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どうせ紅茶はさめたので。

◇ゆうべは夜更かしして、ロシアの女性兵士の映画「バタリオン」を見てしまった。これってあれかな、あのアメリカのホラー映画の「バタリアン」は、この女性部隊の名前を知ってて、おちょくりもあってつけたのかな。「原爆の子」のモデルの白血病で死んだ貞子さんとか、アルジェリアの抵抗運動で拷問を受けたのが大きな社会問題になった現地の少女ジャミラ・ブーパシャとか、それぞれ名前をえげつないホラーの日本映画の化け物に使われている。それは私には多くの人に気づかれないマイナーな趣向であるだけに、許せない冒涜のような気がして戦慄するのだが、これももしかして、その種の意図があったのだろうか。

「バタリオン」は、それでなくても、時代や国の背景を感じさせる、驚きや哀しみに満ちていた。どこまでが史実なのかわからないが、これだけのまさに戦闘をめざした女性部隊が作られ機能していたことを、私はまったく知らなかった。そして、ケレンスキー政府下のロシア革命がはじまって流動的な時代、ドイツとの戦いもいつか内乱に飲みこまれ、女性部隊もなくなったのみか、それを率いたトップの女性軍人(すごい迫力の名演だった。がっちり太って、でも美人で)も、後に白衛軍(反革命勢力だよな。こんな名前も、ショーロホフの小説以来だよ、耳にしたのは)に協力したかどで処刑されたというのも、いろんな意味で粛然とする。

◇で、今朝10時までにこのDVDを返さないと延滞料を取られてしまう。8時過ぎに起きたので余裕じゃわいと思って、燃えるごみの袋をまとめ、たまった新聞を読み、ここ数日コーヒーを飲みまくりすぎだから今朝は紅茶にするかと優雅にミルクティーいれて果物とレーズンのヨーグルトがけや野菜サラダを作ってパンを焼いたとたん、10時まであと15分なのに気がついた。

250円かそこらの延滞料にこだわるのもアホだと思いつつ、勝手に身体が反応して、ごみ袋を車に積んで飛び出し、途中でごみを出して、所定のコンビニのボックスに59分ぎりぎりにDVDを放りこんだ。どうせ紅茶もパンももうさめたからと、そのままレンタルショップに行って、昨日返した「真夜中のパーティー」をまた借りてきた。

朝食食べながら見直したが、やっぱり面白いなあ。4000円払って買うべきだろうか。
最初にどどっと登場人物が紹介されるのをあらためて見ると、一番ぶっとんだオネエ風のエモリーが、実はりゅうとスーツを着こなして贅沢な生活をしてるのがわかるし、主人公のマイケルの恋人ドナルドは、外見もきれいで皆の中では一番冷静でまともで、私も昔見たとき好きだったし、むしろこんなに理想化していいんだろうかと思ったりしたが、今見ると、それはそうなのだが、彼はきれいではあるが、顔も身体もどこか変にバランスが悪く、しぐさも普通のようで細かくゲイっぽい。これが演技や演出で作ってるなら(多分そうだ)逆にすごい。パーティーへの闖入者の、ストレートの友人アランもまっとうと言うわりには、外見や表情そのものが、どことなくどこか異常な感じがする。こういうとこが計算しつくされているのかもしれないのが手ごわい。

そもそも「ダロウェイ夫人」の昔から、パーティーの準備と成功って、戦争に匹敵する日常の勝負事のようだが、ゲイの誕生パーティーであっても、そのパーティーというイベントへの準備活動はやっぱり生き生きと細かく描かれて、それがまた楽しくもある。
知的なドナルドの対極にありながら、同じような安らぎを与えるのが、プレゼントがわりに買われて連れてこられた、金髪の真夜中のカーボーイ風のかわいい男娼というのも定番だけど、よくできている。

一同の知的でぴりぴりひりひりした会話の中で、この無垢かつアホの若者がソファで居眠りしてるのを見てると、ゆうべ友人と見たテレビの野球番組に出てたホークスの柳田選手を思い出した。つまらん番組で、ゲストに呼ばれた彼が眠そうにしてたのもあるが、決して彼がアホに見えたということではない。それどころか一部で言われているように、彼はめちゃくちゃ頭がいいか少なくともそれに匹敵する動物的本能的勘はすごいと思った。

