝やる水もぐいぐい吸うようになり、今やみごとに葉が左右に広がっている。そろそろ意地悪して回転させて、日当たりのいい方に背中を向けさせて、四方に広がるようにしてやるか。
ここまで来たら、そろそろ花も咲かないかと、つぼみがのびるのを見つけようとしているのだが、まだその気配はない。あまり期待しすぎて、ジト目で見てるとプレッシャーかもしれないから、そしらぬ顔をしておこう。