ていねいに、どうぞ
これももうちょっと古い話になっちゃったが、来るべき衆院選の東京選挙区の候補者のことで、自民党と公明党がもめていて、分裂までは行かないにしても亀裂が生じ始めているようだとか。さ~すが、絶対多数を確保してると仲間割れもできちゃうほど余裕なんだ。
こんなの何がどうなっても私にはどうでもいいようなことだけど、岸田首相がこの事態に、公明党に「ていねいに説明して理解を求めるように」と指示したとかいう話には、へそが茶をわかした。
言葉狩りという語句があるが、岸田首相の特徴はアベ氏もしなかったほどの「言葉の虐殺」で異次元とか新しい資本主義とか、まったく中味のないことばをひきずりだして、たなざらしにして、無意味にして殺して行くという点で、天才的な才能を持っていることだ。まったく今、日本神話をモチーフにしたファンタジー小説を(あくまで趣味で)書いていて、古事記あたりを変に読んでるから連想してしまうのだが、冥界でぐれた女神イザナミが夫のイザナギに向かって、「一日千人、あんたの世界の人間を殺してやる」と言ったのに対して、イザナギが「じゃこっちは一日千五百人子どもを産ませる」と応じたように、ことばを使う仕事をしている身としては、こんな首相が空疎にして殺し続けることば以上に、ことばに命を吹き込んで、力強い、実態のある、立派なことばを育ててやるしかないなと、変な決意をしたくなっちまう。
中でも一番岸田首相が、痛めつけてレイプして原型をとどめなくした最大の犠牲者は、「ていねい」ということばだと思うのよね。ずっと以前、さぞかし自分らはごちそう食ってるだろう官僚か政治家のどなたかが、庶民の食生活をもったいなくもご心配下さって「もやしは安いし栄養があるから活用してほしい」とか何とかのたまったのに、聞いててあまりにムカついて、それ以後どんなにおかずに困っても、二度とモヤシを買う気になれない私だが、同様に最近では「ていねい」ということばを耳にしただけで、あのうすっぺらい、中味のないお顔とお声が浮かんできて、もうこのきれいなつつましい日本語は私の中でミイラ化して白骨になって消えかけている。南無阿弥陀仏と、今年のお盆には線香たいてお見送りしたいぐらいだ。
そのかわいそうなことばを今度は、公明党を相手に使うってか。まあせいぜい、がんばって下さい。ことば殺しの、恥知らず。
その古事記からの連想じゃないが、今朝は今朝とて、少子化問題の日曜討論会をラジオでやってて、まああいかわらず高齢者から金をむしりとって若者に渡す(ほんとに渡すんかいな、そこが問題だ)話で盛り上がってて、それはまた書くけれど、最初に発言した政府か自民党かの代表が、「少子化問題については、これかれあれこれの政策を打ち出している。これはどれも数年前にはまったくなかったことです」と胸をはっていたのには、ぶっとんだ。
さすがに誰かにつっこまれたんだろう、少し後では、「もちろんもっと早くやるべきで、そこは反省する」みたいなことを言ってたようだが、最初は絶対そうではなくて、本気で自信持っていばってた。としか聞こえなかった。
本当に、こんな発想なんだろうか、政府のお歴々は。
ネットでななめに読んでても、「今ごろ少子化にとりくんでももう遅い、野党がいろいろ提案したのを皆相手にせずふみにじって無視してきたアベ政治が、怠けまくってた、そのツケが今とりかえしのつかない状況を招いてる」、っていうのが多くの識者の常識で、国民の実感なのではありますまいか。
その怠けまくって何もして来なかったのを、逆に業績扱いして「数年前にはなかったことを今やっている」と、いばるかね。竹中平蔵が、「ただで勉強できるとなると、学生は怠ける」と、これまた腰が抜けそうな発言をしていたが、今の指導者たちのいろんな感覚って、いっぺん全部虫干しにして、日光消毒でもした方がいいんじゃないか。そのくらい、腐ってる。
いや、世の中には、もっと美しい、力強いことばを使ってる人たちもちゃんといる、という話もしたかったのだが、夜もふけたこととて、それは明日に回します。皆さま、希望は捨てないで(笑)。
これも明日また書きますけど、今日は近くの公民館で「杜人(もりびと)」という映画を見てきました。最近トシのせいで体調に自信はなかったし、そこそこ長い映画でもあって、最後の方では首も背中もバキバキのガチガチになりましたけど、その分、心と魂は柔軟になりよみがえり、庭造りやら環境問題やら生き方やら、いろんな点で実に得るところが多くて、大満足しました。思わず金もないのに、パンフレットとCDまで買っちまいました。
多分、自主上映で広まるのだろうと思うけど、お近くで見る機会があれば、万難を排してごらんになって下さいませ。「持久戦ですよ」と語る造園家の方をはじめとした、登場してくる方々のお顔が実にもう、どなたも気高い清々しいお顔で、見ているだけで目の保養になります。樹木や大地の美しさは言うにおよばず。そして(原発は人災すぎるから別格として)、ここ最近の自然災害の数々の持つ意味もよくわかるようになった気がします。これについてもまた書きます。あーあ、ほんとに時間がない。
庭のバラやナデシコを少し切ってきて、新しく飾りました。ハツユキソウは元気に咲いていて、これはなかなか使えそうですね。