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はああ、もう。

◇田舎の実家に帰るついでに、近くの温泉に一泊して久しぶりに骨休めでもするかと思って出かけたところが、山の上でわりと寒い土地なのに、ホテルのクローゼットに浴衣だけで羽織がない。入れ忘れたなと思ってフロントに電話したら「すみません、まだ出してないんです」だって。そう言えば私はここには、いつも冬に来るので、夏や春秋のことはあまり知らないんだった。じゃしょうがないかと、エアコンを弱にして入れていたら、いつまでたっても暖かくならず、それどころか、だんだん寒くなるような。

よもやと思ってまたフロントに電話して、「エアコンは暖房にならないの?」と聞くと、「すみません、まだ昼間は暑いので、冷房にしてあって、切り替えられないんです」とのこと。まあたしかに昼間は暑いけど、温泉の観光客は昼間はそんなにホテルにはいないだろ(笑)。
私が寒がりすぎるのかなと思って、露天風呂に出かけたら、何と廊下もロビーもフロントのある玄関も、しっかり暖房が入っていた。

まさかそんなことになるとは思ってないから、暖かい服も何も持って来ていない。部屋には予備の毛布さえおいてない。しかたないから、薄手のジャケットとスカーフを浴衣の上から着て、スパッツをはいて、ロビーや廊下を夜中までうろついた。本当は部屋でゆっくり論文の原稿を書くつもりでいたのだが、そんなことどころか。よっぽど夜中にチェックアウトして、暖房の入る実家に帰ろうかと思ったよ。

◇まあ凍え死ぬほどの寒さじゃないので、早々にベッドに入って寝た。翌朝、朝食の時に見たら、他のお客も浴衣姿の人は誰もいなくて、洋服を着こんでいたから、やっぱり寒かったのじゃないだろうか。
連休明けでお客は少なくて、風呂にはゆったり入れたので、まあいいかと思って、翌朝も風呂に入って、実家に戻った。ちょうど、みかんという名の猫の命日がすんだばかりで、彼がいつも座っていた庭石のあたりが、背の高さほどの雑草におおわれていて、これも供養だと、そのへんの草を少し取ってみたら、管理してくれている不動産屋の友人が除草剤をまいていてくれたからか、この夏の猛暑のせいか、根性のない草たちで、ちょっと引っ張るとずぼずぼ抜ける。だんだん、やめられなくなって、1時間ぐらいやろうかなと思ったら、すっかりはまって、夕方まで阿修羅のように草取りをして、ジャングルのような庭全体を、わりとすっきりきれいにした。今度帰ったときに短いやつを抜いてしまえば完璧である。

しかし、ものすごい重労働で、絶対明日あたりは筋肉痛だろう。昼食も夕食もとらずに車飛ばしてさっき帰って来て、車に山積みした本の箱を下ろし、猫たちにエサをやり、カツジ猫のごきげんをとって、さてと今からごはんを食べる。

◇久しぶりに、その温泉町にある、猫が何匹も闊歩しているギャラリーにも寄った。地震以来初めてなので、店主の女性といろいろと話がはずんだ。ちょうどほしくて探していた、壁のフックがどんぴしゃに手ごろなのが売ってあって、さっそく買った。グルグルという名の、私が一番好きな最古参の鼻の白いオレンジ色の大きな猫が、私のお茶請けの鳩サブレを気に入ったのか、たくさん横取りしてくれてうれしかった(笑)。

さて、日付の変わらない前に、ごはんを食べなくては。

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カツジ猫