1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. ぴーひょろろ。

ぴーひょろろ。

◇先ほどばたばたと、お墓詣りに行ってきました。
今日は扇風機を片づけたのを後悔したくなるような強い陽ざしで、思わず夏の帽子をかぶって出かけてしまいました。
猫の缶詰でも持って行こうと思って忘れてしまったので、せめて冷たい水をたっぷりお墓にかけました。この墓には花活けも線香立てもありません。家から持って行った香炉に、殺された猫たちの数もわからないので、十数本の線香を立て、庭からちぎって行ったルリマツリの青い花を供えました。

墓石にずらりと刻んである、私がいっしょに暮した猫や犬たちの名の、ほとんどはもう死んでいます。何匹かいなくなったりして最期を確認できていない猫がいて、ひどい死に方をしたのでないならいいがと、今さらのように願うばかりです。それらの名を指でふれながら、苦しんで死んだ猫たちの冥福を祈り、ここが無事に存在する間は、自分たちの家と思って遊びにおいでと呼びかけました。わが家の連中にも、いっしょに仲よくしておくれと祈りました。

◇なぜかしらん、田舎の墓でも、この墓でも、私が行くといつも小さな生き物の命の影が墓のまわりにちらついています。細い足の華奢なクモが巣をかけていたり、コガネムシがのそのそ這っていたり、ちょうちょやとんぼが飛んでいたり、他の墓を見てもそうでもなさそうなのに、ちょっと不思議な気がして、誰か中で眠る魂があいさつに出て来たかなと思うほどです。完全にしーんとして動きのなかったことは、まずありません。

今日は大きなクマンバチが、ぶんぶんあたりを飛んでいました。脅かさないようにしながら、片づけて引き上げようとすると、晴れ渡った青空に、大きな鳥が二羽、翼を広げて、かなり頭上近くまで下りて来たりしながら、空中を行き来しています。
眼下ではダムの池の水が光にきらめき、周囲の山や森の緑も色鮮やかで、多分トンビだろうな、まさか鷲だの鷹だのじゃあるまいなどと思いながら見上げていると、そんなこともわからんかと言わんばかりに、ぴーひょろろという、実に滑舌のいい(笑)、もうそうとしか書き表せないような鳴き声が虚空にひびきわたりました。
その後も何度か鳴きながら、二羽のトンビはつかずはなれず遊覧飛行していて、どうもあれはカップルで、求愛行動の真っ最中じゃなかったのかしらん。人目なんか気にもならないように低空飛行していて、何だか楽しそうでした。

殺された猫たちが生まれ変わっていたのならいいな、と、ふと思いました。

◇さあ、今から多分夜中まで、家の片づけにはげまねば。

Twitter Facebook
カツジ猫