◇テレビが家にないのでふだん見ないのだが、今年のプロ野球を面白おかしくふり返る毎年恒例の番組で、OBや現役の選手たちも出演していた。しかし、いろいろと実につまらない構成で、というか古色蒼然たる感覚で、いや朝からこんなくだらん話をしているヒマはないのだが、野球にもテレビにもさほど興味のない私のような人のために、ちょっと現状を認識してもらいたいので話しておく。

だいたい番組の多くを乱闘シーンに費やして、面白おかしく盛り上げようとしている(盛り上がってないけど)。そもそも今どき乱闘など少ないから、使えるシーンもなく大昔の映像を引っぱり出して長々と暴力礼賛賛美に走る。やかましいことは言わんが、もう現実にないんだから、それもう流行らないんだよ。見ててイタイとはまさにこういうことだと白けた。

私は浅田真央にも長嶋茂雄にも大谷翔平にも特に恨みはないが、明らかにバランスを欠き、他を無視して持ちあげまくり、その報道だけほめ殺しにたれ流すのは、本人にも周囲にもろくなことにはならないと思う。昨日の番組でも大谷に関する映像や報道が異様に突出し、しかもさほど新鮮なネタもなかった。出演している選手たちにも何の関連もない内容で、何かもういろいろと無駄遣いすぎる。

乱闘シーンと同様に古色蒼然いったいいつの感覚だとあきれたのは、球場の女性スタッフの胸の大きさなどの映像をしつこくたれ流して、選手たちにもコメントを求める構成。アメリカではケビン・スペイシーのような実力派の大物俳優までがセクハラ行為で葬り去られようとするほど、男性女性を問わず、この手の問題に対する目は世界で厳しくなっているのに、何だもうこの感覚は。慰安婦問題を討論する前に、こういう感覚について一億回検証しなおせ、マスメディアと国民は。

◇で、私が柳田って決してバカじゃないぞと痛感したのは、彼に対して大谷選手や女性の胸へのコメントを求められたとき、どっちもものすごく失礼な質問で私なら白けまくるか激怒して何言うかするかわからないと思うのに、彼はしらっと「(大谷選手の)ファンです」「それはやっぱり見ますね」と、ぬけぬけと相手が期待する通りの答えを平気で返していたことで、お見事としか言いようがなかった。ふだんのもしかしたらバカかもというイメージがあるから見逃されるが、どっちも、たいがい相手をバカにしておちょくりま
くったコメントとしか思われない対応で、いやこいつ、ふだんのイメージ作りも含めて、あなどれんと、つくづく思った。
ちなみに広島の菊池選手もCSでベイスターズに「勝てる気がしませんでしたね」とか、これまた周囲が聞きたいだろう答えをしっかり返していて、まあ本心であるにしても、こいつらそろって、ほんとにお客さんやマスメディアへのリップサービス徹底してるなと、あきれつつ安心しつつ感動した。

でも、こんなノリの番組を作って選手を浪費してる限り、野球に限らずスポーツの面白さやプレーヤーの心理の奥深さは絶対引き出せないだろうなと、絶望に近い確信も抱いた。

◇そうそう、今朝の朝刊で松尾貴史が、神戸で阪神大震災の復興記念に東北の山奥の樹齢150年とかのあすなろの木を切ってきて飾るとかいうイベントを批判してたが、まだそんなくだらん企画を考えついてるのかと、怒りで目の前が暗くなった。

https://mainichi.jp/articles/20171126/ddv/010/070/016000c

ここだけの話、私は九州新幹線の開通にあたって博多駅の構内に巨大な桜の木を切って来て飾った直後に大震災が起こって、記念行事がすべてパアになったのを、いまだに何かの祟りじゃないかという幻想から逃れられないでいる。
いっそ、復興に努力した人たちすべての首を斬ってどこかの広場に並べて供えたらどうよ。それと大して変わらんよ、この種のイベントのめざしてる精神は。

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カツジ猫