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そっとしといてやれよ

まがりなりにも一応国文学者だから、新元号について何か言ったら、専門家の見解みたいになっちゃって、変なプレッシャーを人に与えるのもやだから黙ってたけど、私は新しい元号の「令和」って、もう見た瞬間から大好きである。

バカな首相が名前の一文字を入れるんじゃないかって噂もあったから、それがないだけでも、ほっとしたというのもある。でも、その安堵感をさしひいてもなお、字面から響きから自分でもいいのかと思うぐらい、とても気に入ってしまった。言っとくけど、国文学やってる人間の意見なんかじゃないからね。ただのミーハーなばあさんの、ただの好みの問題である。

もっとも最初は「りょーわ」と思ったんだよねとっさに。「れいわ」と聞いてちょっと修正するのに時間がかかったけど、どっちにしても別に悪くない。
平成も別に嫌いじゃなかった。だいたい年号なんてそんなに気にならなかった。でも、のっぺり無難な平成に比べると、令和って、きりっとしてるし、攻めてる感じだし、ちょっとおしゃれだし、私の好みに合う。

選んだという万葉学者の中西進さんも、直接の関わりはあまりないけど、いっしょのお仕事をさせてもらったこともあり、学者としてもその他でも、尊敬してるし好きだし、万葉集ももちろん好きだし、これで国文学への関心が高まるなら、むろんそれはそれで嬉しい。

嬉しくないのは、テレビがないから知らないけど、首相や政権やNHKの岩田何とかいうおべっか解説者が、この元号をネタにあれこれつまらんことを言ったりしたりしたことで、もうやめといてほしい、イチローに国民栄誉賞をやろうとしたのと同様、おまえらの汚い魂胆できれいなものも汚れるだろうがと、それはめちゃくちゃ腹たって、せっかく好きな年号のイメージが悪くなるのがいやだなあと、真剣にイライラしてた。

それに対する反動か何だか知らないが、「命令の令」が入ってるからイヤとか、さんずいをつけたら冷になって冷たい感じとか、しょうもないケチつけてる人たちにも、これまた腹の底からうんざりする。

私がとっさに、「あ、きれい」と思ったのは、令夫人、令息、令嬢などからの連想だったかもしれないが、あれ見てとっさに「命令」しか浮かばん人って、よっぽどふだんから命令したりされたりするのが好きなんだろうと逆に思うし、さんずいつければ冷たくなるというのは、言われて気づくと、そうか私が好きな理由はそれもあるなと思いあたった。
暑苦しい、暖かい、べたべたした熱さより、冷ややかでそっけない冷たさの方が、私ずーーーーっと好きだもんなあ。そのきりきりしゃんとした「令」の字を、やわらかい「和」が中和してるのなんか、ほんとに、こたえられんぐらいの快さじゃないか。

まあ好みは人それぞれでしかたがないけど、とにかく私のような者もいるのだから、このことを変に天皇や政権の宣伝に結びつけるあざとさはやめてほしいし、それがいやだからって、妙な理屈でケチつけて騒ぐのも、ほんといいかげんにしてほしい。私の好きな「令和」をごちゃごちゃ政争の具にしないで。どっちみち、たかが元号じゃないの。ほっとけばいいのよ、そっとしといて。

なんかもうこの状況って、唐突だが、キム・ヨナと浅田真央の対決に妙な政治意識を持ちこんで、ぐちゃぐちゃにした人たちを思い出すのよね。あれも本当に不愉快で、どーでもいいことに政治的意味をくっつけて、汚して行くのがいやでしかたがなかった。ほんとにもう、あの二人と同じで、不幸な年号だなあと思う。

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カツジ猫