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とんでもつながり

映画「ペリリュー」を見て、衝動買いした原作のコミック十冊が届く。それを一気に読み上げる(笑)。

注文した後で、「あー、漫画の方じゃ、私が映画であんなに魅了された極彩色のパラオの風景がないんだよなー、モノクロだから」と、ちらと思ったりした。でも、届いた原作は、その代わりに、映画では省略されてた細かい描写や挿話がぎちぎちに詰まっていて、これはこれで充実していた。ラスト近く、映画で私が一番こみあげるものがあった場面は、実は原作ではちょっとちがっていたのだが、その方が納得はできるし、映画の方の変更もそれはそれでよかったと思う。

人肉を食べる話もちゃんと書かれていた。私は『アンデスの聖餐』(飛行機事故で遭難した人たちの話)も昔読んだし、大岡昇平の『野火』を子どもの頃に読んだときも、人肉食をそんなにタブーとも感じなくて、そんなに何をこだわるんだろうと不思議だったぐらいの、今思えばぶっとんだ感覚の持ち主だった(これは多分、私が動物すべてを、どこか人間に近く思っていて、豚や牛を毎日食べてるのに、それとどこがちがうのみたいに感じていたのも原因だろう)。
 成長するにつれて、それがどれだけ普通の人には抵抗があるかも、それなりにわかっては来た。そして、前にも紹介した、かつて「むなかた九条の会」で開いた講演会で、パラオで戦った体験者の人が、いかにもあっさり「人肉は食べたりした人もいただろう」と述べたのも、印象に残った。「ペリリュー」を読んであらためて、それがそんなに騒ぐことでもないほどに、当時の現地の飢えはすさまじかったのだろうと実感した。

この飽食の時代、想像するのも困難な、こんな実態は、しかし、今の高市政権のような、むぞうさな、人のいい好戦と、無防備すぎる過剰防衛とで、とことこ戦争の道に進んで行けば、あっという間にたやすく再現する地獄図会だろう。

もうひとつ最近読んだ中で、びっくりしたのは、『労組日本プロ野球選手会をつくった男たち』という本で、組合の創始者の中畑清(以下敬称略)や、ストライキを決行した古田敦也などを中心に、歴代の代表たちが選手たちの権利をかちとるための組織を、どうやって生み出し育て、守って来たかを、克明に知ることができた。今、話題になっている、そして普通に保障されているFAその他の条件や制度をかちとって、選手たちの人生や生活をよいものにして行くために、時には自らの成績や業績も犠牲にして、すぐれたプレーヤーでもあった彼らが、どんなに奮闘し献身し、団結してきたかを、まざまざと見せられて、息がつまる思いがした。その過程にはたとえば岸信介の秘書だった人の協力など、想像もつかないいろんな要素が関わっていることも、印象に残った。メジャーに早く移籍した野茂英雄が、先行するアメリカの選手たちの組合のあり方などを伝えた功績など、さまざまな歴史が新しい風景となって見えて来る。

東北の震災のときに、選手会会長として苦労した新井貴浩の活躍も胸を打つが、彼はまた、WBCのあり方について、米国と交渉し、要求を行って、一定の成果をかちとった功績もある。それだけ堂々と大きな存在と戦った彼の姿勢には、幼い日に小学校の教室の文庫で読みふけった「はだしのゲン」のコミックが、大きな役割を果たしたのではないかという。
 原爆投下に対する米国への怒りをほとばしらせて、ひるまなかった主人公ゲンの記憶は、正義感の強い悪ガキだったと当時の担任(被ばく二世)が言う、新井(彼も被ばく三世)の心に刻まれていた。それは通り一遍のものではなく、後に担任の紹介で、原作者の中沢啓治を肺がん治療中の病室に訪ねて会い、会話し励まされてもいる。中沢は、カープからタイガースに移った新井を怒りながらも(笑)、新井がボロボロになるまで読んだ「はだしのゲン」の本を見て、「作者冥利につきるのう」と喜んだそうだ。

カツジ猫のタマシイが書いているように(笑)、昨日たまたま出先でホークスの近藤選手のトークショーを見た。今、選手会の会長はその近藤選手だ。その人柄は日ハム時代に少し知っているだけでも私は好きだったが、今年はチームだけではなく選手会全体の会長としても大変だろうが信頼している。
 中沢啓治が愛した広島カープも今はいろんな問題で、ゆれている。さまざまな移籍問題やその他で苦しむ選手やチームも多い。巨額の報酬を得る者もいるとは言え、彼らもまた経営者と雇用者だ。これまで築かれてきた多くのものが、今後も守られ、よりよいものになって行くことを願わずにはいられない。

最後にまたミーハーなことを書くと、そのトークショーを見たあとで、ついまたホークスの映画「ホークススピリッツ」を近くのシネコンで見た。最初見たときはあまり気づかなかったが、あらためてベテラン中堅新人の多彩な選手たちを、まるで劇映画のように、うまい構成でわかりやすく見せてくれていて、これなら初めて見る人でも、わかりやすいだろうなと感心した。だが、その選手たちの群像を見ていて、チームの選手会長周東選手の強靭さとしたたかさは言わずもがな、牧原選手のタイプはちがうがやはり激しさと意地の強さはもちろんだし、多分次期の選手会長候補にもなっていただろう、川瀬選手や柳町選手にしても、川瀬選手にはまったくの偏見だが私の故郷でもある大分県特有の素朴な底力があり、柳町選手には、もしかしたら朱子学の理想である聖人の中庸っぽい得体のしれない広がりがあり(何のことかわからないだろうついでに、つけ加えると、同じ朱子学の分類では周東選手は狂、牧原選手は狷だろうなあ)、結局これらの中で一番ピュアで純粋で素直なのは、チームの次期(というか現)選手会長の栗原選手なんだよなあ、どう見ても。他の選手には、それぞれある、いい意味での「悪い」面が、彼にはまったく見あたらない。こんなのは天性のもので、急に苦労や立場によって身につくものとも思えない。大丈夫なんだろうか。私が心配したって、つくづくもって、しょうがないが。

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カツジ猫